著者 : 片島麦子
ーーーーーー 人は他人を完全に理解することなどできない。でも、あなたの傷が癒えるまで守ることはできる。 心のギプスを求めるあなたへの物語。 ーーあさのあつこ 滑稽で醜い、むきだしの自分も、悪いものじゃない。 そう心から感じさせてくれる物語に、初めて会いました。 ーー彩瀬まる ーーーーーー 間宮朔子はすべてをあきらめている。 「若い女の子」の役割をまっとうするだけの職場、善良だが気が合わない実家の家族、なにより、なんの魅力もとりえもない自分のことを。 無難にやり過ごしていた日常に飛び込んできたのは、中学の同級生・あさひの姉を名乗る女性だった。 あさひがいなくなったので一緒に捜してほしいという。 親友だったはずの彼女とは、ずっと連絡をとっていない。 裏切られて、早く忘れてしまいたいのに、ふと思い浮かべてしまう存在ーーそれがあさひだ。
協調性がなくてマイペース、それでいて人畜無害な、いい人ーーそんな羽野未知生が不慮の事故に遭い、41歳の若さで突然この世を去った。葬儀に参列した高校の同級生や大学時代の元カノ、会社員時代の同期や上司は、在りし日の想い出を振り返りながら、自分自身の〈今〉を見つめ直す。そして遺された家族もまた、未知生のいない日常を歩みはじめるがーー。 イマイチつかみどころの無いキャラの未知生と、生前うっかり関わってしまった者たちの〈これから〉を描く書き下ろし長編小説。
「上質でおもしろくてきれいな、短篇小説の雑誌を作りたい! 同人誌でなくプロフェッショナルな!」 こんな考えで始まった『吟醸掌篇』の第4号。 「最近は短篇小説が減ったなあと思います」「短篇の受け皿としての雑誌の存在がとても大切だと思います」(頭木弘樹「コラム・短篇礼讃」)との応援の言葉を巻頭に頂き、中堅・無名のプロ小説家による新作短篇6本、翻訳(19-20世紀米女性作家)、版画と詩のほか、「わたしの愛する短篇作家(ブッツァーティ)」「去年の読書から、短篇ベスト3」(斎藤真理子、寺田和代、林浩治、踏)などコラムも好評。短篇小説好きにはこたえられない一冊です。 気鋭の現代日本画家、有冨禎子はじめ実力派イラストレーターによるさし絵も充実。装幀装画のネコ作家シリーズ(山崎まどか)は、ニャ宰治。 【エッセイ】 ・「短篇礼讃(結晶とスナップショットと未完・断片)」頭木弘樹(画・木村千穂) 10 ・わたしの愛する短篇作家4「ディーノ・ブッツァーティ〜残された宿題」空知たゆたさ(画・三堂懐古)59 ・去年の読書から わたしの短篇ベスト3 「霊魂は如何にして闘うか」林浩治 89 「閉塞の日日、思いがけない救い手は」寺田和代 93 「行動しない男たち〜コロナ禍のなか、徒然に〜」踏 96 「たくさんの他人の話」斎藤真理子 100 【翻訳】 ・「黄昏どき」 スーザン・グラスペル/まえだようこ訳(画・八木橋幸子) 103 【詩と版画】 ・「ひかり」 武藤玲 2 【創作】 「お水とり」 なかむらあゆみ(画・とどろきみゆき) 16 「爆心地ランナー」 志賀泉(画・有冨禎子) 22 「白化かしの村」 松本薫(画・三堂懐古) 44 「ヌスット透視図」 片島麦子(画・とどろきみゆき) 63 「鳥の餌を盗む」 藤本紘士(画・奧津直道) 79 「蟻の王様」 栗林佐知(写真・踏) 114 【装幀・装画】 山崎まどか
幽霊の世話をする人々、女性だけの村、姿が透明になる犬……。 とても不思議なのに、どこか懐かしい光景。 日本のどこかに、こんな場所がまだあるのかも、と思えてくる。 豊かな発想から物語を紡ぎ出す、新しい語り部の誕生だ! 松永美穂(翻訳家/早稲田大教授) 「ことばと」掲載の表題作を含む4編を収録。 <あらすじ> 大学の友人サクマの帰省に同行したぼくは、そこで幽霊と暮らす奇妙な村人たちと出会う…「幽霊番」。女性だけの村で育った卯月と、「騙されちゃ、だめよ」と云い、突然いなくなってしまったハルカ。サナさんの秘密の儀式を偶然目撃した卯月は、自分の知らない世界があることに気づいてしまう…「レースの村」。夫との関係はいつも少しずれていると感じる杏子はバイト先の店長とのふとしたはずみで起こった出来事により…「空まわりの観覧車」。透明になった犬の夢二、病気がちで寝たきりの姉綾子とともに過ごす日々はあの雪の日のように儚い…「透明になった犬の話」。綻びのできたレースのように繊細で不可思議な世界を紡ぎだす四編の物語。 幽霊番 レースの村 空まわりの観覧車 透明になった犬の話
満月の夜だけ開店する「にじや質店」。そこはある条件を満たせば、お金を貸してくれる代わりに「願いを一つだけ叶えてくれる」質屋だという。そんな不思議なお店で働くことになった女の子・いろはと、どうしても叶えたい願いを抱えるお客たちが織りなす、優しく温かい物語。
大きな銀杏の木に支えられるようにしてかろうじて建つ「銀杏アパート」。そこで暮らしているのは、父親のいない母娘、恋人からの暴力に悩むデパート販売員、動物としか心を通わせることができない女子大生など、ワケありの住人たちばかり。過去に傷を持ちながらも、それでも「誰か」を求めずにはいられない不器用な女性たちの、寂しくもあたたかな物語。愛しさと憎しみのあいだを行ったり来たりしながら、知らないうちにわたしたちは繋がっているー。大注目の俊英が贈る感動作!
黒革の長手袋をはめ、威風堂々としているぼくの祖母「おおばあ」。父さんのいないぼくは、おおばあと母さんに育てられてきた。ある日おおばあから「呼吸合わせ」の話を聞く。そして、眠り続ける少女との出会いにより、“呼吸を合わせる”ことの真の意味を知る。瑞々しく色鮮やかな「ぼく」の成長物語。文庫オリジナル。