著者 : 須賀孝子
母の死後、いつも妹の後始末をしてきたエマは頭を抱えた。敏腕実業家として知られるドレイクの車を、妹が壊したのだ。代償に、エマは扇情的な雑誌に出るよう求められ愕然とする。断れば訴訟を起こすと脅され、承諾するほかなかった。実際には、彼が要求したのは婚約者のふりをすることだった。共に過ごすドレイクの男性的魅力が息苦しいほどでも、エマは愛のない関係を結ぶ気はなかった。ある日、街へ出たエマは暴漢に襲われて頭を打ち、記憶を失う。退院したあと、情熱が導くまま“婚約者”と枕を交わすがー。
母の死後、19歳のメレデスは幼い弟とふたりだけになった。困窮したメレデスは、長らく絶縁状態にあったファウラー大財閥を築いた、母方の祖父を頼るしかなくなった。だが祖父は血筋のためなら、なんでもする冷帝な人物だという。機転をきかせた彼女は屋敷に着くなり、権力闘争から守るため弟を自分の息子だと偽るが、すぐに激しく後悔した。祖父の後継者、実質上の大財閥の統括者であるデインに、身持ちの悪い女だと、底冷えする目つきで蔑まれたから。そして、メレデスは寡黙で美しい彼に心を奪われたから。
不実な夫が多額の負債という苦までジェシカに押しつけ、死んでいった。パートタイムの仕事を見つけ、せめて少しずつでもと返済を始めるが、生前に夫が会社のお金まで使い込んでいたことが新たにわかった。もはや手詰まりとなって、途方に暮れるジェシカの頭に、夫の上司だった魅力的な社長、マシュー・シンクレアの顔が浮かぶ。以前、初めて会ったとき、彼はジェシカが誰かも知らないまま、熱い瞳で彼女を見つめ、“僕のものになってほしい”と言った。あの日は戸惑いと恥ずかしさで逃げてしまったけれど…。ジェシカは心を決め、マシューのもとへ向かった。返済できないことの償いとして、わが身を差し出すために。