著者 : 生島治郎
中国に渡って十五年、破産した紅真吾は、危機から救った大手商社の支店長・沢井から、儲け話に誘われる。揚子江を重慶まで溯り、豚毛を買い集めて帰ってくればぼろ儲けできるのだという。だが流域の治安は劣悪で、命の保証はない。一攫千金を狙う真吾は、短剣投げの名手・葉村宗明ら素性の知れない八人の猛者と出立するー。手に汗握る傑作冒険小説。
江戸川乱歩から今野敏まで。日本推理作家協会、歴代理事長14人の傑作短編を収録。日本中の推理小説ファンを興奮の渦に巻き込む著者たちに連綿と受け継がれる技に括目せよ。(あとがき/山前譲)
ジャンルを越え、小説の面白さをとことんまで追求した画期的アンソロジー。第18回配本の第6巻は「逃亡者」と「追跡者」の間に生まれるサスペンス満点のハードボイルド長編の傑作2編をメインに、硬軟織り交ぜた短掌編も合わせて全13編を収録。 ●編集委員/逢坂剛 大沢在昌 北方謙三 船戸与一 夢枕獏 [編集室から] 生島治郎作品は愛弟子だった大沢在昌委員の鶴の一声でこの長編となった。もう一編の長編は五木寛之のハードボイルドから「裸の町」が選ばれた。すると「追跡」がこの巻のキーワードとなる。 短掌編11編は、剛速球と変化球を織り交ぜることができた。中薗英助は埋もれて忘れられてしまっていい作家ではない。また、あの吉行淳之介が掌編の名手であったことをご存知か? 実はそうなのだ。 [収録作] 【長編】 五木寛之「裸の町」 生島治郎「男たちのブルース」 【短編】 高城高「汚い波紋」 都築道夫「まだ日が高すぎる」 中薗英助「外人部隊を追え」 山本周五郎「ひとごろし」 筒井康隆「走る取的」 【掌編・ショートショート】 稲垣足穂「お月様とけんかした話」 吉行淳之介「追跡者」 小泉八雲「むじな」 城昌幸「花結び」 夢枕獏「二階で縫いものをしていた祖母の話」 星新一「復讐」 ◇解説/大沢在昌 解題/新保博久
神戸を拠点とし、日本全国に傘下の組をもつ巨大広域暴力団・浜内組。兵庫県警の部長刑事志田司郎は、浜内組潰滅を図る県警本部長の特命を受けていた。折りしも義父で海運会社の重役を務める来水信介と浜内組とのトラブルを機に、組幹部を追跡するが、同僚の刑事を誤射してしまったのだ!職を辞し、妻子とも別れて孤狼と化した志田は、巨大組織を執拗に追いつめてゆく…。直木賞を受賞した不朽の名作。
週刊誌のキャップをする兄から「私」に電話があった。上海系の麻薬組織を追跡取材しているが、編集部には中国語を話せる者がいないので手伝ってほしいと言う。早速私は大同というデスクの取材に同行することになった。関西の広域暴力団までが絡むからくりが見えてきた。そして、兄の首が切り落とされた!温厚な男の中に眠る戦士の目覚めを、練達の筆致で描き切る。
鬼(ゴースト)。おれが還暦になったとき見えはじめた奇妙な寄生生物だ。そいつが、目黒川に浮いた首と両手のない屍体を見つけた-警官上がりの血が騒ぐ私立探偵・前田太一は、相棒のゴーストとともに危険に満ちた事件に飛び込んだ!被害者は晴友銀行の総務部長代理・高井。犯人は中国マフィアの二人組とすぐに判明した。ところが、この事件の背後に、晴友銀行の巨額の裏金を巡る恐るべき陰謀が隠されていた。続出する犠牲者。太一は潜入捜査に挑むが…!?ときにユーモラスに、ときにスリリングに、練達の筆が冴える!シルバー・エイジのタフ・ガイの活躍を、痛快に描く長編ミステリー。
内閣調査室の工作員だった速水は引退して、今は六本木のディスコのオーナーに収まっていた。しかしその平穏な日々は親友だった竹中の息子の出現によって破られた。息子の話から竹中の死に不審を感じた速水は、元の上司が副頭取に就任している銀行を脅迫、十五億円を要求すると同時に真相を暴こうとする。その速水の許に五人の男女が集まって…。痛快ハードボイルド。
直木賞受賞、睡眠薬中毒、そして離婚。編集者を経て作家となった著者ならではのハードボイルド・グラフィティ。吉行淳之介、野坂昭如、長部日出雄、星新一、佐野洋、小松左京、司馬遼太郎らも登場。ミステリー界の裏面史を実名、秘話、とっておきエピソードで描いたファン必読、疾風怒涛のミステリー開拓時代。
邦友銀行香港支店のディーリング・ルーム室長村木晴彦は日々刻々と変動する為替市場で神経をすり減らしていた。円高に相場が動くなか、村木は上司の命令でドル買いに走り、一日で十億円の損失をだした。それは、香港のブラック・マネーを扱う大物・柳宗源の仕掛けた巧妙な罠だったのだー。瞬時に大金を動かす男たちのプライドを賭けた戦いを描くハードロマン。
太平洋戦争勃発前夜、民間人浜本は、マレーの英雄“虎”を探し出すために日本を後にした。その目的は何か…?日独英のスパイが暗躍し、インドとマレーの独立運動が芽生え始めた激動の東南アジアを舞台に、人種を越えて生命を賭けて闘った男たちの、波乱万丈の生涯を描く雄渾の長編冒険小説、いま甦える。
香港に赴任している私は、ここでの生活に満足していた。食べ物も旨いし、なにより美貌の中国人秘書との情事にすっかり溺れていた。次第に妻の存在が疎ましくなってきたある日、秘書が案内してくれた秘密パーティで食した超美味な特別料理に魅せられてしまった。そしてその日から妻が行方不明に…。全編を奇妙な恐怖で包んだ異色ショートホラー&サスペンス集。
警視庁捜査4課で暴力団相手に活躍する父と元フリーのリポーターで事件大好きの母を持つぼくの名前は青野純之介。まだ1歳の赤ん坊だが、ぼくのタフガイぶりはちょっとけた違い。暴力団の幹部も「いい根性している。ヤクザにすれば大物になる」と保証するし、ぼくを誘拐した犯人は、ぼくももてあまして逃げ出す始末。1歳のベイビイを主人公にした、奇想天外なユーモア・ミステリー連作。
敏腕事件記者だった橋田雄三は女でしくじって以来、横浜の支局でくすぶっていた。偶然に暴力団羽島組の麻薬取引きを知った橋田は、怠惰な毎日に別れを告げるべく、ボクサー崩れの花井、ドブチュー呼ばれる古物商とその娘を中間に、麻薬横取りを狙い、神戸へと向かった…。長篇ハードボイルド・アクション。
刑務所から出所した日向政一を待ちかまえていたのは、美青年花村千次。美術商の父をヤクザに殺されたため、ニューヨークから帰国。百万円の手付金で日向こと“ヒグマ”に「殺し屋」入門。標的は巨大組織三星会組長。日向は殺し屋レッスンの第一章として、なぜか花村を自分の愛人美樹のマンションに連れてゆくー。ユーモラスに展開する異色のハードボイルド長編小説。
第2次大戦の終了まぎわ、日本軍によってマレーシアの奥地に秘匿された時価数百億円の財宝探しが計画された。チームのメンバーに、美貌の女・須賀涼子、ボディガード役に、元情報工作員で射撃の名手・原卓二。そして謎の現地組織。恋と欲望の修羅場の勝者は誰か?著者渾身の長編冒険バードボイルド。
暴力団浜内組の幹部を追跡中、同僚を誤射した志田司郎は、刑事を辞し、妻子とも別れ、たったひとりで、波止場に単喰う巨大な暴力組織に立ち向ってゆく。近代経営の仮面の影に巣喰う悪との凄まじい闘い。日常を捨て“追いつめ”てゆく異常な執念を描く、日本にハードボイルド小説を樹立した画期的長編小説。直木賞受賞作品。