著者 : 田村義進
私立探偵のマカニスは、とある人物から招待されて、人里離れた会員制狩猟クラブを訪れた。会員たちがクラブの存続問題などで揉めるなか、湖で一つの死体が発見される。さらに、嵐によってクラブは陸の孤島となり…。名探偵、密室、クローズドサークル、連続殺人、古今東西のミステリへの言及ー。すべては本格ミステリの舞台として完璧かと思われた。しかし、夢想だにしない展開の末に読者を待ち受けるものは、困惑か狂喜か。これはミステリなのか、それとも。ポケミス読者よ、信ずるなかれー。
第5子を妊娠中のアンドレアはニュージャージー州郊外に住む専業主婦で、かつてはFBIの優秀なプロファイラーだった。殺人事件の現場に偶然出くわしそこで末っ子がお漏らしをしてしまったことをきっかけに、彼女は落ち目のジャーナリストのケニーと調査を開始する。50年前に地元で発見された骨と今回の事件との関連に気づいた彼女は、隠された町の秘密に迫る。やがて明らかになったのは人種差別をめぐる暗い過去だった。「いまはイケてない」探偵コンビが郊外の町で犯人を追い詰めるオフビートな痛快ミステリ。
1949年、インドボンベイ。共和国化を目前にした大晦日の夜、パーティーの最中に英国外交官ジェームズ・ヘリオット卿が殺された。犯行現場の金庫は空。さらにジェームズ卿の上着からは暗号めいたメモが見つかった。捜査に当たるのはペルシス・ワディア警部。インド初の女性刑事として警察組織の内外で逆境に立たされながらも、明敏な頭脳と不屈の精神で国家を揺るがす大事件の真実に迫る。独立運動の遺恨と共和国化の混沌の只中にあるボンベイを舞台に、女性警部の活躍を描いた英国推理作家協会賞受賞の歴史ミステリ。
1921年12月、英領カルカッタ。インド帝国警察の英国人警部ウィンダムが阿片窟でキセルの夢に溺れていると、警察のガサ入れが。慌てて逃げだす途中、両眼をえぐられ腹を刺された男が現れ眼前で息を引き取る。だが翌日、死体の目撃情報はなく、阿片の見せた幻にも思えたが、別の場所で同様の死体が発見される。折しも英国皇太子とガンジーの側近のカルカッタ訪問で独立運動が激化するなか、ウィンダムと相棒のインド人部長刑事バネルジーはこの奇妙な連続殺人の謎を解けるのか?傑作歴史ミステリのシリーズ第3弾。
1920年6月、英国統治下のカルカッタで、藩王国サンバルプールの王太子が暗殺された。実行犯に目前で自殺されたインド帝国警察の英国人警部ウィンダムは、相棒で同居人のインド人部長刑事バネルジーと共に、真相を追ってサンバルプールへ赴く。だが、王宮の独特な慣習に翻弄されて捜査は難航。しかも、さらなる暗殺事件が起こり、背後には英国諜報機関の影が…独立の気運に揺れるインドを舞台に英国人とインド人の名刑事コンビが活躍する傑作歴史ミステリのシリーズ第2弾。ウィルバー・スミス冒険小説賞受賞作。
身に覚えのない罪を着せられてニューヨーク市警を追われたジョー・オリヴァー。十数年後、私立探偵となった彼は、警察官を射殺した罪で死刑を宣告された黒人ジャーナリストの無実を証明してほしいと依頼される。時を同じくして、彼自身の冤罪について、真相を告白する手紙が届いた。ふたつの事件を調べはじめたオリヴァーは、奇矯な元凶悪犯メルカルトを相棒としてニューヨークの暗部へとわけいっていくが。心身ともに傷を負った彼は、正義をもって闘いつづけるー。アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長篇賞受賞作。
1919年、英国統治下のカルカッタ。スコットランド・ヤードの敏腕警部ウィンダムは、第一次大戦従軍を経て妻を失い、倦み疲れてインド帝国警察に赴任した。右も左もわからぬ土地で頼みの網は、理想に燃える若く優秀なインド人の新米部長刑事バネルジー。二人は英国人政府高官が何者かに惨殺された事件を捜査する。背後には暴動寸前の現地の憤懣と暗躍する諜報機関の影が…東洋の星と謳われた交易都市を舞台に、複雑な政情を孕む奥深い謎と立場を超えた友情が展開する、英国推理作家協会賞受賞の傑作歴史ミステリ。
戦地から帰還後、極度の閉所恐怖症のため野外生活を送っていたピーター・アッシュ元中尉のもとにかつて部下で友人だったジミーの自殺の報が入る。未亡人ダイナの力になりたいとジミーの家を訪ねたアッシュは、そこに40万ドルもの大金と爆薬が隠されているのを見つけた。ダイナの周囲には怪しげな人物が出没し、アッシュは彼女を守るため、故国での激烈な戦いに身を投じる…高い評価を受けた新鋭が放つ大型シリーズ開幕。
英国の落ちこぼれスパイたちの吹きだまり“泥沼の家”では、今日もボスのジャクソン・ラムのもと“遅い馬”たちが退屈な業務に向かっていた。ところが、そのひとりでラムの秘書のキャサリンが、何者かに拉致された!犯人から指示を受けた“遅い馬”のカートライトは、彼女の身の安全と引き換えに、本部に厳重に保管された情報を盗み出すことになるが…“泥沼の家”の存亡をかけて、落第スパイたちの奮闘がはじまる!
砂漠の夜の闇を駆ける一組の男女。サム・ドライデンは軍隊時代の旧友クレアから呼びだされ、事情も判らぬままに四人の少女を救出した。その後、クレアは黒い奇妙な箱を彼に見せ、そこから流れるニュースを聞かせて言った。「このマシーンは十時間二十四分後に放送されるラジオの電波を拾うのよ」。サムが助けた少女たちは、本来は焼死しているはずだったのだ。そしてFBIが二人の足取りを追うなか、謎の組織もまた彼らに迫っていた…。数時間先の未来を知る者たちの息詰まる攻防、下りオンリーのジェットコースター・スリラー!
一人の元スパイが心臓発作で死んだ。その死に疑惑を抱く者はいない…ジャクソン・ラム以外は。スパイは死ぬまでスパイだ。スパイが死んだなら、そこには必ず何かがあるはずなのだ。はたせるかな男はメッセージを遺していた。ただ一語“蝉”-それは旧ソ連の幻のスパイにかかわる暗号名だった!ラム率いる“泥沼の家”の落第スパイたちが、動き出す。『窓際のスパイ』に続く会心の痛快作。英国推理作家規会賞ゴールドダガー賞受賞!
犯罪のサポートと情報の売買。それがカーラの仕事だった。だが今回持ち込まれた依頼は危険きわまりないー“プログラム”への潜入の手配である。頻発する刑務所の暴動に手を焼いたイギリス政府が導入した矯正施設、“プログラム”。ゴーストタウンとなった住宅街を接収、二重の壁で囲み、そこで受刑者たちによる「自治」が行なわれている。依頼人は元狙撃兵の殺し屋ジョハンセン。カーラの手配でジョハンセンは施設に潜入するが…。依頼の背景を調べはじめたカーラは、次々に不可解で不穏な事実にぶちあたる。かつて彼女とジョハンセンが関わったギャングの抗争。元MI5の老スパイの死、謎の失踪を遂げた女性医師。警察、MI5、犯罪者たち…この一件の裏側で何か秘められた謀略が動いている。そして“プログラム”の中では、ジョハンセンに怨みを抱く大物ギャングが待ち受けていた…。ジョン・ル・カレばりの陰謀の迷宮。スタイリッシュなクライム・ノワールの語り口。最高にクールな女性ヒーローと巧妙なプロットでイギリス出版界を揺るがせた新人のデビュー作。
“泥沼の家”と呼ばれるその部署は、英国情報部の最下層だ。不祥事を起こした部員はここに送り込まれ、飼い殺しにされるのだ。若き部員カートライトも訓練中のミスのせいでここに放り込まれ、連日ゴミ漁りのような仕事をさせられていた。もう俺に明日はないのか?ところが英国全土を揺るがす大事件で、状況は一変した。一か八か、返り咲きを賭けて“泥沼の家”が動き出す!英国スパイ小説の伝統を継ぐ新シリーズ開幕。
ケネディ兄弟を殺し、キング牧師を殺した男たち。リチャード・ニクソンと手を組み、やつらはドミニカ共和国に魔の手を伸ばす。新大統領リチャード・ニクソン。中米進出を狙うマフィア。黒人過激派を追いつめるFBI。“悪い白人ども”の手足となった男たちは大虐殺の平原めざし、死と謀略の旅に出る。10年ぶりに放つ新たなる超大作。
殺されゆく者の絶望と殺す者の苦悩が交錯し、すべての物語がひとつに雪崩れ込む。白人の帝国アメリカの最期を描きつくす暗黒の交響楽、圧巻のクライマックス。幾筋もの黒い奔流がついに一つに合流し、やがて訪れる荘厳な最終楽章。“アメリカ文学界の狂犬”が白熱の文体で奏でる畢生の大作。
南米の富豪ルノーが滞在中のフランスで無惨に刺殺された。事件発生前にルノーからの手紙を受け取っていながら悲劇を防げなかったポアロは、プライドをかけて真相解明に挑む。一方パリ警視庁からは名刑事ジローが乗り込んできた。たがいを意識し推理の火花を散らす二人だったが、事態は意外な方向に…新訳決定版。
ふざけんな!息子との夕食を台無しにした迷惑電話にハニーは激怒した。彼女は問題のセールスマン、ボイドを孤島におびき寄せ、根性を叩き直してやることにした。何も知らずボイドは愛人連れで旅立つが、島にはハニーを狙う狂気のストーカーも…。
1660年、王政復古直後のロンドン。そこで20年近く書店を営むインチボルドは、アレシアと名乗る貴婦人から行方不明の稀覯本探しを依頼された。清教徒革命中に屋敷を荒らされたときに紛失した『迷宮としての世界』を取り戻してほしいという。それは1620年代のプラハで帝国図書館のために書籍の買い付けにあたり、蔵書家としても名高かった彼女の父アンブローズ卿が遺した貴重なものだった。破格の報酬に不審の念を抱きながらも、インチボルドはアレシアの屋敷から密かに持ち出した謎の暗号文を手がかりに蔵書探しを開始する。彼が試行錯誤の末に暗号を解くと、『迷宮としての世界』を思わせる言葉が浮かびあがった。はたして、この言葉には何の意味が?謎が深まっていくなか、蔵書の行方を追うインチボルドは、自分でも知らぬうちにアンブローズ卿と三十年戦争の時代に遡る恐るべき陰謀へと呑み込まれていった!1660年のロンドンと1620年代のプラハ。40年の歳月を経て一冊の稀覯本から繙かれる壮大な謎。“博聞と好学の徒をもって任じる”書店主アイザック・インチボルドを道案内に、書籍に関する蘊蓄をちりばめて贈る話題の歴史ミステリ。
夜の張りこみのさなか、ライアンとグレゴリーは、棺を運ぶ葬列さながら、三つの人影がドラム缶を川に沈める光景に遭遇した。夜が明け水底を探ったが、見つかったのは古びたゴミバケツだけ。ところがその中から、失踪していた悪徳警官の白骨死体が転がりだす。ニューヨーク市警組織犯罪部の対照的なふたりの刑事が、湾岸地区に埋もれた犯罪を追う。哀歓のにじむ警察小説第一弾。