著者 : 白竜仁
女性週刊誌記者樺山葉子、シンガーソングライター花岡月子、大手商社OL北井澄子は横浜山手の、港の見える町を故郷に持つ幼なじみであった。三人は経済的にも恵まれたキャリアウーマンであり、自由で華やかな生活を楽しんでいた。彼女たちは、結婚は魅力ある女性の天敵と考え、否婚の人生を歩もうと誓い合う。結婚は否定するが、恋とセックスは充分楽しむというのが否婚女性のモットーであった。年下の恋人、銀髪のパトロン、不倫…奔放な愛が、独り生きる女の夜を妖しく彩ってゆく。だが、時に、彼女たちをとらえる、この深い淋しさはいったい何であろうか。結婚に背を向けて生きる女の青春と哀感を通して、愛とは何か、結婚とは何か、性とは何かを問う新都会派小説-。
取り立てて才能があるとは思えない一人の青年の思いつきで始まったペーパー商法-悪の企画は当りに当った。マル秘特訓を受けたセールスマンは、野獣のごとく日本列島を暴走し、老人や主婦に襲いかかった。年商1千2百億円-。一流上場企業も顔負けの恐るべき集金力は、果して31歳の青年虚業家の辣腕によるものか、偶然か-。出生すら謎に包まれている青年の背後に漂よう無気味な影は何か?老女の心をもて弄ぶセールスマン、愛欲に狂うセールスウーマン-巨大詐欺ビジネスの迷路に響く殺意の狂詩曲…。
倒産により、暴力金融に追われる新谷京助は、人生の吹きだまりのようなボロアパート日暮荘に身を潜め、絶望のヘドロの中でのたうちまわっていた。だが、その頃日本宗教界に相次いで起きた、脱税事件と殉死事件が、追いつめられた新谷に突如として不逞の企みを抱かせたのである。偽装の神がかりによりニセの生き神様となって、大教団を組織、巨億の富をつかもうという破天荒な野望である。2年数カ月の緻密な計画の果てに、ついに一世一代の大芝居、まやかしの神がかりは実行され、新宗教「地蔵法眼教」は旗あげした。
偽装の神がかりは成功し、ニセ生き神様の新興宗教は、日に日に教勢を拡大して行く。本当の宗教は釈迦とキリストにまかせておけとばかりに、次ぎ次ぎに打ち出される霊感商法の名アイデア。年商100億円-。すべて虚構の上に築かれた宗教のはずなのに、なぜ人は救われ、教団はゆるぎない存在になっていくのであろうか。教団、永遠不滅の証左として、武蔵野の一角に、大伽藍が建立されようとしていた。自らの野望のために恋も人情も捨てる宗教商人の壮絶な生涯。改めて宗教とは、救いとは、信仰とは何かを問う大河ドラマ。