著者 : 火坂雅志
幼いころに父を失い、織田、今川両家の人質となり、苦労を重ねる家康。桶狭間の戦いで、今川から自由となったが、織田と同盟を結んだことにより戦はまだまだ続く。越前朝倉攻め、姉川の戦い、三方ヶ原の戦い、長篠の戦い、甲州討入り、上田合戦。この時代に生きる事とは戦う事であった。戦無き世を夢見て、家康は戦い続ける。
本能寺の変、伊賀越え、小牧・長久手の戦い、小田原攻め、関東移封、朝鮮出兵、関ヶ原、大坂の陣。遂に戦無き世を実現させた家康だが、天下を落ち着かせるにはまだ果たさねばならないことがある。戦国乱世を終わらせた武将にして現代日本の礎を築いた男の一生を渾身の筆で世に問うた遺作、遂に文庫化。
我、昇竜たらんー。大和国を治せる筒井家で、その剛直さと胆力を認められた島左近清興は、若くして侍大将に取り立てられる。そんな中、梟雄・松永弾正久秀が大和に攻め入ってきた。次々に城を落とされ窮地に陥る筒井家にあって、左近は、松永勢を相手に獅子奮迅の働きをするが…。弱肉強食の時代に義を貫き、「三成に過ぎたるもの」と謳われた乱世の申し子・島左近の生き様を渾身の筆致で描いた長編小説。
人生、意気に感ずー。大和国の守護となった筒井家に、織田信長が明智光秀によって本能寺で討たれたとの一報が届く。去就を決しかねる筒井家で、静観を主張する島左近は、偵察に出た先で山伏を捕捉した。その山伏こそ、羽柴秀吉の奏者・石田三成だった…。なぜ、左近は三成に仕えることになったのか。秀吉の死を機に牙を剥き始める徳川家康。再び風雲急を告げる天下に、“いくさ人”島左近の真価が問われる!
幼くして両親を亡くした島井徳太夫、のちの宗室は、十七歳で朝鮮に渡り、茶道具を買い付けて売ることで博多の有力商人となった。博多を治める大友氏、そして織田信長、さらには羽柴秀吉とも交わるようになる。荒廃した博多を復興した秀吉には、大陸制覇の野望があった。家臣にならなければ攻撃すると朝鮮に伝えるよう、対馬の宗氏に言い渡した。大陸との貿易で栄えてきた宗室は戦火を交えぬ工作をしたが、息子鶴松を亡くした秀吉は、朝鮮出兵を決断。石田三成の依頼を受け、宗室は命懸けで秀吉を諫めたのだがー。戦なき世を求めて生きた気骨溢れる商人の生涯。
家康の周囲には異能異才の者たちがいた。行商人ワタリの情報と絶対的な忠義で仕えた島居元忠、馬上の局と呼ばれ戦場にまで赴いた阿茶の局、「利は義なり」の志で富をもたらした角倉了以など七人を描く傑作短篇小説集。牧野忠成は戦の大失態の後、影働きで功を上げた。常在戦場、手柄は合戦場の外にもあるのだ。
戦国の乱世、山間部の弱小勢力であった真田氏を大名にまで育てた三代の男たち。仇敵である武田氏に仕え、旧領を取り戻した幸隆。主君を次々と替え「表裏比興の者」と呼ばれながら徳川の軍勢を二度まで退けた昌幸。そして「真田日本一の兵」幸村ー知恵と情報戦で大勢力に伍した、地方の、小さき者の誇りをかけた闘いの物語。
人は利で動く。義など方便に過ぎぬー幸隆と昌幸はそう考える合理主義者だった。しかし上杉家での人質生活で直江兼続と出会った幸村は、彼を心の師と仰ぎ、自らの義を模索する。秀吉すでに亡く、家康により世は定まりつつある。戦国が終わりへ向かう中、強きものになびかず誇りを貫いたその輝きを描く完結篇。
天下無双の剣客・宮本武蔵は幼少のころ、その父・無二斎から非情の血をもって厳しく武芸を叩き込まれた。武蔵は父を憎み、無二斎は成長して剣名を轟かせていく息子の才を妬ましく思うようになる。「あやつを生かしておくわけにはいかぬ」。父と子の歪んだ絆はやがて一つの闘いへと向かっていく(「武蔵と無二斎」)。強者を斃すべく山伏の修行に加わった若き日の塚原卜伝(「卜伝峰入り」)、秘技を継承した唯一の男・田丸直昌の生き様(「一の太刀」)、天賦の才を持ちながら一族の系図から抹殺された柳生源之丞(「柳生殺人刀」)など、剣の道に生きる男たちの物語七篇を収録。
西上野の地侍たちから盟主と仰がれ、信義あふれる心で上杉謙信をも動かした知将、箕輪城主・長野業政。一切の利欲を捨て、国を豊かにし、民の暮らしを守るー。滅亡の危機に瀕しながらも、その鬼謀と胆力をもって武田軍の侵攻を退け続けた男は、関東をただす義の戦におのれの最後を賭す。河越夜戦で逝った息子への誓いと上州侍の誇りを胸に、戦国乱世を疾駆し、強大な者の理不尽に敢然と立ち向かった気骨の生涯を描く!
九州を平定し、荒廃した博多を最後に復興した秀吉には、大明国制覇の野望があった。大陸との交易で栄えてきた商人として、対馬の宗氏とともに戦火を交えぬための工作をした宗室だったが、秀吉は息子鶴松の死をきっかけに朝鮮出兵を決断。宗室は石田三成に密かに呼び出される。名だたる戦国武将たちと渡りあいいくさなき世を求めた、気骨溢れる商人を描く。
戦国乱世、豊臣秀吉の頭脳として、のちに「二兵衛」と称される二人の名軍師がいた。野望を内に秘め、おのが才知で天下に名を残そうとする竹中半兵衛。小寺家の行く末を織田信長に託す決意をし、軍師としての生き様を模索する小寺(黒田)官兵衛。毛利攻略を機に秀吉の下へ集い、いつしか「義」という絆で結ばれていく二人。しかし三木城攻めの渦中、謀反の荒木村重を説得に赴いた官兵衛は、有岡城地下牢に幽閉されてしまう。
有岡城から生還した黒田官兵衛は、竹中半兵衛の死を知ると同時に、その遺志と豊臣秀吉の軍師の座を引き継ぐ。稀代の謀略家として恐れられる一方、信義を重んじ、敵将からも信頼される官兵衛。しかし秀吉は、おのが権力が強大になればなるほど、彼を恐れ、遠ざけてゆくのだった。秀吉亡きあと、官兵衛(如水)は、はじめて自らの野望を関ヶ原に賭すがー男たちの戦国絵巻を圧倒的スケールで描く傑作歴史長編。
時は戦国末期ー。みちのくの大地から隻眼で天下を見つめる十九歳の若者がいた。伊達家当主、政宗である。下剋上の世にあって馴れ合う奥羽大名の慣習を打ち破り攻めに出た政宗だったが、畠山氏に裏切られ、父・輝宗を喪う。悲しみを乗り越え、怒涛の勢いで奥州制覇に動き出す政宗。一方、上方では豊臣秀吉が天下統一に向けて奥羽にも手を伸ばそうとしていた。
戦国の世、越後上杉家中の樋口与六は、若くして長尾喜平次の小姓となった。五歳の歳の差を超え、二人は肝胆相照らす名コンビとなる。後の直江兼続と上杉景勝である。二人は上杉謙信の許で薫陶を受け、精神を学び、謙信亡き後の越後の維持に努めていた頃、京より、織田信長が明智光秀に討たれたという本能寺の変の一報が届く。
光秀討滅後、着実に日本統一への歩みを進める秀吉の膝下に、上杉家も屈する。領国安堵された二人は、次第に豊臣政権でき大きな存在となる。石田三成と親交を結ぶ兼続だが、秀吉亡き後、徳川家康と対立し、遂に関ケ原の戦いを迎える…。信長、秀吉、家康と渡り合い上杉家を存続させた主従の姿を描いた大河小説。
元禄15年師走、世を騒然とさせた赤穂浪士による吉良上野介邸討ち入り。今なお語り継がれる大事件の陰に、もう1つのドラマがあった。人形浄瑠璃作家・近松門左衛門と、赤穂浪士随一の剣の使い手・堀部安兵衛。「あいつは命を懸けて、おのれの意地をしめそうとしているだけだ」。明と暗の狭間で、生と死が交錯するー。近松は筆に、堀部は剣に、おのれの命を賭して、意地を貫いた男たち。新たな「忠臣蔵」を描く長編時代小説。
和歌の裏口伝として、藤原貴族のあいだに連綿と伝えられてきた“明月五拳”。その極意を体得した西行は、もうひとつの秘拳“暗花十二拳”の謎を求めて、歌枕を訪ねる漂泊の旅に出た。足柄峠、鹿島、白河の関、安達ケ原、信夫、武隈、多賀城、そして衣川ー。東国へ向かう西行の行く手には、恐るべき秘拳の使い手たちと大和朝廷に圧殺された蝦夷の怨念が待ち受けていた!いま最も注目を集める著者が描いた衝撃のデビュー作。