著者 : 花田清輝
◎小説なのかエッセイなのか? 虚実のあわいを縫う迷宮 澁澤龍彦[1928-87]富士川義之編 虚空に飛ぶ能力を持った蹴鞠の名人の物語「空飛ぶ大納言」。魔道によって中国の皇帝が画の中に生きた自分の姿を見る「桃鳩図について」。ほか、「鳥と少女」「犬狼都市」「エピクロスの肋骨」「ダイダロス」「都心ノ病院ニテ幻覚ヲ見タルコト」「鏡と影について」「女体消滅」「画美人」「護法」全11編。 吉田健一[1912-77]富士川義之編 奇想天外な食物幻想譚「饗宴」。飲み屋で偶然知り合った大男が突然大亀に変身する「海坊主」。ほか、「空蝉」「道端」「或る田舎町の魅力」「逃げる話」「沼」「邯鄲」「ホレス・ワルポオル」「酒の精」等全11編。 花田清輝[1909-74]池内紀編 中世室町時代を舞台にして、考証と空想のはざまを自在に往還する「伊勢氏家訓」「開かずの箱」。数に取り憑かれた青年の話「七」。ほか、「林檎に関する一考察」「歌」「海について」「ものぐさ太郎」「石山怪談」「鏡の国の風景」「『ドン・キホーテ』註釈」「テレザ・パンザの手紙」等全16編。 幸田露伴[1867-1947]種村季弘編 夢の中の生と生の中の夢が迷路の中で呼びかわす「土偶木偶」。魔界ファンタジー「新浦島」。ほか、「望樹記」「雪たたき」「ウッチャリ拾ひ」。「神仙道の一先人」「芳野山の仙女」等のオカルト随筆3編も収録。 澁澤龍彦 富士川義之編 都心ノ病院ニテ幻覚ヲ見タルコト 護 法 ダイダロス 画美人 桃鳩図について 鏡と影について 女体消滅 空飛ぶ大納言 鳥と少女 犬狼都市 エピクロスの肋骨 解説 リヴレスクな文学者 吉田健一 富士川義之編 海坊主 饗 宴 或る田舎町の魅力 沼 逃げる話 邯 鄲 空 蝉 酒の精 道 端 ホレス・ワルポオル 時 間 より第1章 解説 酒には精神がある 花田清輝 池内紀編 歌 球面三角 『ドン・キホーテ』註釈 楕円幻想 テレザ・パンザの手紙 林檎に関する一考察 鏡の国の風景 海について 七 ものみな歌でおわる 第一幕第一景 ものぐさ太郎 御伽草子 開かずの箱 伊勢氏家訓 石山怪談 舞の本 解説 テレザ・パンザの手紙 第二信 幸田露伴 種村季弘編 雪たたき 望樹記 ウッチャリ拾ひ 土偶木偶 新浦島 芳野山の仙女 神仙道の一先人 楊貴妃と香 解説 無鉄砲な隠遁 年 譜
東洲斎写楽の役者絵についての精妙な分析にはじまり、“芸”という虚と実の“皮膜”の“遊び”から“役者”という虚にして虚ならず実にして実ならざる追求者に話を展開し、沢村淀五郎の芸談だとする『四徳斎雑記』を補助線として、独自な精神を奔放に飛行させる花田清輝の世界。転形期をしたたかに生きる不撓不屈の諧謔の精神。常に精神の前衛でありつづけた著者の代表的作品。
三種の神器の一つの“玉”を巡り、吉野川源流の山奥での武家、公家、入道、神官入り乱れての争奪の顛末。南北朝の対立が生んだ吉野・川上村の伝説が、博渉、強靭な思考の虚々実々の息吹で鮮烈に蘇る。転換期の奔流するエネルギーの“魔”を凝視しつづける常に尖鋭なアヴァンギャルド・花田清輝が、“日本のルネッサンス草創期”の“虚実”を「『吉野葛』注」「画人伝」「力婦伝」等の5篇で構築する連作小説。