著者 : 野阿梓
商店街からの依頼で、街で迷惑・暴力を働く奴らを懲らしめているタツヤ。ある日、奴らに襲われていた美少年ミナミを助けた。名門校に通うミナミと街の自警団として生きるタツヤでは、育ちや環境も違うが、二人は互いに惹かれ会う。しかし、突然ミナミが失踪する。行方を捜すと、彼は新興宗教の教祖の弟だった。おまけに兄と妹が企む怪しげな計画の犠牲に…。耽美SFの鬼才の10年ぶりの新作。
美貌の熾天使セラフィの任務は、美神アフロディトの子を殺し地上に逃れた悪竜ジラフを捕らえ、天界の霊的秩序を脅かす危険を除去することだった。ゴビ沙漠横断に挑む1931年のシトロエン探険隊、戦火に包まれた紀元前48年のアレクサンドリア、そしてシェイクスピアが新作悲劇の想を練る1599年のロンドンへーセラフィの追跡行は、やがて虚実の境界を超え、『ハムレット』を侵犯していく。日本SF屈指の傑作、ついに復刊。
一九三六年、ベルリン。留学中の十六歳の日本人少年、伊集院操青は、ある「事故」をきっかけに、叔父継央の歪んだ欲望の魔手に堕ちた。娼館に身を落とされ、その若く美しい肉体に、あらゆる性技を調教されることとなる。一方、二・二六事件が「成功」した日本では、内閣参議となった北一輝が、元衆議院議員の黒澄幻洋に、独ソ関係の調査という極秘任務を与えた。外務省勤務時代に諜報員として数々の業績をあげた黒澄は、ベルリンに赴く。そして、ゲシュタポ長官ミューラーの計らいで、操青と出会うこととなった…。大戦前夜。軋み続ける列強の関係。ナチス内部の権力闘争。日本政府を掌握した皇道派と北一輝の思惑。暗躍するイギリス、ソ連、ユダヤ組織の特務たち。時代の波に翻弄され続ける操青の運命は…。
伝説の女テロリストと少年の交流を描く「ブレイン・キッズ」、瀕死の王国を揺るがす倒錯の愛憎劇「夜舞」、黙示録巨篇『バベルの薫り』の主人公、姉川孤悲のサイキックアクション「ソドムの林檎」、猥雑さと純粋さが同衾する残酷な愛に彩られた、危険なテロ小説集。
アラベスクとジャパネスク大正浪漫とボンデージ。友愛、征服、そしてサディズムとマゾヒズム。相反する混沌が妖しく融けあい、少年たちの官能はやがて静かに薫りたつ。SFの異才が狂気とエロス渦巻く仮想空間にメタファーな眩惑を企む禁断の耽美冒険浪漫。
革命結社〈狂茶党〉の議長〈赤の女王〉は党内の反対派を粛清したあと、新しい党綱を決定するためレモンたち党幹部を招集した。ところが、集会場に向かっていたレモンたちの乗った宇宙飛行艇が別のテロリスト・グループにハイジャックされた。しかも一番近い地上基地はクーデタの嵐に巻き込まれている。〈赤の女王〉は遅刻を絶対に許さない。どうする、レモン。表題作他、幻想華麗な書下ろし中篇「妖精の夏」を含む。
心霊科学研究所マホロバ出身の稀代の霊能者・姉川孤悲は祖国日本の霊的危機を救うべく、学園都市・井光に遣わされた。同行するのは、孤悲自らが月のチャイルド・マーケットより救い出した林譲次。井光は井光学園によって、学園都市としてのイメージを形成している。その井光学園の歴代の学園理事をつとめるのが塔家、そして、巨大な権力を握る当主は美貌の女性・塔あけぼのだった…。多彩な人物たちが妖しく織りなす、書き下ろしSF巨篇。
豪華客船ベオウルフ号に銀河赤道祭の狂熱が高まるなか、宙難審判庁理事官ザウバーは再びその男と出会う。彼の妻子を奪った謀略に関わる男、オージュール・バラジュデーラ。行政の暗黒面に身をおき、ひとり自らの戦いを戦う銀河連邦のGメン。オージュールが告げる、ザウバーの復讐に費やした空白の時を埋める事実とはー。漂白の宇宙都市を揺がす権力闘争と人狼事件。廃星デヴォンの調査隊を襲った災厄。十年前と変わらぬ少年の姿で、いまもオージュールによりそう青い髪の少年の謎。そしてすべてが整ったいま、始まりが待たれる最後の闘い…。
孤絶したデヴォン星で百年の孤独に耐えて生きた青い髪の少年のリュシアン。かたくなに心を閉ざし,オージュールの精神感応力も及ばぬ超能力を秘めた彼の傷ついた魂を癒やすのは、オージュールとデヴォン星の機械知性,美貌のテロリストの奇妙なチームだった。やがて開かれた少年の心には、七百年の時をへだて、美しき狂王に率いられた少年十字軍の血の祝祭劇があった。そしていま、天空の王に棒げる赤道祭にわく船内に、再び連邦の理念をかけた戦いが始まる。それは、オージュールの、人間的存在の意味をかけた自らの戦いにほかならなかった…。