著者 : 生島治郎
中国に渡って十五年、破産した紅真吾は、危機から救った大手商社の支店長・沢井から、儲け話に誘われる。揚子江を重慶まで溯り、豚毛を買い集めて帰ってくればぼろ儲けできるのだという。だが流域の治安は劣悪で、命の保証はない。一攫千金を狙う真吾は、短剣投げの名手・葉村宗明ら素性の知れない八人の猛者と出立するー。手に汗握る傑作冒険小説。
戦後間もない1947年、探偵作家クラブは設立された。その後、関西探偵作家クラブとの合併や法人化に伴う名称変更を経て“日本推理作家協会”となった作家団体は、今年で70周年を迎える。初代会長の江戸川乱歩から現代表理事の今野敏まで。協会の歴代理事長を務めた14人の作家が夢の競演!日本ミステリー界の第一線で傑作を生みだしてきた作家に脈々と受け継がれる妙技を綴じ込めた究極の一冊。
週刊誌のキャップをする兄から「私」に電話があった。上海系の麻薬組織を追跡取材しているが、編集部には中国語を話せる者がいないので手伝ってほしいと言う。早速私は大同というデスクの取材に同行することになった。関西の広域暴力団までが絡むからくりが見えてきた。そして、兄の首が切り落とされた!温厚な男の中に眠る戦士の目覚めを、練達の筆致で描き切る。
鬼(ゴースト)。おれが還暦になったとき見えはじめた奇妙な寄生生物だ。そいつが、目黒川に浮いた首と両手のない屍体を見つけた-警官上がりの血が騒ぐ私立探偵・前田太一は、相棒のゴーストとともに危険に満ちた事件に飛び込んだ!被害者は晴友銀行の総務部長代理・高井。犯人は中国マフィアの二人組とすぐに判明した。ところが、この事件の背後に、晴友銀行の巨額の裏金を巡る恐るべき陰謀が隠されていた。続出する犠牲者。太一は潜入捜査に挑むが…!?ときにユーモラスに、ときにスリリングに、練達の筆が冴える!シルバー・エイジのタフ・ガイの活躍を、痛快に描く長編ミステリー。
内閣調査室の工作員だった速水は引退して、今は六本木のディスコのオーナーに収まっていた。しかしその平穏な日々は親友だった竹中の息子の出現によって破られた。息子の話から竹中の死に不審を感じた速水は、元の上司が副頭取に就任している銀行を脅迫、十五億円を要求すると同時に真相を暴こうとする。その速水の許に五人の男女が集まって…。痛快ハードボイルド。
直木賞受賞、睡眠薬中毒、そして離婚。編集者を経て作家となった著者ならではのハードボイルド・グラフィティ。吉行淳之介、野坂昭如、長部日出雄、星新一、佐野洋、小松左京、司馬遼太郎らも登場。ミステリー界の裏面史を実名、秘話、とっておきエピソードで描いたファン必読、疾風怒涛のミステリー開拓時代。
邦友銀行香港支店のディーリング・ルーム室長村木晴彦は日々刻々と変動する為替市場で神経をすり減らしていた。円高に相場が動くなか、村木は上司の命令でドル買いに走り、一日で十億円の損失をだした。それは、香港のブラック・マネーを扱う大物・柳宗源の仕掛けた巧妙な罠だったのだー。瞬時に大金を動かす男たちのプライドを賭けた戦いを描くハードロマン。
香港に赴任している私は、ここでの生活に満足していた。食べ物も旨いし、なにより美貌の中国人秘書との情事にすっかり溺れていた。次第に妻の存在が疎ましくなってきたある日、秘書が案内してくれた秘密パーティで食した超美味な特別料理に魅せられてしまった。そしてその日から妻が行方不明に…。全編を奇妙な恐怖で包んだ異色ショートホラー&サスペンス集。
警視庁捜査4課で暴力団相手に活躍する父と元フリーのリポーターで事件大好きの母を持つぼくの名前は青野純之介。まだ1歳の赤ん坊だが、ぼくのタフガイぶりはちょっとけた違い。暴力団の幹部も「いい根性している。ヤクザにすれば大物になる」と保証するし、ぼくを誘拐した犯人は、ぼくももてあまして逃げ出す始末。1歳のベイビイを主人公にした、奇想天外なユーモア・ミステリー連作。
敏腕事件記者だった橋田雄三は女でしくじって以来、横浜の支局でくすぶっていた。偶然に暴力団羽島組の麻薬取引きを知った橋田は、怠惰な毎日に別れを告げるべく、ボクサー崩れの花井、ドブチュー呼ばれる古物商とその娘を中間に、麻薬横取りを狙い、神戸へと向かった…。長篇ハードボイルド・アクション。
刑務所から出所した日向政一を待ちかまえていたのは、美青年花村千次。美術商の父をヤクザに殺されたため、ニューヨークから帰国。百万円の手付金で日向こと“ヒグマ”に「殺し屋」入門。標的は巨大組織三星会組長。日向は殺し屋レッスンの第一章として、なぜか花村を自分の愛人美樹のマンションに連れてゆくー。ユーモラスに展開する異色のハードボイルド長編小説。
第2次大戦の終了まぎわ、日本軍によってマレーシアの奥地に秘匿された時価数百億円の財宝探しが計画された。チームのメンバーに、美貌の女・須賀涼子、ボディガード役に、元情報工作員で射撃の名手・原卓二。そして謎の現地組織。恋と欲望の修羅場の勝者は誰か?著者渾身の長編冒険バードボイルド。
暴力団浜内組の幹部を追跡中、同僚を誤射した志田司郎は、刑事を辞し、妻子とも別れ、たったひとりで、波止場に単喰う巨大な暴力組織に立ち向ってゆく。近代経営の仮面の影に巣喰う悪との凄まじい闘い。日常を捨て“追いつめ”てゆく異常な執念を描く、日本にハードボイルド小説を樹立した画期的長編小説。直木賞受賞作品。
未知への情熱で中国に渡った青年・紅真吾の貿易公司は、日本の商社に押されて破産した。“最後の豪遊”をきめこんだ真吾は、料亭で、高価な豚の毛集めの話に誘われる。揚子江3千キロの旅に同行するのは、大陸浪人など素姓の知れぬ猛者ばかり9人だった。広大な中国大陸に繰り広げられる、日本の代表的冒険小説。
実の父親を求めて春をひさぐ少女。家族を探すために密入国した中国人。アル中の元プロレスラー。薬に溺れた自暴自棄の少年。横浜でシップチャンドラー(外国船に食料、雑貨を納入しマージンを取る)を営む久須見のもとに、なぜかトラブルと心の傷を背負いこんだ人間が集り、そのたびに久須見は事件に巻き込まれていく…。港街を舞台に、傷つきながら生きていく人間たちを描いた連作ハードボイルド。