著者 : 矢野徹
酒場を訪れた青年は、おもむろに身の上話を切りだした。「おれがまだ小さな娘だったころー」。イーサン・ホーク主演で映画化されたタイム・パラドックスの傑作である表題作(映画化名『プリデスティネーション』)、自分を尾行するよう依頼してきた男ホーグ氏をめぐる謎に巻き込まれていく私立探偵の夫婦を描いた「ジョナサン・ホーグ氏の不愉快な職業」など、巨匠ハインラインの精髄を味わえる全6篇を収録した傑作集。
旅客機がハイジャックされ、操縦士のオハラはアンデス山中の高所に無謀な不時着を強いられた。機体はひどく損傷し、犯人らは死亡。かろうじて生き残ったオハラたち九名は、高山病に苦しみながらも救助を求め山を下り始めた。そんな一行を、突如銃撃が襲う。一体誰が、何のために?背後は峻険な峰々。絶体絶命の窮地に陥った彼らは、驚くべきアイデアでこれに挑むが…壮大な自然に展開する死闘。冒険小説史上屈指の名作。
宇宙居留地ゴールデン・ルールで気ままに暮らしていたおれは、ある日見知らぬ男から人殺しを依頼された。だが詳しい説明を受ける間もなく、男は目の前で射殺されてしまった。新婚の妻グエンと共に真相究明に乗り出したおれだが、逆に覚えもない殺人の容疑をかけられて逃げまわる羽目に…いったい誰がおれを罠にかけたのか。宇宙居留地から月世界、並行世界にまで舞台を移しながら、スピーディーに展開する冒険巨篇。
あたしの名前はフライデイ。職業は戦闘伝書使ー秘密文書を正確かつ迅速に運ぶのが任務。でも、この仕事は危険がいっぱい。先日も謎の武装集団に捕えられ、手ひどい拷問を受けたばかりだ。はやく休暇を取って、ニュージーランドに住む3人の夫のもとに帰りたい。だけど、彼らはどう思うだろう。あたしが遺伝子操作で作られた人工人間だと知ったら…ハインラインの著作中、最も魅力的なヒロインが活躍する傑作長篇。
黄色い煉瓦のオズの国、『ガリバー旅行記』の小人国…。多元宇宙を旅するぼくらが見たものは、かつて親しんだ小説そのままの世界だった。本の中の世界はみんな宇宙のどこかに実在していたのだ。だが、どんな宇宙に逃れても、邪悪な異星人は執拗にぼくらを追ってくる。ぼくら一家に安住の地はないのか?そんな時、ぼくらの前に思いもよらぬ人物が現われた…。巨匠が最大の情熱を傾けて描き上げた力作長編、ここに完結。
「あたしのパパが作ったタイム・マシンを見てくださる?」-ぼくの決死のプロポーズに、彼女は笑ってそう答えた。だがそれは単なるタイム・マシンではなくー。多元宇宙を自在に往来できる連続体飛行機だった。この画期的発明を狙う謎の異星人に新婚早々殺されかけたぼくらは、この飛行機を駆って時空を超えた逃避行へと旅立ったのだが…。円熟期を迎えたハインラインの力作長篇、待望の文庫化第一弾。全三巻完結。
五十万年前に太陽系を訪れ、なにに使うかもわからない奇妙な物や不思議な建造物を残したまま、いずこかへ消え去った謎の異星人ヒーチー。金星の地下都市スピンドルに住むウォルサーズは、そのヒーチーの残したトンネルに観光客を案内して生計をたてている。めったに来ない大金持ちの観光客をつかまえたウォルサーズの命がけのトンネル・ガイドを描く「金星の商人」ほかの連作を収録する巨匠ポールの人気シリーズ番外篇。
ロサンゼルス近郊の原子力発電所が、テロ集団に襲撃された。犯人たちは放射性物質を強奪し、さらに原子力物理学者と職員数名を誘拐ー。そこにはライダー主任刑事の妻スーザンも含まれていた。愛する妻を救うべく、必死の捜査を続けるライダー。一方、盗んだ放射性物質から核爆弾を製造したテロ集団の首領モロは、これを使用してカリフォルニア州全域を壊滅させると通告してきた。核テロリズムの恐怖を描く冒険サスペンス。
火星の開発調整地域で見つかった二人の男の死体は、全身きれいにボイルされていた。その死人のひとりは“ジャンク屋”と呼ばれる臓器密売業者だったー。一方、異星からの謎の侵略者・エリミネーターの正体を追い求め、壮絶な死をとげたゴドー中尉の敵討ちをすべく、シン・ムナカタは情報部への転属を願い出たが…。違法な臓器売買と連邦宇宙軍内部にただよう不正の気配。やがて、ムナカタのまえに巨大な敵が現われた。
憧れの地球連邦宇宙軍に海兵隊員として入隊したシン・ムナカタ。だが、弱冠19歳のムナカタの初陣は悲惨だった。火星のポイントに偵察訓練に出た小隊は正体不明の敵の攻撃を受け、ムナカタ以外全滅してしまったのだ。ただ一人生き残ったムナカタ、その生還は絶望的と思われたが…謎の敵・エリミネーターの正体を追うムナカタと、彼を支える宇宙最大の民間総合危機管理請負業者〈ホーリー・スォード〉の活躍を描く。
惑星間戦争以前、人類は宇宙進出に燃え多くの惑星を開拓していった。テラ2もそんな植民星のひとつである。だが、人類の存在すら危機的状況に落としいれた惑星間戦争のため、地球からの船は途絶えーそして、500年の歳月が流れさった。植民グループごとに成立した都市国家は、苦難の開拓時代を経て、成熟の時を迎えつつあったが、植物戦争を契機として、異変が起きた。都市国家のひとつECが隣国のニロスを統合し、圧政下のニロスでは、救国戦線を中心としたレジスタンスが展開していた…。連邦宇宙軍の活躍を描く新シリーズ、開幕。
500年ぶりの地球からの公式使節団を乗せた連邦宇宙の恒星間戦闘宇宙軍ライデンは、テラ2の静止軌道上で待機していた。テラ2での交渉相手は誰なのか?地球連邦議会議員選挙をひかえ、使節団長のトカレフはあせっていた。はやくテラ2の代表者と接触しなければ選挙に間にあわない。一方、ECの独裁者マウザーは独裁政治隠蔽を図り、目ざわりな救国戦線の一掃のため、ニロスに中性子爆弾を打ち込もうとしていた。このミサイル発射を阻止できる人物はただ一人ーその名はヒロト・アカギ、ニロスのコンピュータ・プログラマーであった。
何者かの意志によって異なる次元を転々と飛ばされていくテッド・アマノ。突如、太平洋戦争のさなかの昭和19年に飛ばされたアマノは、四国の善通寺師団に設けられた特設語学研修室に参加していた。美人教師ナンシイの問いかけに持ち前の英語力で受け応えて優秀な成績をおさめ、さらに上海への密使の役目を負ったアマノだが、その最中にも何度か転移を続け、そしていくどとなく命を狙われた…戦時中の日本、中国、さらに未来と多元宇宙を戦場として闘いを繰り広げていくテッド・アマノの活躍を描く「悪夢の戦場」の第2弾。
目覚めると、ベッドのなかには見知らぬ男の死体。おまけに、わたしは全裸。自分がどこに、いつの時代にいるのかさっぱりわからない。いったい、何が起こったのだろう…。わたしの名前はモーリン・ジョンソン・ロング。長命族の指導者ラザルス・ロングの母にして、その共同妻。植民星テラス・ターシャスに、時空間移動可能の航宙機〈ゲイ・デシーバー〉に乗ってやってきてからというもの自分の子孫にかこまれて優雅な生活を送っていた。なのに、昨夜からの記憶がまるでない。わたしは必死になって記憶をたどるのだが…。本書はラザルス・ロングの母モーリンを主人公に、〈未来史〉シリーズにふくまれるすべての作品が見事に結び合わされる、巨匠ハインライン、最後の作品である。
空中を浮遊する風船虫、地上を這いまわるひしゃげ蟹、そして空中を掘り進む穴掘屋ー宇宙生物学者ダニー・デイルハウスは狂喜した。双子座の惑星ジェムには、三種類もの知的生物が存在しているのだ。そのうえジェムは地球型環境の惑星だから、人口増加と資源枯渇に悩む地球にとって、願ってもない植民惑星となる。デイルハウスの調査結果をうけ、食料ブロック、燃料ブロック、人民ブロックにわかれた地球では、ただちに各ブロックごとの探険隊が組織された。他ブロックより先にジェムを獲得するために三つどもえの熾烈な競争が始まったのだ。