著者 : 連城三紀彦
15年前、わずか一年で結婚生活に失敗して以来、ずっと独り身を続けてきた47歳の女性弁護士撩子。大学時代の友人に連れられていったホスト・クラブの化粧室で、撩子は、突然、唇を奪われた。相手は爽やかな笑顔の青年宮島ヒデジ。彼女は、ヒデの境遇を聞くうちに麻疹にかかったように、彼に一目惚れをしていた…。表題作を初め、大人の愛のかたちを描く5編を収める短編集。
40余年の時の流れに塗り込められた驚異の秘密の謎解きに、一人の“日本人”が巻き込まれた。-リオデジャネイロ、ニューヨーク、東京、パリ、そしてベルリンと、世界の大都市を結んで展開する国際的謀略事件が、一転また一転、意外極まる結末へ。壮大かつ緻密な仕掛けの、長編ミステリー・ロマン。
今日、私は死ぬ。私を殺したいと思っている人間が七人いて、その中の誰かに殺されることになるのだ…。その美しさと細すぎる躰を武器に、ファッションモデルとして世界的に成功した〈私〉こと美織レイ子が、ある日、マンションの一室で死体となって発見された。それは、次々と起こる殺人・変死事件の前奏曲に過ぎなかった。ミステリーの新境地を拓いた長編小説。
酒場のカウンターで、年下の男から突然見せられた妻にあてた「ラヴレター」-。結婚十年目をむかえた夫婦の家庭に傍若無人に割り込んできた若者の、ひたむきだが不可解な言動の秘密を描いた表題作の「もうひとつの恋文」をはじめ、すぐには言葉にならない、様々な想いを抱きながら、都会の片隅で生きていく若い男女が演じる〈愛のドラマ〉五編。直木賞受賞作「恋文」の姉妹編。
その日まで恋はれてあるを知らざりし死のきはにのみ抱きける人ー。幾たびも恋のほむらに身を焦がし、本能のままに悔いなき女の倖せを追い求めた歌人・麻緒の、哀しく、美しく、奔放な生涯。大正期の名女流歌人・原阿佐緒をモデルに、“愛の作家”が華麗な筆致でこまやかに描く、長編恋愛小説の名品。
妙武岳山中で起こった若い男女の哀切の情死事件には、親子2代にわたる驚くべき秘密が宿されていた(表題作)。ほかに、著者会心の、花に托した愛のミステリー2編(「花緋文字」「菊の塵」)と、窓際人間たちが巻き起こす珍無類のユーモア・ミステリー3話(「陽だまり課事件簿」)を収録する魅力の連城推理世界。
髪の艶と柔らかさが自慢の津加子。6歳年上の夫は4度目の浮気が進行中だ。彼女は同窓会で再会した辻沢と、月に2、3度は逢いながら、体の関係もなく、ただ別れぎわ、辻沢が彼女の髪に触れるだけという関係を続けてきた。辻沢と旅にでた鄙びた温泉宿で夜中に二つに割れた櫛。この櫛に津加子は2人の関係の終わりを痛いほど感じとっていた…。14編収録のオリジナル短編集。
「わたし、中学生かな、高校生かな」と少女は年齢も曖昧に答えた。噂に聞いた少女売春だ。彼は金がないのに欲望が動く。行為のあと、少女の隙に2万円を掠め取った。その札番号が郵便局強盗の奪った数字に一致。厳しい嫌疑を解こうと彼は少女を探し出すが、その口からは意外にも!「少女」を含め、逆転の妙に充ちた、魅惑の5編。
歳月は、人を恋う心の炎を消してしまうのか、あるいは、さらに激しく燃えたたせるものなのか。17年前、相思相愛だった男と女が、いま再会して露わになる数奇な離別の真相とは(表題作)。愛が憎しみに、悦びが哀しみに、一瞬にして反転しうる心の襞をミステリアスに描く、会心の恋愛推理小説5編を収録。