著者 : 狩野あざみ
モサドのゴールドスタインに拉致され、香港啓徳空港からイスラエルへと向かっていた秋生は途中、アラブ・ゲリラのハイジャックに巻き込まれた。それどころか、犯人の一味に間違われ、公共公安部隊軍の刑務所に拘束されてしまうはめに。一方、ビンセント・ヘンリー・セシリア・玄冥たちは、CIAのシャロン・リーと一時協力関係を結び、秋生を救出しようとアンマンへ向かうが…。超時空アクション完結篇。
CIA情報部中国担当のシャロン・リーは、中国の自治区となっているチベットで起こった独立運動が突然の終息を迎えた謎を解明していた。資料として回ってきたチベット騒乱の際に配られた手配書の写真の顔に目を止めた。それは半年前の大亜湾原発事故、その後の香港会議中心爆破テロの際にも居合わせた顔だったからだ。三つの事件に関連する顔ー工藤秋生とその周辺の人物を調査すべくCIAが動き出した。
賭博場に似た熱気とともに、歯切れ良い英語が飛び交う中、オークションにかけられた品は、絢爛豪華な刀剣だった。おそらく隋唐の皇帝の佩刀だろう。激しい競りに終わりを告げ、遂にその品を手に入れたのはビンセントであった。会場を後にする車中で、懐かしい古剣の感触を確かめる彼の意識は千古の時を遡りはじめた。天下を統一した隋と、華やかな時代を築いた唐とがともに存在した遙か彼方へとー。特別篇。
中国人民解放軍に捕らえられた秋生たちは、“雌虎”と呼ばれるリーダー率いるチベット・ゲリラの急襲によって基地から連れ去られてしまい、同じ朱雀の気を放つ者に行く手を阻まれたセシリアと離ればなれに。一方、セリシアからの連絡で、秋生の身にただならぬものを感じたビンセント・ヘンリー・玄冥はラサに到着。行方を追うが、折からの弥勒騒動で市内には戒厳令が敷かれ、緊張状態が高まっていたー。
秋生は、香港の街中で北インドのラダックへチベット仏教の取材をする日本TV局の案内役の美女・ツェリンに出会う。通訳が急病で倒れ、代役を頼まれた秋生はセシリアとともに取材クルーのメンバーとなり、ラダックへと向かった。チベット人・ナムギャルの手配で仏教儀式の撮影をするらしい。が、香港に残るビンセントとヘンリーは中国特務機関の尹虎嶺がナムギャルをマークしているという情報を手に入れた…。
香港の青年実業家としての顔を持つビンセント・青が、何者かに狙撃された。調査を進めるビンセントは香港の大物たちが連続して事故にあっていることを知る。被害者はみな香港華人商工会の発起人で、広州の出身だった。彼らは、九七年香港返還後の経済関係を憂い、英国が手を引いた後も現在の体制を維持するために広州と香港とを一体化し、独立国家にしようと計画していた。しかし、襲ったのは一体誰なのか。
親威の結婚式に招待された工藤秋生は、香港に到着した途端、パスポート泥棒に遭い、迎えに来た朱明に救われた。そのとき秋生を見た老人が、彼の未来を暗示するかのように呟いた言葉は「…混沌…」。翌日、今度は警察を騙る数人と黒ずくめで太陽眼鏡の不気味な男に絡まれた。やがて中国の特務機関と香港マフィアに追われていることに気付く秋生だったが、何故自分が狙われているのかが分からないー。
歴史のなか、人は天命に従い生きるのみ。だが無数の夜に沈んでいった、愛の、怒りの、欲望の、幾つを史書は、伝えることができたのかー。始皇帝暗殺に失敗した青年が、逃亡中迷い込む幽境での不可思議な体験を描き、第15回歴史文学賞を受賞した表題作を始め、古代中国史の美姫、英雄たちのドラマを、微かな悲しみと共感を湛えた視線で描く佳品六篇。幻想的な美しさ溢れる歴史小説集。
アラビア半島の北部に広がる不毛の岩石砂漠地帯、シリア砂漠の一角。しんと静まり返った夜の中に、突如閃光が膨れあがった。一瞬にして、巨大な火球が現出する。熱波と衝撃波が地上を襲い、轟音と共に爆風が、建造物と砂礫とを舞い上げる-CNNが伝える画面に「我らの大統領は、必ず、イスラエルとアメリカに復讐するだろう」「聖戦」の巨大なシュプレヒコールが谺した。香港啓徳空港では、火性の聖獣朱雀が黄龍こと工藤秋生がイスラエル航空に搭乗したことを突きとめた。空前のスケールで贈る人気シリーズの完結篇。
ワシントンDCのアメリカ中央情報局-通称ラングレーといわれる場所、内部の人間がカンパニーと呼ぶ組織でシロン・リーは、サダム・フセインの動向にくぎづけになっていた。八月二日、この日、中東の軍事大国イラクが隣国クウェートへ電撃侵攻した。国連は無条件撤退決議を採択したが、中国の〓@68B0@小平はどう出るか。そのとき、衛星の傍受した通信をパソコンの画面が打ち出してきた。クウェート侵攻直前に起きたチベット騒乱で、ラサの軍と公安が手配した若い東洋系の男の顔だ。その頃、香港の工藤秋生は。傑作完結篇 上。
賭博場に似た熱気とともに歯切れよい英語が飛びかってオークションが進行している。「次は…」黒漆に金で鳥獣、唐草、花雲を散らした鞘と把頭・鐺には碧瑠璃や緑瑠璃が嵌まった刀剣だった。おそらく隋唐の皇帝の佩刀であろう。激しい競りのあと、遂にそれを手にしたのは若き香港富王ビンセント・青だった。小切手を切りロールスロイスに乗ると、ビクトリアピークの斜面を滑昇してゆく。「あのときは、まだこれも輝いて…」古剣の感触を確かめるビンセントの意識は、千四百年の歴史を遡りはじめた。戦乱の隋唐に翔く傑作。
日本のTV局のレポーターの代役を頼まれて、ヒマラヤ山中のラダックへ飛んだ工藤秋生は、チベット独立運動で騒然とする聖都でセシリアとともに取材を開始した。雪嶺に立つ旧王宮、寺院の曼荼羅、合体仏に目を奪われている間に戒厳令が布かれた。香港のビンセント・青とヘンリー・西は中国特務機関の尹虎嶺から、チベット亡命政府の香港事務局代表ナムギャルが、国を統治する転生霊童を捜す不隠な動きをしていることを知らされる。その時すでに秋生一行は、山岳のゲリラと中国人民解放軍に狭まれ、大銃撃戦の渦中にあった。
ラサ第一の仏教寺院大昭寺から、臙脂の僧衣の一団が凰輦に載せた仏像を担いで「弥勒は、転生した!」「チベットは、独立する。漢族は去れ!」の絶叫とともに人民政府の建物へ雪崩れ込んだ。その時、広場の一角を占める警察署の扉が開き、中国製56式沖鋒槍-AK47自動小銃を持った警察隊が出動した。いっぽう亜熱帯都市香港では、平穏な日を送っていた黄龍こと工藤秋生は、超美の旅行案内人ツェリンと知り合い、日本のTV局のレポーターの代役を頼まれる。取材先きはチベット…。狩野あざみの書下し第3弾の傑作。
端整な鼻梁に銀縁眼鏡の青年は、ロールスロイス・シルバースピリット2を亜熱帯の自然が繁る〓@4FAF旗山の上り坂をなめらかに滑らせていた。斜面に突きささるように聳える高級マンションと香港島北岸の市街を見下す山頂にかかったとき、彼の意識に不快な感覚が走った。殺気。目前に60階を越えるビルの最上階がロールスと同じ高さにあった。バックファイアに似た音が響いた瞬間、ターコイズブルーの車体が横転した。運転者は、ビンセント・青-青龍だった。連続する富王狙撃、特務機関が入り乱れる霹靂の書下し第2弾。
祖母の親戚の結婚式に招待された工藤秋生は、香港に到着したとたん、パスポート泥棒に遭い、迎えに来た朱明に救われた。翌日、今度は警察を騙る数人と黒ずくめの太陽眼鏡の不気味な男に絡まれた。美麗華酒店の祝宴で、秋生は広東人が交わす話題に興味をひかれた。中国が広東省深〓(しんせん)市の大亜湾に建設した原子力発電所の試験運転がはじまろうとしている時、反対運動が再燃。香港からわずか五十キロの距離にあるここは、風水師によれば、龍脈に当たる危険な場所というのだ。超弩級の活劇が全篇を埋め尽す、大型新鋭の傑作。