著者 : 蓬田やすひろ
“汝は、天下にきこえた大名に仕えよ”との父の遺言を胸に、渡辺勘兵衛は槍術の腕を磨いた。織田信長・信忠父子の甲州攻略に、近江の小城主阿閉淡路守家来として加わり、信忠の危機を救う武功で、一躍その名をとどろかせた。だが、勘兵衛は、信忠から拝領した名刀をねだる吝くさい淡路守につくづく愛想が尽き果てる。俺が心から働ける主君はいないのか。戦国の世に「槍の勘兵衛」として知られ、剛胆颯爽と生き抜いてゆく男の変転の生涯を描いた長編力作。
ひくく声をかけて、いきなり女に飛びかかった小平次は、恐ろしい力で首をしめあげ、すばやく短刀で心の臓を一突きに刺し通した。その時、恐怖に引きつった青白い顔でじっとみつめる少女と顔を合わせてしまった。「見られた…。生かしてはおけない」男は江戸の暗黒街でならす名うての殺し屋で、今度の仕事は茶問屋の旦那の妾殺しだったのだ…。色と欲につかれた江戸の闇に生きる男女の哀しい運命のあやを描いた傑作集。
塚原卜伝の指南を受けた青年忍者丸子笹之助は、武田信玄に仕官した。信玄暗殺の密命を受けていた。だが信玄の器量と人格に心服した笹之助は、信玄のために身命を賭そうと心に誓う。
信玄暗殺に失敗した丸子笹之助は、忍者の掟に背き、信玄のために命をかけて働くことになったが・・。名将信玄の悲運と、笹之助の運命の絆を描いて感動を呼ぶ長編。
勤王佐幕の血なまぐさい抗争に明け暮れる維新前夜の京洛に、その治安維持を任務として組織された新選組。騒乱の世を、それぞれの夢と野心を抱いて白刃とともに生きた男たちを鮮烈に描く。司馬文学の代表作。
盗賊の小頭・弥平次は、記憶喪失の浪人・谷川弥太郎を刺客から救う。時は過ぎ、江戸で弥太郎と再会した弥平次は、彼の身を案じ、失った過去を探ろうとする。しかし、二人にはさらなる刺客の魔の手が……。