著者 : 逸木裕
高校時代に探偵の真似事をして以来、森田みどりは人の“本性”を暴くことに執着して生きてきた。気づけば二児の母となり、探偵社では部下を育てる立場に。時計職人の父を亡くした少年(「時の子」)、千里眼を持つという少年(「縞馬のコード」)、父を殺す計画をノートに綴る少年(「陸橋の向こう側」)。“子どもたち”をめぐる謎にのめり込むうちに彼女は、真実に囚われて人を傷つけてきた自らの探偵人生と向き合っていく。謎解きが生んだ犠牲に光は差すのかー。痛切で美しい全5編。
チェリスト黛由佳が放火事件に巻き込まれて死んだ。かつて音大時代に由佳の自由奔放な演奏に魅了されていたチェリスト坂下英紀は、火神の異名をもつ孤高のチェリスト鵜崎顕に傾倒し、「鵜崎四重奏団」で活動していた彼女の突然の死にショックを受ける。演奏家として自分の才能に自信をなくしていた英紀は、同じように苦しんでいた由佳の死に不審を感じ、「鵜崎四重奏団」のオーディションを受けて鵜崎に近づき、由佳の死の真相を知ろうとする。
音大受験に失敗した名波陽菜は自信を取り戻すため、姉の住む自然豊かな奥瀬見にきていた。フルートの練習中に出会ったのは、オルガン制作者の芦原幹・朋子親子。同い年の朋子と“パイプオルガン”の音づくりを手伝うことに。だが、次第にオルガンに惹かれた陽菜はこのままフルートを続けるべきか迷ってしまう。中途半端な姿に朋子は苛立ちを募らせ、二人は衝突を繰り返す。そんな中、朋子に思いもよらぬ困難が押し寄せる!絶望に打ちひしがれながら、オルガン制作を続けるか葛藤し、朋子は“怪物”を探しに森の中に入っていくが…。果たしてオルガンを完成させることはできるのか?二人の十九歳が“パイプオルガン”制作で様々な人々と出会い、自ら進む道を見つけていく音楽小説。
人の心の奥底を覗き見たい。暴かずにはいられない。わたしは、そんな厄介な性質を抱えている。“人の本性を暴かずにはいられない”探偵が出会った、魅惑的な5つの謎。日本推理作家協会賞(短編部門)候補作を含む、精緻でビターなミステリ連作短編集。
吉見駿は空想好きな中学生。祖父から受け継いだ“力”によって、見たい風景を「見る」ことができる。かつて共に「空想クラブ」を作った親友・真夜の葬儀の帰り道、駿は河川敷で幽霊となった彼女に再会する。川で命を落とした真夜は、死の瞬間に抱いた「謎」のために、河川敷から動けなくなってしまったという。自分だけが真夜の姿を見ることができると知った駿は、「空想クラブ」の仲間と彼女の死の真相を探っていくがー。横溝賞作家渾身の青春ミステリ。
足の甲を切る自傷行為と「もうだめ。死にたい」というツイートを繰り返す浪人生のくるみ。ある日、突然フォロワーのひとりからDMが届き、ネット上の自助グループ“銀色の国”に導かれる。一方、自殺対策NPO法人の代表として日々奔走する晃佑のもとには、友人が自殺したという悲報が届いた。元相談者でもあったその友人が今になって死を選んだ原因を調べるうちに、晃佑はある恐ろしい計画の一端に辿り着く…!!横溝正史ミステリ大賞受賞作家が放つ、現代の闇「自殺」に迫る鮮烈なミステリ!!
人工知能が個人にあわせて作曲をするアプリ『Jing』が普及し、作曲家は絶滅した。『Jing』専属検査員である元作曲家・岡部のもとに、残り少ない現役作曲家で親友の名塚が自殺したと知らせが入る。そして、名塚から自らの指をかたどった謎のオブジェと未完の新曲が送られてきたのだ。名塚を慕うピアニスト・梨紗とともにその意図を追ううち、岡部はAI社会の巨大な謎に肉薄していくー。私達はなぜ創作するのか。この衝動はどこから来るのか。横溝正史ミステリ大賞受賞作家による衝撃の近未来ミステリー!
2020年、研究者の工藤賢は死者を人工知能化するプロジェクトに参加する。モデルは美貌のゲームクリエイター、水科晴。晴は“ゾンビを撃ち殺す”ゲームのなかで、自らを標的にすることで自殺していた。人工知能の完成に向け調べていくうちに、工藤は彼女に共鳴し、惹かれていく。晴に“雨”という恋人がいたことを突き止めるが、何者かから調査を止めなければ殺す、という脅迫を受けてー。第36回横溝正史ミステリ大賞受賞作。
“人を傷つけてしまう”という強迫観念に囚われている、中学3年生の理子。“夜の日記”と名付けたノートに“殺人計画”を綴ることで心を落ち着け、どうにか学校生活を送っていた。しかし突然、理子の秘密を握る中学1年生・悠人が現れる。秘密を暴露すると脅され、やむを得ず悠人の父親を殺す計画を手伝うことになった理子は、誰にも言えなかった“夜の日記”を共有できる悠人に心惹かれていく。やがて準備は整い、ふたりは殺害計画を実行に移すがー。市内で発生する連続殺人、ボードゲーム研究会、“夜の日記”。バラバラだった事件は収束し、予想を裏切る結末が現れる!
二〇二〇年、人工知能と恋愛ができる人気アプリに携わる有能な研究者の工藤は、優秀さゆえに予想できてしまう自らの限界に虚しさを覚えていた。そんな折、死者を人工知能化するプロジェクトに参加する。試作品のモデルに選ばれたのは、カルト的な人気を持つ美貌のゲームクリエイター、水科晴。彼女は六年前、自作した“ゾンビを撃ち殺す”オンラインゲームとドローンを連携させて渋谷を混乱に陥れ、最後には自らを標的にして自殺を遂げていた。晴について調べるうち、彼女の人格に共鳴し、次第に惹かれていく工藤。やがて彼女に“雨”と呼ばれる恋人がいたことを突き止めるが、何者からか「調査を止めなければ殺す」という脅迫を受ける。晴の遺した未発表のゲームの中に彼女へと迫るヒントを見つけ、人工知能は完成に近づいていくがー。