著者 : 矢部真理
1年前、ドミニクは夫のもとを飛び出した。熱烈な恋に落ちて結婚したが、夫とは何もかもが違いすぎたのだ。アンドレアスは10歳も年上で、しかもギリシアの大富豪。彼女はといえば、年若いアメリカ人女性で名家出身でもない。ドミニクという妻がいながら、夫は女性によくもてた。ついにはある女性との浮気疑惑が裁判沙汰にまでなってしまい、ドミニクは彼の妻でいられる自信をなくしたのだった。だが何度離婚届を送っても、夫はサインを拒み続けた。そしてとうとう彼はドミニクを追ってきて、二人はある取り決めをした。もう1カ月だけ二人で暮らし、結婚を修復できるか試してみよう、と。
大学生のソフィはシチリアで12歳年上の大富豪マックスに恋をした。世の女性が放っておかない彼のような魅力的な男性に求愛され、ソフィは天にも昇る思いで純潔を捧げた。しかし、二人のあいだで結婚の約束まで交わしたというのに、ほどなく彼と長年噂のある女性との親密な会話を立ち聞いてしまう。ショックを受けたソフィは、即座に別れを告げたのだった。7年後、とあるパーティで二人は再会を果たす。ソフィの父親の会社が窮地にあると知ったマックスは、負債を引き受ける代わりに、君を愛人として囲うと言い放ったーかつて一方的に離れていった彼女を、飽きるまで楽しむつもりで。ソフィは幼い義弟を路頭に迷わせないために、マックスとの屈辱的な取り引きに応じざるをえなかった。けれど、いざヴェネチアの屋敷での同棲生活が始まると、ソフィの中にあった情熱の残り火が今にも再燃しようとして…。狂おしいほどにもつれる愛の物語。
突然、病室に現れた義兄モーガンの姿にセリーナは茫然とした。セリーナの事故の知らせを聞きつけて、やってきたという。母親が再婚したとき、セリーナはまだ12歳だった。孤立しがちな彼女を年の離れた義兄だけが気にかけてくれ、その優しさに触れるうちに、次第に彼を好きになってしまった。後ろめたい思慕を隠そうとしたのに、いつしか知られてしまい、17歳のセリーナは悩んだあげく、家を出たのだー二度と義兄に会わないと決めて。もがき苦しむセリーナに、モーガンが低い声で突きつけた。「きみを家に連れて帰る」