著者 : 青柳優子
本邦初刊行。金承ギョク自選短編集。 朝鮮戦争停戦後李承晩大統領が権力を掌握し続ける中、1960 年にはそれま での政治の腐敗に憤って立ち上がった学生によって4・19学生革命が大統領の下野というかたちで成功する。しかし、翌年5月には軍事クーデターが起きて軍事独裁政権に。政権に批判的な人士はスパイ・容共主義者の烙印が押されて連行され、過酷な尋問に苦しめられることも多々あった。 厳しい軍事独裁政権を生きぬいた秘かな芸術的抵抗としての代表作『ソウル1964 年冬』。これこそ、金承ギョク文学の特徴であり特筆すべきものである。本邦初訳の6作品と新訳の3作品を収める。 1.ヤギは力が強い 2.乾(ケン) 3.お茶でも一杯 4.霧津紀行 5.力士(力持ち) 6.夜行 7.妹を理解するために 8.彼と私 9.ソウル1964年冬 作品解説 年譜
動物や死者の魂の声を聴き取ることのできる不思議な少女・パリ。飢餓に苦しむ北朝鮮を逃れて国境を越えたパリは、家族全員を失いたった一人で世界に投げ出される。行き着いたロンドンは、移民、難民が世界中から吹き寄せられる街。テロや暴力に苦しむ世界中の声が、パリの耳に響く。そこで出会ったのは、パキスタンから来た一人の男…。韓国随一の作家黄〓(せき)瑛は、89年、国禁を犯して北朝鮮に渡り、帰国後五年間、獄に投じられた。その後はパリ、ロンドンに居を移し、世界中を渡り歩いた。「パリデギ」はその経験を踏まえ、移民、難民の側から現代世界の苦しみ、哀しみを描いた小説である。
その孤独で真っ暗な壁の中で、あなたは何を見つけましたか?一九八〇年代の軍事独裁政権の時代、政治犯として収監された男と、獄中の男へ宛てた手紙を残してこの世を去ったひとりの女の、暗い時代に咲いた切ない愛。現代韓国をリードする作家、黄〓暎が描く、80年代韓国民主化運動の青春。
あの時代を無名のまま生きた人々の堂々たる青春を、どうして忘れることができようか。一九八〇年光州民衆闘争ー。「みんなは光州での無慈悲な良民虐殺を見たり聞いたりしており、それは炎の時代である八〇年代の始まりだった」。軍事独裁政権の時代、民主化への道を模索しつづけた、「386世代」(現在30歳代で、80年代に大学生として民主化運動に関わった、60年代生まれの世代)の原点。