著者 : 遠坂恵子
ふさわしき妻はふさわしき妻は
妻にはぜひ慎ましい女性を選ぼうーー まさに彼女とは正反対の。 しおれた花束を手に、クラリサはメイドのお古を着て広場に立っていた。 舞踏会の夜、不良貴族に臆病者呼ばわりされて黙っていられず、 花売り娘になれるか否かという賭けに応じてしまったのだ。 レディが一人で夜の暗がりに立つなど危険すぎることも忘れて。 案の定、通りがかりの粗暴な大男に路地裏へ引きずり込まれ、 絶体絶命と思われたそのとき、長身の救世主が颯爽と現れた。 彼の正体は、訳あって花嫁探しをしている不機嫌な子爵、シンジン! 先ほどの舞踏会でクラリサに向かって、妻に求める条件を満たさないーー 慎みがなく、率直さも、節度もないと言い放った男性だ。 ああ! こんな惨めな姿を、誰よりも見られたくなかった相手なのに……。 華やかなリージェンシーの旗手、ジュリア・ジャスティスの名作をお届けいたします。顔を合わせるたび、クラリサはシンジンに背を向けられてきました。けれども暴漢から救われたのを機に、ほかの貴族とは異なる彼に強く惹かれ始めている自分に気づいて……。
灰色の伯爵灰色の伯爵
嘘よ!私があの伯爵に買われたなんて。おじが賭事で作った借金を肩代わりする見返りに、冷徹と名高いコールドベック伯爵は私との結婚を要求した…。激しく動揺するキャサリンの耳に、力強いノックの音が響いた。「コールドベックです。あなたとお話ししたい」伯爵はキャサリンに反論を許さず、その日のうちに式を挙げ、2日後には彼女をヨークシャーの領地へ連れ去った。そのときのキャサリンは夢にも思わなかった。自分を買った夫に、狂おしいほど恋に焦がれる日が来ようとは。
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