著者 : 琴葉かいら
愛のままには生きられない。 私はただの政略結婚の道具だから。 許婚が事故死し、ランツァは心から嘆くも、親の決めた政略結婚から 解放されたことにほっとしている自分に後ろめたさを感じていた。 そんなある日、今度は亡き許婚の兄ステファノとの結婚を命じられる。 彼とは、大人になってからまともに会ったこともないのに。 病を患う父を安心させるためにも、ランツァは従うほかなかった。 1年後の結婚式の日、祭壇でようやく顔を合わせたステファノは、 驚くほど端整な顔だちで、大人の魅力をまとい、きらきら輝いて見えた。 そう、ランツァは幼き日から、本当はステファノが好きだったのだ。 だが、人知れず頬を染めるランツァに、彼は事務的に告げた。 これはあくまでも形だけの結婚で、寝室は別だ、と。 大スター作家レベッカ・ウインターズが描いた、愛なきロイヤル・ウエディングと切ない片恋の物語。もどかしい二人のロマンスに加えて、ヒーローの亡き弟との兄弟愛が優しい筆致で綴られた本作は涙なくして読めない名作です。
看護師のミアはある夜、たくましくて魅力的な男性ブリンと出逢い、パーティの喧騒から逃げてきた者同士意気投合し、一夜を共にした。だが翌日には彼が異国へ渡ってしまい、それきりとなった。3年後、ミアはあの夜に授かった娘を独りで産み育てていた。小さくてかわいい、私に生きる目的を与えてくれた大切な娘。父親にそっくりなのに、父親のことを知らない娘…。ところが彼女の住む地域が嵐に襲われたとき、救急救命士としてドクターヘリで現れたのはなんと、忘れもしないブリンだった!思いがけない再会にミアは戸惑いながらも、娘の存在を彼に告げたー予期せぬ反応に打ちのめされるとも思わず。「僕は親子鑑定を要求する」
フィオナは凶暴な父から逃れるべく、遠くを目指して家出した。道中、湖で沐浴していると背後から声をかけられ、振り返った瞬間、相手を見て驚愕するー1年前まで相思相愛だったブランドン!よりにもよって、ここが彼の領地だったなんて…。かつて二人は双方の父親に交際を反対され、逢い引きを重ねたが、不幸にも氏族間で争いが起き、秘密の恋は終わったのだった。フィオナのせいで氏族に犠牲が出たと考えるブランドンは今、瞳に怒りの炎を燃やしてこちらを鋭く見据えている。そのとき、フィオナが地面に置いておいた布包みから赤ん坊の声が響き、彼女は告げた。「ブランドン、あなたの息子を紹介するわ」
ロンドンの路地裏の下宿屋に暮らすパーディタは、3カ月前に市場町で旅一座に拾われ、経理や衣装管理の仕事をしている。じつは彼女にはそれ以前の記憶がない。“パーディタ”も仮の名だ。ある日、仕立屋で用事を済ませ、急ぎ自宅に足を向けたつもりが、なぜか下宿屋ではなく大きな屋敷に帰り着いてしまった。「お、奥様」驚き顔の執事に中へ招き入れられ、彼女は混乱した。奥様って…?私は何者でもない、名もなき路地裏の住人だけれど。しかし、どこか見覚えのある部屋に通されてしばらくすると、怒った男性ーエピング伯爵が雷のごとく飛び込んできて言い放った!「君への要求はただ1つ。私たちの子供がどうなったかを話すことだ!」
助産師のヒーラは医師の夫レオと4カ月前から別居していたーもうすぐ臨月を迎えるというのに。原因は、年の離れた妹を亡くしたレオが罪悪感に囚われ、ヒーラがあなたの力になりたい、話をしてほしいと言っても、妻である彼女にさえ心を閉ざし、人生から閉め出したことだった。居を移したヒーラは、彼が迎えに来ることを密かに期待したが、非情にも時間だけが過ぎていく。独りで出産するしかないのね…。ところがあるとき、ヒーラが手伝うクリニックに2週間限定で、膝が震えるほど美声でハンサムな医師が来たという噂が。話半分で聞きながら診察室に入ったヒーラは目を疑った。「レオ?」
秘書のアビーが高名な富豪弁護士グレイの下で働き始めて1年。ボスは傲慢で実に扱いにくい反面、とても優秀で魅力的な男性だ。そんな彼が求める秘書であろうと、アビーはしかつめらしい服に眼鏡とひっつめ髪のスタイルで、まじめに働いてきた。だがある日、ボスの予定帳に書かれた取引相手の名に、激しく動揺する。二度と会いたくないと思っていた、卑劣で薄情な元恋人…。やむをえずグレイに事情を話し、もうここにはいられないと告げると、ボスは僕たちが公然と同棲すれば、相手は手出しできなくなると言う。二人で寝食をともに…?戸惑いを見せるアビーに、彼は釘を刺した。「ベッドの心配なら無用だ。君は僕の好みじゃないから」
女子修道院に暮らすイリサは突然、非情な父の命令により連れ戻された。「お前は結婚することになった。相手には花嫁が、私には同盟が必要だ」政略結婚の相手はマクミラン氏族の支族長、ロス・マクミラン。視界を遮るようなベールをかぶせられ、式に臨んだイリサが知ったのは、相手方からは、花婿本人ではなく代理人しか現れなかったこと。そして、本当はイリサの姉が花嫁になる約束だったが、どういうわけか日陰の妹である自分が代わりに差し出されるという事実だった!修道女のような私に、美しい姉の代わりなんて務まらないのに…。一方のロスは、醜いと噂のイリサをあてがわれたと知って憤慨した。やがて、目の前に連れてこられた花嫁がベールを脱いだとき、ロスと氏族の者は一斉に息をのんだー花嫁の、その無垢な美しさに!
セバスチャンー?フェリシティは我が目を疑った。16年前、自分を捨てて消えた恋人が、目の前にいる。今や世界的ホテル王となったセバスチャン・デュボワー忘れえぬ初恋の人が、16年ぶりに村を訪れたのだった。フェリシティは胸を締めつける痛みをこらえた。この16年、いったいどこにいたの?ああ、どんなにあなたが恋しかったか!セバスチャンは結婚指輪はしていなかった。恋人はいるのかしら。ききたいことは山ほどあった。でもその前に話すべきことがある…。「私、子供がいるのー私たちの子よ」
ダンスは壊滅的に下手、流行のドレスや装飾品には興味なし、お茶会で気のきいた会話もできないーレティは母の悩みの種だった。そんな彼女は、誰にも言えない秘密の二重生活を送っている。男性に扮し、医師として村の人々の命を日々救っていたのだ。そんなレティのもとに、診てほしい妊婦がいるという手紙が届いた。患者の兄は、レティの初恋の人アンソニー卿だった。医師を続けたいなら、淑女の私を知る彼に会うのは危険すぎる。男装を見破られたら、家族までとんでもない醜聞に巻き込んでしまう。でも、苦しむアンソニー卿の妹を見捨てるわけにはいかない。それに何より、彼に会いたい気持ちを抑えておけなくて…。
時は1813年。“壁の花”“氷のレディ”と陰口をたたかれている伯爵の娘レジーナは、許婚との結婚式に臨もうとしていた。男性恐怖症に悩まされる彼女が、親の決めたこの婚約を受け入れたのは、当面は形だけの結婚で床入りの必要はないと許婚に言われたからだ。ところが式の当日、祭壇の前に許婚は姿を現さなかった。置き去りにされた花嫁として世間の白い目に耐える覚悟をしかけたとき、彼女の前に現れたのは、ハンサムなキャムフォード子爵ダルトンー7年前に一度だけ会ったことがある、許婚の親友だった。彼は驚きざわめく参列者たちを尻目にレジーナを連れ出すと、言った。「私と結婚してほしい。でも、君を誘惑しないという約束はできない」。
結婚仲介人として生計を立てるアメリアは、新しい顧客である美しい令嬢を連れて、舞踏会に出席した。そこで彼女は独身主義者と悪名高いストーン公爵と再会する。社交界デビューの年、アメリアは彼にひと目で惹かれたが、ひどく冷たくあしらわれ、初恋は無様に砕け散ったのだった。あの公爵も、ついに花嫁を探すことにしたということ?アメリアが顧客の令嬢を紹介すると、意外にも彼はとても優しく、その紳士的な態度はお目付役のアメリアに対しても同様だった。公爵は令嬢を気に入っているようだわ…。喜ぶべきことなのに、なぜか彼と目が合うたび、その熱いまなざしに心がざわめきー。
18歳のルーシーは、遠方の父親から思いも寄らぬ手紙を受け取った。なんと彼女を結婚させるというのだ。ずっと年上の、中年男と!婚約を社交界公認のものにするため、彼女は無理やり盛装させられ、婚約者となる男とともに、華やかな舞踏会に連れていかれた。と、二人の間に割って入ったハンサムな男性がいた。ロックリー子爵だ。彼はルーシーを静かな庭園に連れ出すと、優しく慰めた。「君は無垢で、若すぎる」そう言いながらも、甘いくちづけをして…。ルーシーは、子爵こそ私の愛する人と悟ったが、このキスによって婚約は破談になり、ルーシー自身も欧州に身を隠すことになる。1年後、美しい淑女となって戻った彼女に、ロックリー子爵はー
家庭教師のフランシスは自らを戒めていた。彼に惹かれてはいけない。初仕事として派遣されたのは、遠く離れたスコットランドの領主の館。主であるラクランに、ロンドン社交界の作法を教えることだった。伯爵令嬢の婚約者がいながら、貴族のしきたりには無関心な彼を、ダンスや求愛のレッスンを通して完璧な紳士に仕立てあげるのだ。若い女教師の指図などおとなしく聞くはずもない傲慢な領主は、フランシスと踊りながらも投げやりで、誘惑的な冗談でからかってくる。野性的な美貌を持つこの男性に、軟弱なワルツなど似合わないー彼には、情熱的な愛こそふさわしい。握られた手を強く意識しながら、フランシスの胸は疼いた。それを私が知ることは、決してないけれど。
破産寸前の没落貴族を父に持つペニーは、将来を悲嘆していた。いずれ私は、金持ちで好色な老人と結婚させられるのだろう、と。事実、父は娘を借金の形に売ったが、相手は意外な人物だった。ラクランー海運業で莫大な富を築いたというハイランドの氏族長は、恐ろしく背が高く、屈強で非情な目をした無口な男だった。ペニーは怯えながら彼を見上げ、はっとした。この人を知っている!幼い頃、ただ一人心を許し、慕っていた年上の優しい少年。突然消えてしまった彼が戻ってくるなんて…私を妻にするために?だが、夫となったラクランに、少年の面影や優しさは微塵もなかった。彼はまるで復讐するかのように、夜ごと激しい情熱をペニーにぶつけ…。
アイラは旅先のシチリアで、ミステリアスな輝きを放つ瞳の、漆黒の髪のホテル王、ラファエル・アンジェリーリと出会った。彼に熱烈に惹かれ、夢のような2カ月が過ぎたときー妊娠に気づく。そしてラファエルの出張中、彼のヴィラを出た。彼に責任感から求婚されることを恐れ、一人で子供を産み育てると決めたから。アイラは故郷に戻り、ホテルの清掃係の職を得た。3カ月が経ったその日、スイートルームの清掃をしていると、ラファエルが現れた!「僕のベッドの脇で待つとは、どういう風の吹き回しかな?」
失恋がもとで男性不信のジョラナは、画家になる夢を追いかけて田舎から出てきた。五番街を歩いていたとき、傲慢だが魅力的なイタリア系富豪ニックと出会う。頼まれて恋人のふりをし、ニックの人となりを知るうち、ジョラナは彼に強く惹かれ、愛するようになっていった。やがて二人は結ばれ、ニックは結婚さえほのめかした。だが数日後、思いもよらない彼の言葉に、ジョラナは涙を流した。「あの晩のことは後悔している…君は単なるはけ口だったんだ」(『ブルーな恋だとしても』)。妊娠中に夫を亡くしたマギーは独りで息子を育ててきた。義父が遺した牧場で休暇を過ごす間、隣人の無愛想な大牧場主テイトに反発心を覚える。しかしワイルドな彼を崇拝する息子が「僕は父さんを知らないんだ」と言ったとき、テイトの意味深長な沈黙の訳をーそして彼自身のことを、もっと知りたいと思うようになって…(『孤独が終わるとき』)。
母が家政婦をする家の主の援助で、ギリシア人の少年テオは、貧しい生い立ちを蔑まれながらも名門校で勉学に励んでいた。ある日、入学してきた可憐な少女ソフィアと恋におち、夢の時を過ごすが、半年後、突如彼女は姿を消したー。10年後。ソフィアは花婿候補と会うため仮面舞踏会を訪れた。だが2人めの花婿候補にも落胆したとき、現れた白い仮面の男性に磁力で引き寄せられるように誘われ、ダンスを踊りだす。仮面越しに見える茶色の目。まさか…テオ?あなたなの?今や富豪となった彼の瞳にはしかし、怒りの炎が宿っていた。
こんなに美しくてセクシーな敏腕ドクターがいるなんて!3カ月前、ケイトは初対面の臨時勤務医フアンを見て、密かにときめいた。彼が現れると、女性スタッフはみな化粧直しに走るほどだったが、まじめで用心深いケイトはフアンからの誘いを再三断っていた。あと2週間もしたら彼はこの国を去り、また別の病院で働くのだから。わたしは遊びの恋ができるほど、器用でも大胆でもない…。だが刻々と別れの日が近づく中、フアンの医師としての能力の高さや、患者に接する態度の温かさを目の当たりにし、恋心は最高潮に達した。ある夜、フアンから不意にキスをされ、ケイトは理性も忘れて愛おしげに彼の首筋に触れたーまさか、その手を拒まれるとも思わずに。
人材スカウト会社で働くダニカは突然オフィスに現れた男性に驚いた。ルーク・ダラスーその卓越した経営手腕で有名なCEO!ギリシアの神のごとき容姿の彼はダニカに貫くような視線を向けて命じた。「僕は至急、妻を必要としている。妻をスカウトしてきてほしい」60日以内に結婚して恋多きプレイボーイという噂を払拭しなければ、自ら創立して大きくした会社を失う苦境に陥るという。ふさわしい候補者を1カ月で見つければ巨額のボーナスをはずむと言われ、病気の家族の治療費を必要としていたダニカは法外な仕事を引き受けた。ところが、有望な花嫁候補を挙げてもルークは気に入らず、戸惑うダニカを熱く見つめて言い放った。「君が僕の妻になってくれ」