著者 : 藤野恵美
国内トップの大学を卒業し一流企業に就職したものの退職、現在はフリーランスの翻訳者として慎ましく暮らす凛子。姪の莉緒は、読書と昆虫が大好きで論理的思考が得意だが、融通が利かずコミュニケーションに難がある、危うい小学生だ。莉緒の中学受験に伴走することになった凛子は、周囲の期待にうまく応えられなかった自分の半生を振り返るー。頭がいい女子だから、いくつもの幸せを受け取れなかった。そんな私が、彼女の背中を押していいのだろうか。
男子校出身で女子に不慣れな大学2年生の星野は、写真部の新入生勧誘で、カメラを首から下げた女子と出会い一瞬で心を掴まれた。その1年生・花宮まいは、ある理由で高校に行けなくなった過去がある。男性が苦手なものも、その「傷」のせいだ。少しずつ仲良くなってゆくふたりは、やがてお互いへの恋心を自覚しつきあいはじめる。それぞれはじめての「彼氏」「彼女」だ。ある日、星野はいい雰囲気のままつい花宮を押し倒してしまう。その瞬間、彼女の身体は固まってしまい…。好きだから、相手をちゃんと大切にして、触れ合いたい。不器用な二人のゆくえは…!?
両親の愛を享受できなかった記憶に抗い続けるカウンセラーの宮沢橙子は、テニスインストラクターの夫と小学一年生の息子と、一見平穏な生活を送っている。しかし、自分よりも収入の低い夫に遠慮し、息子には時に怒りをぶつけてしまう橙子。その姿は、嫌悪していた父親そのものー。やがて病を発症した父親は再婚したが、彼から解放される日は来るのか、それとも、永遠に見えない支配と戦わなければならないのか。親子の愛憎を抉る長編小説。
夏休みが明けると、神丘高校は文化祭の準備で浮き足立つ。潤のクラスはアイディアが出ず、盛り上がりに欠けていた。お化け屋敷をやることになり、スポーツ万能で人気者の潤が、クラスメイトを準備に巻きこんでいく一方、内気な図書委員のあやは、ノリについていけず疎外感を抱く。だが、正反対の2人にはある共通点があって…。文化祭までのカウントダウンを通じ、高校生の成長と友情を描く、キュートで爽やかな青春小説!
母子家庭で育った聖太郎と、大宮製菓の御曹司・光博は、共通の趣味であるお菓子作りを通して親友となる。ある日、聖太郎は光博から、幼馴染みが出場するというピアノコンクールに誘われ、凛々花を紹介される。凛々花のピアニストとしての才能と、奔放な性格に惹かれてゆく聖太郎。光博や凛々花との貧富の差も、なぜだか気になり始める。そして、些細な出来事をきっかけに、ふたりは疎遠となってしまう。月日は流れ、大人になったふたりは、それぞれの道を歩み出し、聖太郎はショコラティエとして類い稀なる才能を発揮していくが…。
メールにSNS、インターネット検索。どこにいても、すぐ人や情報とつながれる気軽さと便利さは、今や生活の一部となっている。思いがけず目にした戦地の動画に動揺する中学生、顔が見えないファンの反応に一喜一憂するネットアイドル、娘の成長を逐一ブログにつづる母親、シリコンバレーの大富豪…。“ネット”と“リアル”の中で、自分の居場所を探す人々の姿やつながりを温かいまなざしで描きだす連作短編集。
世界一華麗な怪盗「ルパン」。鮮やかに美術品を盗み出しながら、弱きものを守り、女性を愛する紳士ー。その優雅かつ誇り高き姿に憧れ、胸を躍らせた過去を持つ人気作家陣が集結し、当時のときめきを筆に込めて書き上げた、オマージュ小説アンソロジー!
凍える風が止むことのない冰心山。魔女が棲むと恐れられている山の頂には、伝説の名刀「月家刀」があるという。そこを目指す少年蓬己は、刀を手に入れて、両親の仇を討とうとしていた。しかし、あと少しのところで、謎の黒装束の男に奪われてしまう。窮地に陥った彼の前に永い眠りから目覚めた柳紫鳳が現れた。腐敗した王政と混迷する世情、彼女は再び騒乱の渦中に…。武侠小説。
仰の国では、王の徳が失われ、世情が乱れ始めていた。「王を殺す刀」を作ったという罪を着せられて両親を殺された柳紫鳳は、女であることを隠し、「絶命殺」と恐れられる暗殺者となり、旅を続けていた。ある日立ち寄った酒場で、月家刀を手に入れたという男たちから、塞北盗侠こと胡桃核が奪おうとするところに遭遇する。この月家刀こそ、紫鳳の父の作った刀だった。だが…。
京都の路地に佇む大正時代の町屋長屋。どこか謎めいた老婦人が営む「男子限定」の料理教室には、恋に奥手な建築家の卵に性別不詳の大学生、昔気質の職人など、事情を抱える生徒が集う。人々の繋がりとおいしい料理が心の空腹を温かく満たす連作短編集。特製レシピも収録!
「神高の文化祭では、誰が一番かっこいいかを決めるミスターコンテストが行われる」。先輩の命で部活のためにコンテストに参加することになった九條潤。いっぽう潤と同じクラスでお化け屋敷をやることになった図書委員・八王寺あやは、盛りあがりについていけずにいた。スポーツ万能の潤は、ちょっと苦手だ。どちらかというと自分は、さらさらのストレートヘアの美少女・あおいのほうが好きかも…。と思っていたら、あおいが美形の兄を紹介すると言い出した。そしていよいよ文化祭当日、思いがけない事件が勃発し!
人を好きにならずにすむ方法があるなら教えてほしい。なぜなら彼女は、親友の恋人だから。笹川勇太は恋する相手をめぐって、学内一の美少女・あおいに弱みを握られてしまった。そんな彼女も、恋となると思うようにはいかない。好きな人と会うため、勇太に恋人のふりをしデートしてほしいと頼んできた。振りまわされながらも、次第にあおいに心惹かれてゆく勇太。そして複雑な関係の二人に事件が。恋と友情を描く青春小説!
彼女いない歴=年齢、高校1年生の龍樹は、保健室で出会った女の子の「くちゅんっ」というくしゃみに恋をした。そんなに可愛いなんて、反則だろ。龍樹から告白された森せつなは、ちょっと不安になる。「本物のわたしを知ったら彼は幻滅するかも」。つきあい始めた二人、些細な行き違い。しかしのびのびと育った龍樹に触れ、頑ななせつなの心が次第にやわらいでゆくー。爽やかな初恋、駆け抜ける青春。永遠のラブストーリー。