著者 : 雨宮朱里
「この汚らわしい契約」 私との結婚を、夫はそう呼んだ。 ミアは無慈悲な父によって道具として利用されようとしていたーー 大富豪アレクサンダー・ドゥーマスとの取り引きで。 かつて傾いたドゥーマス一族から先祖代々の島を買い上げたミアの父と、 それを取り戻したい一族の現当主アレクサンダー。 ミアの父は、島を返してほしいなら娘と結婚して、 跡継ぎとなる孫息子をつくるよう、アレクサンダーに迫ったのだ。 今や世界に名を轟かせるドゥーマス帝国を復活させた、 誇り高きギリシア人のアレクサンダーにとってその提案は屈辱的だった。 それでもやむなく条件をのんだ彼は蔑みを込めてミアに宣告した。 「夫婦でいるあいだ定期的にきみを抱く。悪魔の子ができるまで」 英国ロマンス界でリン・グレアムと双璧をなす大人気作家ミシェル・リードによって1990年代に書かれたドラマティックな愛なき結婚物語。父親の言いなりになっている理由をアレクサンダーに問われるミアですが、彼女には誰にも言えない切実な事情があり……。
あなたが誰だか、わからない。 でも、本能が恋人だと告げている……。 地味ながら穏やかに暮らすアンナの家にある日突然、 見知らぬ大富豪ウォードが現れ、一方的に言いがかりをつけてきた。 彼の弟から大金をだまし取ったと責められても、まるで身に覚えがない。 だが、百獣の王のような圧倒的存在感を放つウォードは、 彼女に反論の余地も与えぬまま、憤然と立ち去った。 ばかね、私。彼に怒るべきなのに、魅力を感じてしまうなんて……。 その後、アンナは庭仕事中に頭を怪我して気を失うが、 たまたま戻ってきたウォードに発見され、病院へ運ばれた。 目覚めると彼女は、記憶を失っていたーーそして、ウォードに言った。 「あなたとは特別なものを感じる。私たちは、恋人同士なんでしょう?」 中世の面影を残す町ライ・オン・アバートンに住む女性たちのロマンスを描いた4部作〈美しき報復〉の第2話です。本作のヒロインは内気で引っ込み思案なアンナ。記憶喪失に陥った彼女に恋人と誤解されたウォードは、やむをえずしばらく彼女と同棲することに……。
ミアは血も涙もない父親に道具として利用されようとしていた。ギリシア人大富豪アレクサンダー・ドゥーマスとの契約結婚ーー父はある島と引き換えに、跡継ぎにする男孫を得るつもりなのだ。かつて衰退したドゥーマス一族が父に売り渡したその島を、いまアレクサンダーが取り返そうと狙っていることにつけ込んで。ミアからすれば父の提案は野蛮きわまりないものに思えたが、島を買い戻すつもりでいたアレクサンダーにとっても同じだった。それでもやむなく条件をのんだ彼は蔑みを込めてミアに宣告した。「夫婦でいるあいだ定期的にきみを抱く。悪魔の
幼くして両親を亡くしたクリスタは、これまでずっと、後見人のジャレッドが敷いたレールの上を走ってきた。高校を卒業するとすぐにヨーロッパの教養学校に通わされ、2年の留学期間を経て今、ようやく故郷へ戻ってきたところだ。これからは何事も自分で考え、自由に飛びまわりたい。そう決めた矢先、ジャレッドから信じられないことを告げられる。きみにはすでに決められた結婚相手がいるのだ、と。ジャレッドの暗く謎めいた瞳を見て、彼女はすべてを悟ったーー相手とは彼自身のことで、この結婚には愛などないということを。