すぐ隣で、ずっと遠くで、耳をすませばきっと聞こえる。芥川賞作家にして史上最年少の川端賞作家がすくいあげる6つの小さな奇跡。
世界に外も中もないのよ。この世は一つしかないでしょー二〇歳の知寿が居候することになったのは、二匹の猫が住む、七一歳・吟子さんの家。駅のホームが見える小さな平屋で共同生活を始めた知寿は、キオスクで働き、恋をし、時には吟子さんの恋にあてられ、少しずつ成長していく。第一三六回芥川賞受賞作。短篇「出発」を併録。