著者 : 片島麦子
協調性なし、裏表なし、悪気なし。そんな彼が突然この世を去ったー。生前の未知生とうっかり関わってしまった人たち。その満たされぬ日常をユーモラスに描く、ちょっとホロ苦い、心ゆさぶる物語。
大学の友人サクマの帰省に同行したぼくは、そこで幽霊と暮らす奇妙な村人たちと出会う…(『幽霊番』)。女性だけの村で育った卯月と、「騙されちゃ、だめよ」と云い、突然いなくなってしまったハルカ。サナさんの秘密の儀式を偶然目撃した卯月は、自分の知らない世界があることに気づいてしまう…(『レースの村』)。夫との関係はいつも少しずれていると感じる杏子はバイト先の店長とのふとしたはずみで起こった出来事により…(『空まわりの観覧車』)。透明になった犬の夢二、病気がちで寝たきりの姉綾子とともに過ごす日々はあの雪の日のように儚い…(『透明になった犬の話』)。「ことばと」掲載の表題作を含む4編を収録。
満月の夜だけ開店する「にじや質店」。そこはある条件を満たせば、お金を貸してくれる代わりに「願いを一つだけ叶えてくれる」質屋だという。そんな不思議なお店で働くことになった女の子・いろはと、どうしても叶えたい願いを抱えるお客たちが織りなす、優しく温かい物語。
大きな銀杏の木に支えられるように建つ、オンボロな「銀杏アパート」で暮らすのは、それぞれの悩みを抱えるワケアリ住人ばかり。次々に巻き起こる小さな事件の秘密と、そこに詰まった「優しさ」とはー。人のつながりに心あたたまる、感動の連作短編集。
黒革の長手袋をはめ、威風堂々としているぼくの祖母「おおばあ」。父さんのいないぼくは、おおばあと母さんに育てられてきた。ある日おおばあから「呼吸合わせ」の話を聞く。そして、眠り続ける少女との出会いにより、“呼吸を合わせる”ことの真の意味を知る。瑞々しく色鮮やかな「ぼく」の成長物語。文庫オリジナル。