著者 : 真野ひろみ
蛍の石蛍の石
生人形一座から岩亀楼に売られてきた仲居のおときの前には、何かあると“不如帰”が現れ、「人を信じてはいけない」「幸せを望んではいけない」と言うのだった。生麦事件をはじめとして風雲急を告げる頃、攘夷の志士・桜田が現れた時、おときの人生は大きく舵が取られていく。
をんなだゆうをんなだゆう
十年前の天保の改革の時、風紀を乱すということで、寄席や芝居小屋が厳しく取り締まられたことがあった。その改革の中、娘浄瑠璃は、真っ先に寄席から締め出された。江戸の風紀を乱す、淫らがましい演芸とみなされたのである。その後、水野忠邦が失脚するに至り、にわかに規制のゆるんだ江戸市中には、「雨後の筍」と揶揄されるほど寄席が乱立した。しかし、娘浄瑠璃だけは、いまだに興行を打つことを禁じられている。政に翻弄されながら、芸の道に一途に生きた娘浄瑠璃の哀歌。新進気鋭が書下ろす、長編時代小説。
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