著者 : 青木純子
1950年、メキシコ。大学に通いながら社交生活を愉しんでいる女性ノエミ・タボアダのもとに、イギリス人の男と結婚し、さびれた町の屋敷に嫁いだ従姉のカタリーナから手紙が届く。そこには「夫に毒を盛られ、亡霊に苛まれている」と助けを求める異様な内容が書かれていた…。カタリーナの様子を確かめるべく、屋敷に赴いたノエミ。そこで彼女を待ち受ける恐るべき秘密とはー?世界中で激賞を浴びた新世代のゴシック・ホラー小説、ついに邦訳。英国幻想文学大賞ホラー部門オーガスト・ダーレス賞、ローカス賞ホラー部門、オーロラ賞受賞。ネビュラ賞、ブラム・ストーカー賞、シャーリイ・ジャクスン賞最終候補選出。
ニューヨーク州、キャッツキル山地の山あいにそびえる“ホテル・ネヴァーシンク”。ポーランド系ユダヤ人のシコルスキー一家が1930年代に大邸宅を買い取って開業したこのホテルはやがて、トルーマン大統領にも愛される、アメリカ屈指のリゾートに成長する。しかしあるときからホテル周辺で子供たちの行方不明事件が起こるようになりホテルの人気は凋落。その裏には、一家の抱える秘密があった…。ホテルを取り巻く人々の語りによって真相が暴かれるゴシック・ミステリ。エドガー賞最優秀ペーパーバック賞受賞作。
1910年の大雪の晩、アーシュラ・ベレスフォード・トッドは生まれた。が、臍の緒が巻きついて息がなかった。医師は大雪のため到着が遅れ、間に合わなかった。しかし、アーシュラは、同じ晩に再び生まれなおす。今度は医師が間に合い、無事生を受ける。同様に、アーシュラは以後も、スペイン風邪で、海で溺れて、フューラーと呼ばれる男の暗殺を企てて、ロンドン大空襲で…、何度も何度も生まれては死亡する、やりなおしの繰り返し。かすかなデジャヴュをどこかで感じながら、幾度もの人生を生きるひとりの女性の物語。ウィットと慈しみに満ち、圧倒的な独創性に驚かされる比類なき傑作。コスタ賞受賞作。
1961年、少女ローレルは恐ろしい事件を目撃する。突然現われた見知らぬ男を母が刺殺したのだ。死亡した男は近隣に出没していた不審者だったため、母の正当防衛が認められた。男が母に「やあ、ドロシー、久しぶりだね」と言ったことをローレルは誰にも話さなかった。男は母を知っていた。母も男を知っていた。彼は誰だったのか?ケイト・モートンが再びあなたを迷宮に誘う。
第二次世界大戦中、ローレルの母ドロシーは、ロンドンの裕福な婦人の屋敷に住み込むメイドだった。向かいに住む作家の美しい妻に憧れていた彼女には婚約者もいたが、ロンドン大空襲がすべてを変える。2011年、ローレルは死の近い母の過去を知りたいと思い始める。母になる前のドロシーの過去を。それがどんなものであったとしても…。翻訳ミステリー大賞・読者賞W受賞の傑作。
ロンドン警視庁の女性刑事が問題を起こして謹慎処分となった。女児を置き去りにして母親が失踪したネグレクト事件を担当していて上層部の判断に納得がいかず、新聞社にリークするという荒技に走ったのだった。ロンドンを離れ、コーンウォールの祖父の家で謹慎の日々を過ごすうちに、打ち捨てられた屋敷・湖畔荘を偶然発見、そして70年前にそこで赤ん坊が消える事件があり、その生死も不明のまま迷宮入りになっていることを知る。興味を抱いた刑事は謎に満ちたこの事件を調べ始めた。70年前のミッドサマー・パーティの夜、そこで何があったのか?仕事上の失敗と自分自身の抱える問題と70年前の事件が交錯し、謎は深まる!
70年前、コーンウォールの湖畔荘で消えた赤ん坊。見捨てられた屋敷の現在の持ち主は、ロンドンに住む高名な女流ミステリー作家アリス・エダヴェインだった。消えた赤ん坊の姉だ。当時、湖畔荘には三人の娘がいた。そして消えた赤ん坊は待望の男の子だったのだ。女性刑事はなんとしてもこの迷宮入りした事件の謎を解きたくなり、作家アリスに連絡を取る。一九一〇年代、三〇年代、二〇〇〇年代を行き来し、それぞれの時代の秘密を炙り出すモートンの見事な手法。複雑に絡み合う愛と悲しみがもたらすものは?そして、最後の最後で読者を驚かすのは、偶然か、必然か?モートン・ミステリーの傑作。
1913年オーストラリアの港に英国からの船が着き、ひとり取り残され、名前すら語らぬ少女が発見された。優しいオーストラリア人夫妻に引き取られ、ネルと名付けられた少女は21歳の誕生日にその事実を告げられる。時は移り、2005年のブリスベン。老いたネルを看取った孫娘カサンドラは祖母がコーンウォールのコテージを彼女に遺してくれたと知る。ネルとはいったい誰だったのか?
祖母からコーンウォールのコテージを相続したカサンドラは現地へと向かう。1975年に祖母はなぜそのコテージを買ったのか?今はホテルとなった豪壮な屋敷の敷地のはずれ、茨の迷路の先にコテージはあった。そこでカサンドラは、ひっそりと忘れられていた庭園を見出す。封印されていた花園は何を告げるのか?祖母は誰だったのか?デュ・モーリアの後継といわれる著者の傑作。
いずれはフランスに住みたいとフランス語の勉強に余念ない私立探偵ジャクソン・ブロディ。目下の仕事は消えた幼女捜し。34年前に3歳で姿を消したのだった(中年の変人姉妹の依頼ー死んだ父親の家を片づけていたら、妹が消えた時に持っていたネズミのぬいぐるみが出てきたの!)、そして惨殺された愛する娘の殺人犯捜し(弁護士だった父親の依頼ー彼の家は捜査本部のようで、現場写真、地図、タイムテーブル等々で胸が悪くなりそうだ)、消えた黒猫捜し(猫屋敷の老婦人の依頼ー誰かがさらっていっちゃうんです)、キャビンアテンダントである妻の浮気調査(被害妄想気味の夫の依頼ーこんな男があんなゴージャスな女をどうやってものにしたんだ?)、25年前、夫殺しでつかまった姉の、当時赤ん坊だった娘捜し(ある看護師の依頼ー駄目なわたしの代わりに、お母さんになってあげて、と姉に言われたのに…)
『忘れられた花園』のモートンが再び読者を誘う物語の迷宮。オーストラリアABIA年間最優秀小説賞受賞。母は、なぜあの見知らぬ男を殺したのか?少女だったローレルは確かに聞いたー「やあ、ドロシー、久しぶりだね」と彼が言ったのを。
母が亡くなって2年後、元エンジニアで変わり者の父が、ウクライナからやって来た豊満なバツイチ美女と結婚すると言い出した!父84歳、美女36歳。母親の遺産問題で仲の悪くなっていた2人の娘は一時休戦、財産とヴィザ目当てに違いないその女性から父を守るべくタッグを組み、追い出し作戦を開始するのだが…。ヨーロッパで話題騒然のイギリス発世界的ベストセラー、日本初上陸。
タバコ業界のスポークスマンのニックことニコラス・ネイラーは、吹き荒れる嫌煙運動の嵐に立ち向かい、健康問題シンポジウムで、人気TVトークショーで、愛煙家の自由と権利を護るべく、日夜、論戦を繰り広げていた。チーズは血管を詰まらせる、それなのにどうしてタバコだけが責められるんだ。クッキー入りアイスクリームなんていう恐るべき食べ物があるというのに、タバコだけがやりだまにあげられるのはなぜ、なぜなんだ。タバコには、パーキンソン病の発症を遅らせる効能があるというではないか。それにですよ、タバコ無しのハンフリー・ボガートなんて、考えられますかあなた。愛煙家の味方ニックは戦っていた。アルコール産業のスポークスウーマンと、銃関係団体のスポークスマンとの三人で、自らを「死の商人」と称し、集まってはグチを言い合い、怪気炎を上げ、ストレスを解消しつつ…。彼はこの仕事が好きだった。それより何より、彼には家のローンがあった。ニックはしゃべりつづける。まるでナチスででもあるかのように人々に糾弾されようと、嫌煙活動家に殺されかけようと。そうなのだ、彼は拉致され、皮膚から少量ずつニコチンを吸収させるという、ニコチン中毒治療用のニコチン・パッチを全身に貼られ本当に殺されかけたのだ。FBIまで巻き込んでの、吸ったもんだの大騒動。腐敗した政治、メディア戦略、パワーゲーム…ワシントンの構造を痛烈に徹底的に揶揄する抱腹絶倒のタバコ小説。愛煙派も嫌煙派も絶対必読。
トレドにある酒場「ロコス亭」に集まる奇妙な人々は、物語の内と外を、またそれぞれの物語の間を自在に行き来し、読者を虚構と現実のはざまに誘う。ナボコフ、カルヴィーノ、そして多くのラテン・アメリカの作家たちの原型ともいうべき、知的で独創的で、とてつもなく面白い小説集。
美しい娘ヘーローを愛した青年レアンドロスは、蝋燭の灯をたよりに彼女の許へと毎晩、海峡を泳ぎ渡った。ある夜、ヘーローの兄が船で海に出て蝋燭の灯で青年を沖へとおびき出し溺死させてしまう。古代ギリシアの悲恋物語の主人公二人は、『バザール事典』のパヴィチの手によって、現代の化学専攻の女子大生ヘーローと、17世紀の青年石工レアンドロスに生まれ変わる。二人の男女を隔てるのは、青い海ではなく、時間の海なのだろうか。鬼才パヴィチが次々に投げかける詩的謎の数々…。この本は両側から読み始められます。あなたはどちらの側からこの謎に満ちた小説に挑まれますか。