著者 : 西木正明
アルゼンチンのブエノスアイレスで育ったエヴァ・ミツ・ロドリゲスは、ある事件を機に、自らの出生の秘密を知る。父は海軍大臣、母は日本人でラ・プラタ川に身を投げていた。やがて美しいタンゴダンサーに成長した彼女はベルリンの老舗「エル・スール」で踊り国内外の要人たちと一夜を共にしながらも、謎めいた日本人男性に心を奪われてく…。
「これこそが日本だ!」戦争で何もかも失った蒲生太郎。かつての戦友の誘いに応じて秋田にやってきたら、そこは息苦しい人生観がくるりと変わる、まさに別世界だった。温厚な金木医師、マタギ免許皆伝のイワオ、色っぽい敏子。そして悪戯ばかりの悪ガキども。艶やかなユーモアたっぷりに描く、ふるさと賛歌。
1940年、日米の緊張が高まる中、民間主導による異例の日米和平交渉が始まろうとしていた。だが、その背後ではスターリン、ヒトラーをも手玉にとったイギリスMI6の敏腕謀報部員が暗躍していた。なぜ、この交渉にイギリスが深く関与しているのか。アメリカに渡った文書謀報のスペシャリスト、天城康介と江崎泰平は、独自の謀報活動を始めるが…。日本を破滅へと追い込んだ謀略戦を克明に描破したノンフィクション・ノベル。
順調に進んでいた日米和平交渉は、アメリカ側の突然の態度硬化で暗礁に乗り上げる。天城と江崎は日米交渉の裏で糸をひくイギリスの思惑を探るうち、ソ連の「スニェーク」なる作戦の存在を知る。英、米、中、ソの陰謀が絡み合い、確実に追い込まれていく日本。行き詰まる謀報戦の果てに天城と江崎は、壮大な謀略を突き止めるが…。封印されていた真珠湾攻撃の新事実を明らかにした畢生の大作。
紙芝居の慰問で赴いた南方から、命からがら引き上げてきた蒲生太郎、帰ってみれば東京の生家は丸焼けで、家族も全滅。傷心の太郎は戦地で世話になった軍医・金木令吉を頼り、秋田の山奥、仙北郡神代村へやってきた。そこで出会った戦争未亡人の敏子と深い仲になり、村で暮らしてゆく決意をするー。
ベトナム戦争、学生運動、浅間山荘事件。本気で生きた時代が、確かにあったはずだ。-海辺の街から届いた手紙に、男は涙した。みんな、どこへ行ってしまったんだ。’70年代を熱く生きた著者が、魂の全てを注ぎこんだ渾身の小説集。
不世出の天才歌手として時代を駆け抜けた美空ひばり。その華やかな活躍の陰でひっそりと暮らす同名の元女優。歌手ひばりを支え続けた、裏社会の首領。それぞれの人生が織りなす「昭和」という時代への鎮魂歌。
「われわれは香港で裕仁を拉致し、獄中で呻吟している同志たちを奪還する。」朝鮮の武力独立を目指す金元鳳率いる義烈団。彼らは大正十年、外遊途上の香港にて裕仁皇太子を誘拐する計画を立てる。日本側警備陣との息詰まる攻防ー。成功すれば確実に以後の世界史が変わったであろう歴史の暗部を掘り起こした力作。
近衛文麿の嫡男にして、細川護煕の伯父ー日本最高の貴公子、近衛文隆は快男児ぶりを発揮。アメリカ留学で青春を満喫し、上海では国民党の女性スパイとの熱烈な恋と、独自の停戦交渉に奔走したが、やがて戦争という過酷な運命が、その命までも呑み込んでいく。柴田錬三郎賞を受賞したノンフィクション・ノベルの金字塔。
蒋介石との直接交渉は未遂に終わり、軍部に睨まれた文隆は兵役に取られ満州へ赴任、そして終戦と同時にソ連軍によってシベリアに抑留された。安否を気遣う家族の許に届けられた手紙には「夢顔さんによろしく」という謎の言葉が添えられていた。果たして「夢顔さん」とは誰なのか、そして文隆の運命は。
明治の文豪・二葉亭四迷は、日本陸軍の指令を受けたスパイだったのか!?ウラジオストック、ハルビン、北京…を舞台に彼の足跡をたどり、隠された真実を明かしてゆく。日露戦争前後に繰り広げられた諜報戦や遠くポーランドの独立運動との関わりまでをも描いた、史実に基づく壮大な歴史ミステリーの傑作長編。
本名・北野弓子、芸名は長山レナ・風見圭子・簗瀬ルミと変わって十年ぶりに会った女は昔とちっとも変わらぬ美貌を誇っていた。かつてひょんなことから同棲した女が急に売れ出したとき、二人の仲は破局に向かった。再会した男と女の胸中に流れる甘く苦いノスタルジー。虚構の世界に生きる男女を描く連作集。
大統領を暗殺せよ。日米開戦前夜、日独の秘密作戦が始まった。謀略の真相を知った特殊工作員と上海社交界の舞姫・マヌエラの数奇な運命を描く迫真のノンフィクション・ノベル。