著者 : 結城信孝
明治初期、商売をたたんで一家で移り住んだ“しもた屋”の離れに、一人の泊り客ができた。離れには、主人が没落士族らしき男から買い受けた木彫りの猿の仮面が掛けられていたが、夜も深まったころ、どこからかうなり声が聞こえてきて…(「猿の眼」より)。怪談の名手・岡本綺堂の短篇十三本を選りすぐった“おそろし噺”傑作集。江戸から明治、大正時代までを舞台にした怪しくて不可思議な噺が、百物語形式で語られていく。ほかに、雪夜の横丁に座る老婆を目にした若侍たちの顛末を描く「妖婆」、新婚の夫がある温泉場から突然行方不明になる「鰻に呪われた男」など。
終戦間もない混乱の東京。十六歳で雀ゴロとして生きる“私”は、一つ年上のボッチと出会う。一匹狼ながら人恋しい妙な感情に見舞われた“私”は、ボッチを相棒にするべく麻雀の“通し”を仕込むが、うまくいかない。やがて、ひとり地方へ流れていくが…(『雀師流転』)。未完ながらも、戦後の匂いを濃く残す“もうひとつの『麻雀放浪記』”。長編小説に加え、著者が出会ったギャンブルの“職人”たちや、勝負の思い出を綴った文庫未収録エッセイ『麻雀師渡世』から精選した二十三編も併載。
雀ゴロの英さんは、一本気なイカサマ師。だけど最近はどこの麻雀クラブも油断しなくなって、商売あがったり。そこへ謎の美女が現れて「麻雀を教えて」とせがむ。下心をこらえて彼女と組んだ英さんは、大勝負に臨むが…。表題作「天和をつくれ」ほか、文庫初収録の短篇計八作。いずれも、ギャンブルが題材ながら、描かれているのは、勝負に生きる“人間”たちの哀楽にみちた人間模様。昭和の匂いを満喫できる一冊。
ガラスの球に閉じ込められた一匹の観賞魚。借りたままになっていた本の持ち主が殺されて。念願叶って開いた喫茶店に来る奇妙な常連客たち。引っ越した家に現われる女の幽霊はやがて…。亡き子の成長に合わせ子供部屋を作り続ける母ー不可思議、神秘、謎、秘密。心に潜むミステリアス・ワールドをあなたに。
精魂こめて執筆し、受賞まちがいなしと自負した推理小説新人賞応募作が盗まれた。-その“原作者”と“盗作者”の、緊迫の駆け引き。巧妙極まりない仕掛けとリフレインする謎が解き明かされたときの衝撃の真相。鬼才島田荘司氏が「驚嘆すべき傑作」と賞替する、本格推理の新鋭による力作長編推理。