著者 : 藤真沙
冬のバラ(上)冬のバラ(上)
18世紀末の北部イングランド。エリエンヌは、父が連れてくる、財産以外には何の魅力もない求婚者たちにうんざりしていた。エリエンヌの心をとらえているのは、ただひとり-父を侮辱し、弟に傷を負わせた家族の敵、クリストファーだけであった。日ごとクリストファーに惹かれていき、結婚話に耳を貸さない娘に業を煮やした父は、ついに、エリエンヌを結婚を条件とした競売にかける。競売の日、エリエンヌをせり落としたのは、呪われた館の領主、仮面と黒ずくめの服で傷だらけの全身を隠したサクストン卿だった。
冬のバラ(下)冬のバラ(下)
サクストン卿夫人となったエリエンヌは、ついに不気味な夫に身をまかせ、狂おしいほどの歓びにひたる。そして、夫の背中にある傷跡をたどりながら、わたしはこの人の妻なのだ、と自分にいいきかせた。しかし、ある夜、闇に浮かぶ夫の瞳にクリストファーの影を見て、歓びのさなかに、かれの名を口にしてしまう。静かにベッドを去る夫に、深く自分を責めるエリエンヌ。あくる日、夫の不在中に、夜盗との格闘で深手を負ったクリストファーが館にかつぎこまれた。ベッドに横たわるかれの背中にエリエンヌが見たものは、夫と同じ大きな傷跡だった…。
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