著者 : 赤坂桃子
時はワイマール共和国末期、空前の大量失業時代。 彼、ピネベルクは北ドイツの町で簿記係として働くホワイトカラーの23歳。彼女、「子羊ちゃん」ことエマは22歳。バルト海に面した町の労働者階級の家の娘。どこにでもいる、互いに夢中の若い二人。 予期せぬ彼女の妊娠で、なりゆきとはいえ、希望にみちて結婚し、新生活に入った二人だが、ピネベルクは理不尽な解雇にあい、夫婦は就職のつてをたどってナチス台頭前夜の首都ベルリンへーー。 さまざまに渦巻く駆け引き、幾多の障害、困難が次々に二人の前に立ちはだかる。 〈きっとうまくいくから。わたしたちはきっとうまくいくって、わたしはいつも信じてる。わたしたち、勤勉で、節約家でしょ。まっとうな人間で、おちびちゃんが生まれてくるのを望んで、喜んでいるーーそんなわたしたちが、うまくやっていけないはずないじゃない? そうじゃなきゃ、おかしいわよ!〉 ヒトラーの政権掌握前夜、明日をも知れぬ、数百万の名もなき人々=しがない民草を次々にのみこんでゆく貧困と孤独、絶望がピネベルクに襲いかかる。打ち砕かれ、転げ落ちようとする彼の前に灯された小さな、暖かい光とは……? 没後に出版され、近年にリバイバルヒットとなった『ベルリンに一人死す』の作者ハンス・ファラダの名を一気に世に知らしめた出世作にして、超ロングセラー、ついに公刊。
顔面を吹き飛ばされた欧州議会議員の死体が発見された。ユーロポールの主任警部ヴェスターホイゼンは、アナリストのアヴァと協力して捜査に乗りだす。大小さまざまなドローンによってすべてがデータ化された監視社会。アメリカは没落し、ブラジル、アラブ、EUなどが太陽光や波動エネルギーをめぐって覇権を争う。シミュレーション空間「ミラースペース」を駆使して捜査は進むが、新EU憲法の採択に向けて、そこには巨大な謎が隠されていた。ユーロポール長官の老獪なフォーゲル、自由党の女性党首ヤナ・スヴェンソン、情報多国籍企業タルコンの総帥ジョン・タラン、政治スキャンダル専門の謎のジャーナリスト・ジョニー・ランダム、影の警察RR…。
冬の寒空の下、北ドイツの農場主レスマンは、薄い服を身にまとって逃げてきた若い女を匿い、追っ手の男たちを銃で追い払う。一方、チェルノブイリ原発の立入禁止区域“ゾーン”で暮らす女性ヴァレンティナは、行方不明の娘カテリーナのために自らの思い出をノートに綴りはじめる。そして、ウクライナ警察の警部レオニードは、姿を消した若い女たちを追ってはるばるドイツに旅立つ。1930年代の大祖国戦争から、社会主義大革命、第二次大戦中の忌まわしい出来事、チェルノブイリの輝かしい日々…。戦争と原発の暗い記憶を抱えて生きる人々を描く文芸ミステリ。
大農場の陽気な赤毛の娘アルヴィーネ、その思慮深き兄ヤーコプ、がっしりした実業家タイプのヴィルヘルム、大きな水色の目をしたきまじめなハンナ、文学を愛するレオナルト、活動的で美しく聡明なテレーゼ…。1939年夏、共に過ごした幸福な時間は終わり、戦争が始まろうとしていた。不可解な殺人事件を追うひとりの巡査、50年の時をこえてよみがえる戦時下の出来事。ドイツ・ミステリ大賞第一位。気鋭の女性作家による静かな傑作。
“ソル”はケロスカーの計算者ドブラクの力を借りて、ふたたび地球を探す旅に出た。その途中で、未知の宇宙船の大編隊に包囲される。細長く優美な外観を持つ異船をあやつっていたのは、未知銀河の惑星クマントに住む種族、トバールグだった。かれらの意図もわからないまま、ローダンたちはクマントへの着陸を余儀なくされてしまう。タッチャー・ア・ハイヌはダライモク・ロルヴィクとともに、惑星の偵察に向かったが…。
アラスカ・シェーデレーアは時間の井戸を通過して、地球にもどってきた。しかし、惑星デログヴァニエンで見たおぞましい幻影のとおり、到着した町には人っ子ひとり見あたらない。テラになにが起き、人類はいったいどこへ行ったのか?マスクの男は真相を探るべく探索を開始する。そのころ、テルムの女帝の命令でさまざまな星系を調査している“研究者”ドウク・ラングルは、虚無から忽然と星系が出現するのを目撃した。