著者 : 蓬田やすひろ
十五歳の寒九郎が江戸へ逃れて三年。津軽藩士の父は切腹、母は後追いの寒九郎は、叔母が嫁いだ旗本武田作之介の後見で文武の修行に励んでいた。一月十六日の奉納仕合いを前に奇妙な噂が流れた。勝ち抜いた剣士に御上から恐るべき密命が下されるという。かつて寒九郎の祖父らへの密命と同様に…。その祖父は今、津軽藩からの刺客を逃れて魔界白神山地に隠れていると判明。
五年前に『守田屋』のおそめさんを巡って私の兄と諍い、誤って死なせて逃亡し、おそめさんの許嫁・清吉さんが戻ってくるのを、父が仇をとろうと狙っています。父を“人殺し”にしないように清吉さんを護ってくださいー。田宮流抜刀術の達人で三味線の名手・矢内栄次郎のもとを訪れた『江戸屋』の娘お糸が頼み込んだ。窮地の清吉を護りつつ、栄次郎は事件の謎解きに挑む。
田宮流抜刀術の達人で三味線の名手矢内栄次郎は手首を傷め、撥も刀も握れずにいた。折しも兄栄之進に再婚話が舞い込んだ。なんと三千石の大身旗本の娘だという。矢内家は二百石の御家人、もしや栄次郎の出生の秘密を知ってのことか。一方、五年前の“事件”を探り当てた者から、二人の商人に強請りの文が届き、尾行者も…。相談を持ちかけられた栄次郎は、はたして…。
津軽藩士の父は切腹、母は後追い。鹿取寒九郎は藩から追われ単身、江戸へ。叔母が嫁いだ旗本三百石・武田作之介の許で、少年寒九郎の孤独の闘いが始まった。まだ見ぬ祖父仙之助はなぜに谺一刀流を封印したのか?父母はなぜ自害したのか?その父から祖父への文はなんのためか?祖父はいまどこに?なぜ十五歳の寒九郎が謎の侍たちに何度も命を狙われるのか…?書き下ろし長編時代小説。
江戸有数の花街・柳橋の船宿「篠屋」に、成島柳北という、学者として将軍家に仕えて来た、俊才の誉れ高い幕臣が再来。柳北は幕府上層部の無能ぶりに苛立ち狂歌にしてからかい、奥儒者の職を解かれ閉門の身。学者であるも名うての遊び人柳北の耳に、若き日の情人・久米八が横濱で異人相手のラシャメンに身をおとすという噂が。で、篠屋の主に相談に…。(第五話「へちま」)
北町奉行所の元筆頭同心で今は“居眠り番”の蔵間源之助は、元老中で隠居の白河楽翁と鉄砲洲の鰻屋で食事をした直後、店の前で何者かに襲われ昏倒。その隙に楽翁は貴船党を名乗る一団に拉致され、身代金として松平家の家宝「鳳凰の香炉」を要求された。翌早朝、奥女中が貴船党の指定場所に香炉を運び、楽翁は…。家宝の香炉はいつの間にか贋物にすり替えられていた。
掏摸だった六松は、江戸で評判の目明し“稲荷の紋蔵”に見出され目明しの修業を始めた。孤児で荒んでいた六松だが、紋蔵のもとで徐々に真っ直ぐな心根を取り戻し、やがて手下として認められる。だが大伝馬町の長屋に家移りして早々、住人の一人が溺死。店子達の冷淡な態度を不審に思った六松は探索を始めるが、裏には思わぬ陰謀が…。十手持ちになった若者の奮闘と町の人々の哀歓を優しい筆致で描く著者の新たな代表作。
深川の長寿庵の主人で岡っ引を務めてきた長助が、お上から褒賞を受けた。町内あげてのお祭り騒ぎのなか、ひとり取り残された女房のおえいが思わぬ事件にかかわる表題作、香苗が大事な木箱を落としてしまっことに始まる騒動「千手観音の謎」ほか、珠玉の八篇が目白推し。カラー挿絵も美しい愛蔵ベスト版、堂々完結!
畝源三郎の嫡男・源太郎も、はや7歳。歯痛で妙にしおらしい花世を気遣って、御利益があるというお稲荷さんに連れていくが…。幼い二人が放火事件に巻き込まれる表題作、大安売りに目がない女中頭のお吉の買い物が思わぬ事件につながる「お吉の茶碗」他、珠玉の7篇を収録。カラー挿絵も美しい愛蔵ベスト版第3弾。
江戸の大川端にある小さな旅篭「かわせみ」を舞台に繰り広げられる、大人気“人情捕物帳”。1973年に連載が開始されて以来、現在まで続く、総累計1000万部を超える国民的ベストセラーである。全34巻から選りすぐった7篇を美しいカラー挿絵とともに収録したベスト版第1弾。シリーズを振り返った書き下ろしエッセイを収録。
美しい江戸の町でついに成就するるいと東吾の恋ーシリーズ最大の人気作「祝言」や、下手人が誰もいない!?痛快ミステリー「矢大臣殺し」、人さらい事件を解決した「花世の冒険」など、粒ぞろいの傑作が目白推し。捕物、人情、江戸の光景に心遊ばせる贅沢な一冊。全34巻から著者自らセレクトした愛蔵ベスト版第2弾!
大川端の船松町で辻斬りがあった。首を刎ねられ、血を撤き散らしながら舞うようにして殺されたという。その惨たらしい殺し方は手練の仕業に間違いない。しばらく前にも隣町で、同じように斬られた侍がいた。本湊町の料理屋・清洲屋の用心棒、流想十郎は、その剣法に興味を覚える。殺されたのは御徒目付で、ある不正を探っていた。想十郎は、下手人に間違えられたことがきっかけで、事件に関わることに…。
流想十郎が用心棒として住み込んでいる料理屋・清洲屋の前で、乱闘騒ぎがあった。男装の少女を連れた旅姿の武士が、4人の武士に囲まれたのだ。襲われたのは出羽・滝野藩士の田崎、少女はその姪の千沙だった。行きがかり上、田崎と千沙を助けた想十郎は、門閥派と改革派が鋭く対立する藩内事情を知ることとなる。田崎に請われ、改革派への助太刀を受けて立った想十郎に、新たな敵が立ちはだかる。孤高の剣士、大好評書き下ろし。
向島で三代続く料理屋・笹屋の一人娘、お京もこの正月で20歳になった。しっかり者の看板娘として店をきりもりし、今や親が手を出すすきもない。舞い込む縁談を断り、親の反対を押し切って選んだ相手はかつぎ豆腐売りの信吉だったが、あっさり断られてしまう…。しっかり者の女たち、それゆえに悲しくもおかしい。平岩作品の醍醐味、豊かな江戸人情を描いた珠玉と呼ぶにふさわしい10編を収録。文字が大きく読みやすい新装版。
江戸・本湊町の料亭に用心棒として住み込む流想十郎は、花見の帰り、品川宿近くで武士団に襲われた小藩の姫君一行を助ける。気が進ままない中、姫の護衛を引き受けた想十郎は、熾烈な抗争に巻き込まれる…。権力者・水野忠邦を父に持ちながら、その愛情を知らず、また剣術の師との密通の末に、ともに上意討ちで果てた母への情も捨てた孤高の剣士は、無敵の蝴蝶剣を誰がために振るうのか?書き下ろし時代小説、新シリーズ始動。
若き日、嫂と犯した密通の古傷が、名を成した今も、自分を苦しめる。驕慢な心はついに妻を験そうとするが…。表題作「密通」のほか、人生に絶望し、死のうと決めた夫婦と娘が出会い、希望を取り戻す「心中未遂」、婚礼を前に、揺れる女の想いを描いた「夕映え」、夫のためと騙され、他の男に身を任せたことが破滅につながる「菊散る」など、江戸人情を細やかに綴る全八編を収録。余韻溢れる珠玉短編集。文字が大きく読みやすい新装版。
天正三年(一五七五)初夏、三河の長篠城は、武田勝頼の軍勢一万七千に包囲され、落城寸前。城を守る奥平信昌の兵は五百あまり。窮状を伝えるため鳥居強右衛門は武田の包囲網を破り、織田・徳川の陣地にたどり着き、四万の大軍が救援に向かっていることを聞かされる。だが、その帰途、強右衛門は武田方に捕らわれ、援軍は来ないと告げるよう強いられるが…。表題作「炎の武士」ほか、男たちの劇的な生を描いた傑作三編を収録。
幕末動乱のとき、真剣なら無類の強さを発揮する天然理心流の道場主・近藤勇は、志を同じくする土方歳三、沖田総司らと江戸から京に上り新選組を結成、尊皇攘夷、倒幕を画策する長州や薩摩など西南雄藩の活動家と闘う。芹沢鴨一派との内部抗争を経て、京の池田屋に長州藩の過激派を襲い、天下にその名を轟かせるが…。幕府瓦解の前夜、一瞬の光芒を放った新選組。その局長、近藤勇の激闘の日々と隊士との交情を熱く描く傑作。