著者 : 荻堂顕
土地開発と不動産事業で成り上がった昭和の旧華族、烏丸家。その嫡男として生まれた治道は、多数のビルを建て、東京の景観を変えていく家業に興味が持てず、祖父の誠一郎が所有する宝刀、一族の守り神でもある粟田口久国の「無銘」の美しさに幼いころから魅せられていた。家に伝わる宝を守り、文化に関わる仕事をしたいと志す治道だったが、祖父の死後、事業を推し進める父・道隆により、「無銘」が渋谷を根城にする愚連隊の手に渡ってしまう。治道は刀を取り戻すため、ある無謀な計画を実行に移すのだが……。やがて、オリンピック、高度経済成長と時代が進み、東京の景色が変貌するなか、その裏側で「無銘」にまつわる事件が巻き起こる。刀に隠された一族の秘密と愛憎を描く美と血のノワール。
作家 貴志祐介氏、絶賛。 『ループ・オブ・ザ・コード」の著者が紡ぐ、未体験ゾーン突入の歴史ハードボイルド超大作。 「ほんの一瞬だけなら何でも手に入れられる、俺の唯一の特技だ」 第二次世界大戦終結後、米軍占領下の琉球。その最西端の与那国島では、一本の煙草から最新鋭の義肢まで、ありとあらゆるものが売買される密貿易が行なわれていた!腕利きのサイボーグ密貿易人・武庭純は、ある日顔馴染みの警官からとんでもない話を耳にする。終戦とともに殺人鬼と化した元憲兵が島に上陸したというのだ。元憲兵探しに乗り出した武だったが、時を同じくして、謎のアメリカ人女性から 「姿も形も知れない “含光” なる代物を手に入れろ」という奇妙な依頼が舞い込んでくる。相棒の島人とともに奔走する武は、やがて、世界を巻き込む壮絶な陰謀に巻き込まれていく……。 琉球と台湾の史実をもとに描き出す、 サイバーパンク巨編! 一攫千金の夢が渦巻く欲望の“街”その男は、ただ魂を求めたーー
疫病禍を経験した未来。WEO(世界生存機関)に所属するアルフォンソは、20年前に歴史の一切が“抹消”された、かつての独裁国家“イグノラビムス”へと派遣される。いまや多数の欧米企業が参入し、「再生のテーマパーク」とも揶揄される彼の国で、児童200名以上が、原因不明の発作に見舞われる奇病を発症、その現地調査を命じられたのだった。しかし、時を同じくして、非常事態が発生。「悲劇」の再来を恐れたWEO事務局長から、密命を言い渡されることになり…。国家機関単位の任務を、たった数人で遂行することになったアルフォンソたちが辿り着く、衝撃の真実とは、一体。生命倫理の根幹と善悪の境界を問う、近未来諜報小説の新たな地平。
顧客の要望に応じて偽りの身分を与える「アリバイ会社」を生業とするサチのもとに、ある日、二人の少女が訪ねてきた。数日後、片方の少女がビルの屋上から身を投げ、サチは残されたデリヘル嬢・アンナを「門」の向こう側へと“逃がす”よう迫られる。サチはこの世界に居場所を失った者を異界へと導く“雨乳母”だったのだー。なぜ、少女は死んだのか。死の道標を追う過程で浮上した“集団リンチ殺人事件”と少女たちの恩讐渦巻く関係とは。そして、サチの隠された過去とは一体…。壮絶なる騙し合いの果てに、絶後の展開が訪れる。新星による衝撃のデビュー作。第7回新潮ミステリー大賞受賞。