著者 : 芹澤恵
リリアン28歳、人間嫌い。自己肯定感はかなり低め、将来への希望もない。 1995年、春の終わりに、そんなリリアンのもとに友人のマディソンから手紙が届く。おもしろい仕事があるので、彼女の暮らすお屋敷まで来てほしいという。それで、頼まれたのは10歳の双子のお世話係。なりゆきに任せて引き受けたけれどーー子供たちは興奮すると〈発火〉する特異体質だった!? 全米ベストセラー作家ケヴィン・ウィルソンが涙と笑いで〈リアル〉に描く、ほろ苦い愛情と友情の物語。 ニューヨーク・タイムズ紙、ワシントン・ポスト紙、USAトゥデイ紙、タイム誌、ピープル誌ほか、全米主要メディアが年間ベストブックに選出! 【著者略歴】 ケヴィン・ウィルソン テネシー州スワニー生まれ。フロリダ大学美術学修士課程修了。デビュー作の第一短編集『Tunneling to the Center of the Earth』(2009)でシャーリイ・ジャクスン賞と全米図書館協会アレックス賞を受賞。2011年に発表した『The Family Fang』はジェイソン・ベイトマン監督、ニコール・キッドマン主演で映画化された。その他の作品に『Perfect Little World』(2017)、短編集『Baby, You're Gonna Be Mine』(2018)がある。妻で詩人のリー・アン・クーチと二人の息子と共にスワニー在住。サウス大学で英文学の准教授を務めている。 【訳者略歴】 芹澤恵 東京都生まれ。成蹊大学文学部卒業。訳書にR・D・ウィングフィールド〈フロスト警部〉シリーズ(創元推理文庫)、O・ヘンリー『1ドルの価値/賢者の贈り物 他21編』(光文社古典新訳文庫)、メアリー・シェリー『フランケンシュタイン』(新潮文庫)、ケヴィン・ウィルソン『地球の中心までトンネルを掘る』(東京創元社)、エレナ・ファヴィッリ他『世界を変えた100人の女の子の物語』(共訳、河出書房新社)など多数。
妻の遺したAIをめぐる切なくて温かな物語 優秀な研究者の妻レイチェルを、ある日突然失った夫のエイダンと娘のクロエ。悲しみから立ち直れずにいる彼らの元にやって来たのは、生前、レイチェルが持てる技術の全てを投じて開発した、自分そっくりのアンドロイド「アイ・レイチェル」だった。「ロボット妻」「ロボット母」という存在に混乱し、反発するエイダンとクロエ。やがてアイ・レイチェルに託した妻の真意を知ることで徐々にアイ・レイチェルを受け入れ、彼女もまた、彼らとの交流を通して人間らしい感情を学んでいく。そしてエイダンとクロエも、失意の彼らにそっと寄り添うアイ・レイチェルの存在に癒やされていく……。 愛する家族との別れ、受容と再生、そして成長。読後、じんわりと温かな涙を誘う、切なくて愛おしいAIの物語。
スイスの町で、ドイツ語教室に通いはじめたアメリカ人のアナ。教室や町に満ちるよくわからない言葉と、彼女に誘いをかけてくるわかりやすい男たち。わからない言葉を盾にして、かたくなに秘密と憂鬱を抱えこむアナは、嘘をついて男たちと情事を重ねるが…。詩人作家が独特の文章で孤独をつづった文芸長篇。
今宵も人手不足のデントン署において、運悪く署に居合わせたフロスト警部は、強姦・脅迫・失踪と、次々起こる厄介な事件をまとめて担当させられる。警部がそれらの捜査に追われている裏で、マレット署長は新たに着任したスキナー主任警部と組み、フロストをよその署に異動させようと企んでいた……。史上最大のピンチに陥った警部の苦闘を描く、超人気警察小説シリーズ最終作。
マレット署長とスキナー主任警部の差し金により、デントン署を去る日が刻一刻と迫るなか、フロスト警部が抱える未解決事件の数は、一向に減る気配を見せない。疲れた身体に鞭打ち、わずかな部下を率いて捜査の指揮を執る警部に、異動を回避する妙案が浮かぶはずもない。法規を無視し、犯人との大立ち回りまで演じる、いつも以上に破れかぶれなフロストが最後につける始末とは? 解説=小山正
V・ウルフも嫉妬した短篇の名手の傑作13篇 初めて夫に欲望を感じた直後に、妻が夫の本心を知る「幸福」。不慣れな外国で家庭教師が出会った親切な老人との楽しい午後はやがて……「小さな家庭教師」。不穏なお迎えが来て老女を怯えさせる「まちがえられた家」。裕福な女が、施しを与えた貧しい女に対し、夫の何気ない一言から嫉妬の炎を燃やす「一杯のお茶」。夫の友人の熱情を弄ぶ人妻を描く「燃え立つ炎」。小さな幸せを、思わぬ言葉で粉々に打ち砕かれる独身女性「ミス・ブリル」。大人社会そっくりの歪んだ人間関係にからめとられた少女たちの「人形の家」……。女たちはいつだって、喜びと哀しみ、期待と落胆、安堵と不安の間を揺れている。 「外科医のメスの繊細さ」で「些細な出来事によって人生の重大事に迫る」と評される短篇の名手、キャサリン・マンスフィールド。交流のあったヴァージニア・ウルフも「私のライバル」と最大級の賛辞を贈っている。 本書は日常に潜む皮肉を鋭く抉り出す鮮烈な13篇を厳選した日本オリジナル短篇集。2012年にロンドン大学で新たに発見され、自伝的要素が濃いとされる未発表原稿「ささやかな過去」も収録。
若き科学者ヴィクター・フランケンシュタインは、生命の起源に迫る研究に打ち込んでいた。あるとき、ついに彼は生命の創造という神をも恐れぬ行いに手を染める。だが、創り上げた“怪物”はあまりに恐ろしい容貌をしていた。故郷へ逃亡した彼は、醜さゆえの孤独にあえぎ、彼を憎んだ“怪物”に、追い詰められることなろうとは知る由もなかった。天才女性作家が遺した伝説の名著。