著者 : 雨宮朱里
地味ながら穏やかに暮らすアンナの家にある日突然、見知らぬ大富豪ウォードが現れ、一方的に言いがかりをつけてきた。彼の弟から大金をだまし取ったと責められても、まるで身に覚えがない。だが、百獣の王のような圧倒的存在感を放つウォードは、彼女に反論の余地も与えぬまま、憤然と立ち去った。ばかね、私。彼に怒るべきなのに、魅力を感じてしまうなんて…。その後、アンナは庭仕事中に頭を怪我して気を失うが、たまたま戻ってきたウォードに発見され、病院へ運ばれた。目覚めると彼女は、記憶を失っていたーそして、ウォードに言った。「あなたとは特別なものを感じる。私たちは、恋人同士なんでしょう?」
ミアは血も涙もない父親に道具として利用されようとしていた。ギリシア人大富豪アレクサンダー・ドゥーマスとの契約結婚ー父はある島と引き換えに、跡継ぎにする男孫を得るつもりなのだ。かつて衰退したドゥーマス一族が父に売り渡したその島を、いまアレクサンダーが取り返そうと狙っていることにつけ込んで。ミアからすれば父の提案は野蛮きわまりないものに思えたが、島を買い戻すつもりでいたアレクサンダーにとっても同じだった。それでもやむなく条件をのんだ彼は蔑みを込めてミアに宣告した。「夫婦でいるあいだ定期的にきみを抱く。悪魔の子ができるまで」
幼くして両親を亡くしたクリスタは、これまでずっと、後見人のジャレッドが敷いたレールの上を走ってきた。高校を卒業するとすぐにヨーロッパの教養学校に通わされ、2年の留学期間を経て今、ようやく故郷へ戻ってきたところだ。これからは何事も自分で考え、自由に飛びまわりたい。そう決めた矢先、ジャレッドから信じられないことを告げられる。きみにはすでに決められた結婚相手がいるのだ、と。ジャレッドの暗く謎めいた瞳を見て、彼女はすべてを悟ったー相手とは彼自身のことで、この結婚には愛などないということを。