著者 : 藤村華奈美
純潔を捧げたイタリア富豪に、 愛なき結婚を強いられて……。 「君のおなかに僕の子がいる以上、結婚するしかない」 仕事の都合で妻を必要としているダンテの苦々しげな言葉に、 パイパーははるばるローマまでやってきたことを悔やんだ。 2カ月前、パーティ会場でウエイトレスをしていたパイパーは 彼の誘惑に抗う術もなく純潔を捧げ、小さな命を宿したのだった。 悪名高いプレイボーイ富豪のゴシップ報道を沈静化するため、 彼と熱烈に愛し合っている婚約者のふりをするなんて……。 とまどい、傷つきながらもパイパーは契約書にサインした。 わが子の人生に愛情深い父親を与えてやりたい一心で。 人気作家競作シリーズ〈四富豪の華麗なる醜聞〉の2話目にあたる本作では、ローマの華やかな社交界で熱愛中の婚約者を演じるはめになった二人の熱く切ない愛が描かれます。前作同様、どこまでもゴージャスでセクシーな大富豪ヒーローの魅力をご堪能ください!
タラが世界的に有名なホテル王マックスに見初められてから1年。彼女は最近、ふと不安な気持ちに襲われるようになった。多忙な彼と会える時間はわずか。しかもいつもベッドの中だけ。つまり、彼にとって私は都合のいい愛人なんじゃない?しかもタラはここ最近、吐き気と体調不良に悩まされてもいた。-じつは彼女は妊娠していたのだ。マックスに知られたら堕胎を迫られる…怯えたタラは家を出るが、彼は金の力で強引に捜しだすと、驚いたことに結婚を申し出た。なぜ今になって突然そんなことを言い出したの?結婚よりも本物の愛を欲していたタラは、彼にある提案をする。
ロウィーナは恋愛を避け、仕事ひとすじに生きてきた。そんな彼女が、予期せぬ妊娠をした。相手はクイン・タイラー。著名な形成外科医としてその名を世界に轟かせている彼は、ロウィーナの大学時代の友人だった。3カ月前、偶然再会するまでは。クインがあまりにもゴージャスな大人の男性に変貌していて、ふだんは男性を避けているのに、つい一夜の情熱に溺れてしまった。いかにもプレイボーイな彼にとっては何でもないことに違いない。とぼとぼとオフィスに向かうロウィーナは、はっと顔を上げた。クインが目の前に立ちはだかっている。どうして彼がここに?彼は怒りに燃えた目で、まっすぐ彼女を睨みつけていたー。
大切なものを失うのはこれで二度目だ。イザベルの心は折れかけていた。また彼に奪われるの?スペンサー・チャッツフィールド──ホテル王一族の息子で、女性の噂が絶えない彼に、イザベルは身も心も捧げた。だがすぐに弄ばれただけだと気づき、自ら別れを告げたのだ。彼の子を身ごもっていたというのに……。あれから10年。父のホテルを継承するというイザベルの夢を、スペンサーはやすやすと横取りしていった。しかも彼が新しいボス。その命令に背くことは許されない……。
音もなく、滑るようにセルゲイ・マリノフの豪華なリムジンは、白夜のサンクトペテルブルクを疾走している。クレメンタインは夢見心地だった。美しい街、たくましい男性。ついさっきまでは、絶望のどん底にいたのに。仕事で訪れた外国の地で暴漢に襲われ、ハンドバッグを奪われた。駆けつけて彼女を救ってくれたのが、セルゲイだった。17歳の頃からずっと働きづめで、愛も知らないクレメンタインは、この束の間のシンデレラ・ストーリーに浸ろうと思った。セルゲイのプライベードジェットにさらわれ、ニューヨークで愛人にされてしまうとは、まさか知る由もなく…。
メイシーは、多忙な親友夫妻の息子コスチャを親代わりに育ててきた。だが夫妻は突然の事故で亡くなり、遺児の後見人が引き取りに現れる。アレクセイ・ラナエヴスキーと名乗る男はハンサムだが横柄で、メイシーを一瞥すると“子守りも支度をするように”と告げた。慌てて荷造りをし、シャワーを浴びてバスルームを飛び出すと、いらいらと待ちくたびれ、急かしにきたアレクセイにぶつかった。彼の目が見開かれ、タオル1枚に包まれた胸の上でぴたりと止まる。メイシーの体はかっと熱くなり、肌に残る水滴が一瞬で蒸発した。2人の視線が絡み合い…メイシーは子どもの声ではっと我に返った。いけない。彼はコスチャの後見人、わたしはただの子守りなのに。