著者 : 野中ともそ
長崎の中学校で仲良くなった同級生のすぐりと気持ちがすれ違ったまま、親の仕事の関係でニューヨークに移住し、高校生となった一葦。激動する社会で悩み、恐れ、ふさぎ込みそうになる。救ってくれたのは、NYの高校でオタク友達と始めた“アカペラコーラス”だった。そして歌声は海を越えて、遠い長崎のみならず世界とも繋がっていくー。ニューヨーク在住の著者が、彼ら、彼女らの青春を色鮮やかに描くエバーグリーン小説。
優秀な兄に代わって中島クリーニングの店長を引き継ぐことになった、三十次郎。しかし、先代のときからずっと仕えてきた荷山長門は、何のクリーニング知識も持たぬ能天気な若者に、不安を感じていた。どこかかみ合わない二人。そんな彼らのお店にある日、ナコという少女がやってくる。少女の持ってきたブラウスには、ケチャップの染みと祖父の遺灰がかかっていた。少女は、おじいちゃんの灰は取らないでとお願いするのだが…。服の汚れ、人の心の染み、そこについて残った想いに気づいたとき、昨日の染みは明日への希望に繋がっていくー心が強く震える傑作小説の誕生!
美貌の実力派女優・鈴子は人気絶頂のなか、年上のちょっと冴えない脇役俳優・由崎克彦と結婚。撮影所に弁当を届けにきていた女子高生・佳恵を自宅の家政婦として招き入れた。やがて赤ん坊が生まれたが、幸せな日は長くは続かなかった。自宅で赤ん坊が亡くなった状態で発見されたのだー。スキャンダラスに報じられた事件から数年後、由崎家には四つになる娘の日阿子と、新しい家政府の暁子がいた。しかし、暁子にはある「秘密」があったー。母と子の深い愛というテーマに挑んだ感動のミステリー。
夢のような幸せな日々には終わりが約束されていたー。13歳の少年ショウタは異国の地でモリーという名の不思議な女性と出会う。始めは奇妙な行動に戸惑うが、いつしか二人の間には絆が芽生えていった。美しい自然を舞台に繰り広げられる永遠の出会いの物語。
小さな借家に住み、薬草を売りながらその日暮らしをしている「ぼく」は、期待されると姿をくらましてしまうため「ジョーハツ」と呼ばれている。仕事からも愛する女性からも、逃げ出してしまうのだ。ある日、そんなジョーハツのもとに突然現れたのは、好奇心旺盛でおしゃまなしずくの女の子、ぴしゃんちゃん。「あたしのこと、そんじょそこらの水滴と一緒にしないで」と主張する彼女には、蒸発できない“しずく的事情”があるらしい。似たもの同士の二人は心を通わせていくがー。彼らが過ごした春夏秋冬を著者自ら描き下ろした挿画も収録した、大人のための物語。
「スティールドラム(パン)が好きな男性募集」NYの新聞にそんな恋人募集の個人広告が載る。広告を出したのは作詞家マヤ。電話をかけたのは地下鉄車掌グレゴリー。埋めがたい心の穴を抱える二人は、電話だけの付き合いを続けるうちに心を許し合っていく。やがてパンの故郷トリニダッド・トバゴで会う約束を交すがー。傷を抱えた男女の切なく激しい恋の行方は?第11回小説すばる新人賞受賞作。