著者 : 生島治郎
死はひそやかに歩く死はひそやかに歩く
実の父親を求めて春をひさぐ少女。家族を探すために密入国した中国人。アル中の元プロレスラー。薬に溺れた自暴自棄の少年。横浜でシップチャンドラー(外国船に食料、雑貨を納入しマージンを取る)を営む久須見のもとに、なぜかトラブルと心の傷を背負いこんだ人間が集り、そのたびに久須見は事件に巻き込まれていく…。港街を舞台に、傷つきながら生きていく人間たちを描いた連作ハードボイルド。
悪意のきれっぱし悪意のきれっぱし
いち早くこちらの気持ちを察して、そのときどきに欲しいものを出してくれる女。セックスのとき、望むとおりの体位をとって、望むとおりの快感を与えてくれる女ー透視能力のある女を愛人に持ったその男、はじめは有頂天だったが、そのうち女がハナにつきだして…(「死ぬほど愛して」)。不条理な世界をブラックに描く、異色作品集
もっとも安易なスパイもっとも安易なスパイ
おれの名は間兵介。スパイになることを妄想しながら、細々と翻訳の下請けで糊口をしのぎ、女房にも頭の上がらない、しょぼくれた男だ。だが、そんなおれにもチャンスが巡ってきた。元陸軍中野学校の教官だったベテラン・スパイが助手を探しているというのだ。おれは喜びいさんでそのスパイを訪ねたが…著者会心のユーモア・ハードボイルド傑作集!