著者 : 温又柔
我最愛的家人。娘を誰よりも理解したい、けれどーー。気鋭の新たな代表作。「私は、彼女のことを、秘密にしたくないの」。長女が同性の恋人の存在を告白したのは、次女の結婚式の夜だった。戸惑う父は、娘にふつうでいて欲しいと願ってしまうーー。日本で外国人として育った娘、外省人の祖父、日本・台湾・中国で生きる父。いくつもの境界を抱えた家族を、小籠包からたちのぼる湯気で柔らかく包み込む感動長編。
十七歳の私たちは、「はるか遠くにある未来」を夢みていたーー 私=林由起子には、林美怜と林圭一という同じ「林」の苗字を持つ友人がいた。やがて圭一は美怜と付き合うようになり、三人の関係に変化が訪れる……。国籍や性別を超えた三人の友情、その積み重ねた時間を描いた表題作をはじめ、「日本語文学」を拡張する傑作作品集。 完全に普通のひとなんか、この世に一人もいないよ。誰もが皆、それぞれ、ちょっとずつ、普通じゃないんだ。(「永遠年軽」) おじいちゃんはね、二十歳までは、日本人だったんだよ。(「誇り」) 父が、おりこうさん、と言ってくれるから、ガイジン、とか、タイワン、とはやしたてられても耐えられた。(「おりこうさん」)
『JR時刻表』や『散歩の達人』でおなじみの交通新聞社が、鉄道開業150年の特別な年にお届けする、新感覚の『鉄道小説』短編集です。5人の気鋭の小説家が描く“人と鉄道の記憶”についての物語!
母は、わたしの恥部だったーー 申し分のない夫・聖司と結婚し、〈ふつう〉の幸せになじもうとするも、にわかに体と心は夫を拒み、性の繋がりも歪になっていくーー密かに声を殺して生きた子ども時代の〈傷〉に気づくとき、台湾の祖母、叔母、そして異国に渡った母の一生が心を揺らす。 夫と妻、親と子それぞれの〈過ち〉を見つめる心温まる長編小説
「出発」「日本人のようなもの」「あの子は特別」「異境の台湾人」「親孝行」「可能性」「息子」「鳳梨酥」「百点満点」「到着」…最注目の気鋭が描く、10の物語!エッセイ「音の彼方へ」併録。台湾系ニホン語人作家の飛翔作。
“四歳の私は、世界には二つのことばがあると思っていた。 ひとつは、おうちの中だけで喋ることば。 もうひとつが、おうちの外でも通じることば。" 台湾人の母と日本人の父の間に生まれ、幼いころから日本で育った琴子は、大学生になって、中国語(普通語)を勉強するため留学を決意する。そして上海の語学学校で、同じく台湾×日本のハーフである嘉玲、両親ともに中国人で日本で生まれ育った舜哉と出会う。 「母語」とはなにか、「国境」とはなにか、三人はそれぞれ悩みながら友情を深めていくがーー。 日本、台湾、中国という三つの国の間で、自らのアイデンティティを探し求める若者たちの姿を鮮やかに描き出す青春小説。第157回芥川龍之介賞候補作。