著者 : 神鳥奈穂子
伯爵領の使用人の娘ホリーは、女として未熟だと恋人に捨てられた。心沈む彼女のもとに、ある日、亡き伯爵からの遺言状が届く。“ふたりのうち先に結婚し、婚姻関係を1年続けたほうに地所を譲る”うまくいけば、父が大切に守ってきた土地を、父に贈ることができる。問題は、もうひとりの相続人候補、大富豪のステファンー8年前、国を追われて英国へ渡り、世界的な不動産王になった人物だ。いざ対面したとき、ホリーはステファンの凛々しさに息をのんだ。ほだされちゃだめ、男手一つで育ててくれた父に恩返しするのだから。一方、母国復帰の思惑を胸に秘めたステファンは、思いがけない台詞で彼女を翻弄した!「僕と結婚してくれ」。幼くして母親に見捨てられ、不実な恋人からも理不尽に捨てられたホリー。そんな彼女を拾うかのごとく求婚したのは、なんと真剣な恋や純真な愛を拒む大富豪で…。切ないシンデレラ・ストーリー。『さよならを言わせて』『妃になれないシンデレラ』の関連作。
ベスは暴力で支配しようとする夫とようやく離婚したものの、貧しさゆえに親権はなく、愛しい息子を奪われ悲嘆に暮れていた。ふとベスの脳裏に大富豪ランドンの姿が浮かんだ。彼女の前夫のせいで妻子を亡くしたランドンなら、この苦しみに共感し、手を差し伸べてくれるはず。ほどなくしてベスはランドンと1年限りの結婚契約を交わし、夫婦となって、息子を無事に取り戻す計画を進めた。だが、思わぬ誤算が生じる。ランドンの男らしさと献身ぶりにベスは激しく惹かれ、ついにベッドを共にしてしまったのだ。どうすればいいの?かりそめの夫を愛してしまうなんて…。
ハンサムなライアンと外国のビーチで過ごした夢のような1週間のあと、マリアンナは赤ちゃんができたことに気づいた。だが、再会した彼は高級スーツに身を包み、別人のように冷たかった。動揺と緊張のあまり、妊娠したと告げるのがやっとのマリアンナに、薄情な富豪はこう言い放ったのだ。「ぼくは欲しくなかった」もうここにはいられない。彼女は逃げるように家へ帰った。ところが翌日、ライアンはなぜかマリアンナを捜して会いに来たうえ、体調を気づかい、子どもをいっしょに育てたいと切り出した。胸をときめかせるマリアンナだったが、続く言葉が彼女の心をえぐった。「だが、きみと結婚はできない」
アンナはリゾートを営む母からの電話でスペインの島にやってきた。1カ月後に盛大な結婚式が行われるから準備を手伝ってほしいというのだ。翌朝、不意に出会ったのはクルーザーを停泊させて島に上陸している人物。その黒髪の精悍な男性は結婚式を挙げる花嫁の兄レオだと名乗り、妹に代わって下見に来たと尊大に告げた。レオがスペイン貴族の末裔の富豪だと知るやいなや、アンナは彼との間に一線を引こうと心に誓った。18歳のころ、同じように魅力的な貴族の男性に惹かれ、ごみのように捨てられたあげく流産した苦い思い出があるから。それなのに彼の真の姿に気づいた夜、体を重ねてしまい…。
幼くして母に捨てられ、父と世界各地を転々としてきたジョージー。今は離れて暮らす父が、ギリシアで美しい島を見つけ、農家を改装してゲストハウスを営むことにしたという。だが喜びも束の間、不幸にも父は突然の病で帰らぬ人となってしまった。天涯孤独のジョージーは亡き父の夢を叶えるため島に渡ったが、すぐに底をついた資金を工面すべく、働きに出ざるをえなくなる。リゾートホテルの重役秘書の仕事にありついたはよかったが、上司となるルーカスは、弟が勝手に決めたことだと解雇を宣告した。ジョージーがなおも懇願すると、彼は意味ありげに言い放った。「きみを雇うわけにはいかない。社内恋愛を禁止する社則を設けたんだ」
キャリーは同僚医師のコナーと、幸せな結婚生活を送ってきた。けれども長らく子宝に恵まれず、ようやく授かったと思ったら、生まれる前に天国へ旅立ってしまい、深い喪失感に打ちひしがれた。なんとか仕事に復帰し、立ち直ったかに見えたキャリーだったが、ある日突然、彼女は短い置き手紙を残し、愛の巣を飛び出した。“ごめんなさい。離婚手続きを進めてください。どうかお幸せに”涙でにじんだメッセージを読み、夫のコナーはキャリーを捜すが、ゆくえ知れずのまま、彼女が住み慣れた家に戻ってくることはなかった。それもそのはず、キャリーは、コナーがもう別の女性を求めていると、人づてに聞いて絶望の淵に落とされてしまったのだから…。
リリーは学生のころ、不妊クリニックへの卵子提供の報酬により、高額な学費ローンを返済することができた。無事に卒業を果たし、夢だった看護師となった彼女のもとに、ある問題を抱えた医師カーターが現れる。「君の卵子のことで話がある」聞けば、彼の精子と彼女の卵子を使った受精卵が取り違えられ、現在妊娠中の女性と話し合いをすることにしたらしい。彼は自分の遺伝子を受け継ぐ子供をぜひ手に入れたいと、今は別れた元妻に代わり、リリーに口添えしてほしいというのだ。出会った瞬間からカーターの虜になっていた彼女はみずからを戒めた。彼はわたしを都合よく利用したいだけ。恋心なんて抱いてはだめよ。
父が莫大な負債を残して急逝したため、エマは夢をあきらめ、メイドとして働きながらこつこつ返済している。ロンドンの高級住宅街にある屋敷でのパーティに派遣された夜、ずっと音信不通だった最愛の男性の姿を目にし、彼女は息をのんだーああ、あれはレッドミンスター伯爵ジャック・ウエストウッド!6年前に渡米し、今や世界的企業の社長となった彼が、なぜここに?激しく動揺したエマは派手な失態を演じてしまい、烈火のごとく怒った屋敷の主人に乱暴されそうになる。すると、突然ジャックが現れ、威嚇するように言い放った。「僕の妻に、手を出さないでくれないか」
ヴェネツィアに降り立って双子の妹の婚約者マルチェロを見たとたん、古くさい中年男性と聞いていたのとはまるで違う精悍で魅惑的な大富豪の姿に、ジュリアは色を失った。旅行中に彼と出会ってすぐ衝動的に婚約した妹は、帰国後に交通違反がもとで出国禁止になったため、妹になりかわって彼と母親に挨拶しに行くようジュリアに強いたのだ。こんなにすてきな人に対して、偽りの婚約者を演じろだなんて…。無事に役目を終えられますようにというジュリアの願いも空しく、ふたりきりになるやいなやマルチェロの黒い瞳に射すくめられ、激しく唇を奪われて、彼女の心は千々に乱れた。
7年前、キャットは赤ん坊を早産のすえに2日で亡くし、婚約者とも破局して、悲しみをかき消すように仕事一筋に生きてきた。ある日、出張先のバルセロナで同じ医師のドミニクと出会い、美しい彼に惹かれるまま情熱的な一夜を過ごす。一夜限りとわかっているけれど、もっと一緒にいたい…。けれど、何か秘密を抱えているようすの彼を信じきれず、けっきょくは後味の悪い別れを迎えたのだった。やがて思いがけぬ妊娠が発覚し、脳裏に7年前の恐怖がよみがえったが、キャットはドミニクには知らせず、一人で産む決心をする。だが産休中の代診医として現れたのは、ほかでもないドミニクだった!
コンスタンティン…?!父の葬儀に現れたかつての恋人を見て、シエナは呆然とした。漆黒の髪。たくましい肩。男らしい香りーこれは幻ではない。懐かしさがこみあげた次の瞬間、苦い記憶がシエナを現実に引き戻した。2年前彼女は、アトレウス・グループCEOのコンスタンティンに突然婚約破棄され、絶望のどん底に落とされたのだ。今になって、私になんの用があるというの?いぶかる彼女にコンスタンティンは告げた。亡き父が彼に莫大な借金を負っていたと。いったいどうすればいいの?借金を返す手立てなどあるはずもない。「君が借金を返せなければ会社をもらう」彼は氷のように冷たいまなざしで、シエナを見据え…?!人気ベテラン作家の新5部作、傲慢な大富豪たちの愛憎劇。