著者 : 矢野徹
何者かの意志によって異なる次元を転々と飛ばされていくテッド・アマノ。突如、太平洋戦争のさなかの昭和19年に飛ばされたアマノは、四国の善通寺師団に設けられた特設語学研修室に参加していた。美人教師ナンシイの問いかけに持ち前の英語力で受け応えて優秀な成績をおさめ、さらに上海への密使の役目を負ったアマノだが、その最中にも何度か転移を続け、そしていくどとなく命を狙われた…戦時中の日本、中国、さらに未来と多元宇宙を戦場として闘いを繰り広げていくテッド・アマノの活躍を描く「悪夢の戦場」の第2弾。
目覚めると、ベッドのなかには見知らぬ男の死体。おまけに、わたしは全裸。自分がどこに、いつの時代にいるのかさっぱりわからない。いったい、何が起こったのだろう…。わたしの名前はモーリン・ジョンソン・ロング。長命族の指導者ラザルス・ロングの母にして、その共同妻。植民星テラス・ターシャスに、時空間移動可能の航宙機〈ゲイ・デシーバー〉に乗ってやってきてからというもの自分の子孫にかこまれて優雅な生活を送っていた。なのに、昨夜からの記憶がまるでない。わたしは必死になって記憶をたどるのだが…。本書はラザルス・ロングの母モーリンを主人公に、〈未来史〉シリーズにふくまれるすべての作品が見事に結び合わされる、巨匠ハインライン、最後の作品である。
空中を浮遊する風船虫、地上を這いまわるひしゃげ蟹、そして空中を掘り進む穴掘屋ー宇宙生物学者ダニー・デイルハウスは狂喜した。双子座の惑星ジェムには、三種類もの知的生物が存在しているのだ。そのうえジェムは地球型環境の惑星だから、人口増加と資源枯渇に悩む地球にとって、願ってもない植民惑星となる。デイルハウスの調査結果をうけ、食料ブロック、燃料ブロック、人民ブロックにわかれた地球では、ただちに各ブロックごとの探険隊が組織された。他ブロックより先にジェムを獲得するために三つどもえの熾烈な競争が始まったのだ。
西暦2024年。世界人口は80億を越え、全世界は食糧不足と国際緊張にあえいでいた。コンピューターによれば人類滅亡の可能性は90パーセント以上。この危機を乗り越えるには、火星に植民するしかない。そこでアメリカは総力をあげて《マン・プラス》計画に挑んだ。苛酷な火星環境に適応させるため、人間をサイボーグ化しようというのだ。サイボーグ第1号は実験中に死亡し、すべては第2号であるロジャー・トラウェイの双肩にかかっていた。だがそのロジャーにも危険信号が…。ポールがサイボーグをテーマに人間と機械の新たな関係を描く力作SF。ネビュラ賞受賞作。
軍需品製造会社に勤務する平凡な経理課員ビルソンが、突如失踪した。同社の保安を担当するスタフォードは、早速調査を開始。その結果、彼の父親が1936年にサハラ砂漠で消息を絶った飛行家で、その父を中傷する新聞記事が、ビルソン失踪の原因らしいことをつきとめる。スタフォードは事件が会社と無関係と見て、調査の打ち切りを決定。だがその直後、何者かに警告の襲撃を受けた。事件の背後には、何か秘密が隠されているのか?スタフォードはビルソンの足どりを追ってサハラへ飛ぶ決意を固めた。冒険小説の醍醐味を満喫させる巨匠の会心作。
腕っこきの傭兵少佐、ダウ・ステーヴァーズは、たて続けに命を狙われる。やがて犯人から招待状が届き、乗り込んだ先は“重役会”という名で呼ばれる大シンジケートの幹部会だった。世界を支配しようと計画する彼らは、ダウの力を試させてもらったという。彼らが探している品を手に入れられる男かどうかを。その品こそ、人々を思いのままに操る力を持つ宝石、メサイア・ストーン。かつてヒトラーが手にしていたという幻の宝石なのだった。
木星の第3衛星ガニメデー太陽系最大の衛星に、いま、人類の本格的な植民がはじまる。宇宙船メイフラワー号にガニメデ植民団の一員として乗船したビル・ラーマーは、期待と興奮で胸がいっぱいだった。人口過密と食糧危機にあえぐ地球にとって、ガニメデ植民はその唯一の解決策なのだ。だがメイフラワー号の6千人もの植民団を一度に受け入れるには、ガニメデ植民地はあまりに小さすぎた。ビルの思惑に反してガニメデでの生活は、まず自分の土地を獲得することからはじまった…。ガニメデの厳しい自然環境を舞台に、1人の多感な少年の成長を瑞々しく描きあげる傑作SF!
本書はアメリカの人気SF雑誌〈ギャラクシー〉創刊30周年を記念して刊行された、ファン注目の記念碑的短編集の上巻である。編者はかつて2代目編集長を務めた作家フレデリック・ポール、フリッツ・ライバー、ロバート・シェクリー、コードウェナー・スミス、アルジス・バドリスなどの一流作家の作品を発表年代順に収録し、それぞれの著者による〈ギャラクシー〉誌にまつわる覚書を添えた。