著者 : 風見潤
はるかな昔、幻獣たちが暮らすクレタ島の森ー。心優しきミノタウロスの若者ユーノストスは、美しい木の精コーラに恋をした。だが、いつか人間の恋人と結ばれることを夢見ているコーラは、ユーノストスに色よい返事をしようとしない。そんなある日、瀕死の重傷を負ったクレタの王子アイアコスが森に迷いこんできた。彼がコーラと出会ったとき、悲劇は始まった…。幻想の詩人スワンが贈る『ミノタウロスの森』の前日譚。
紀元前1500年。クレタ王国は蛮族アカイア人の侵攻の前に屈しようとしていた。王女テアと弟のイカロス王子は追手を逃れて森の洞窟に入ったものの、牛頭人身の怪物ミノタウロスに行く手をふさがれてしまった。ところが意外にもミノタウロスは、怪物どころか、森を愛する知的で穏やかな生きものだった…。クレタの森の幻獣たちとともに、侵略者から故国を守ろうと立ち上がった王女と王子を描く、幻想の詩人スワンの処女長篇。
零細編集プロダクションに勤める宝生敦子、26歳。社長の罵声を溶びながら原稿取りに奔走している。晩夏のある日、原稿の進まない翻訳家加賀淳平宅を訪れた折り、敦子はOL時代の親友高瀬知美の自殺を知らされる。通夜の席上、機械嫌いだったはずの知美がパソコン通信をしていた形跡を発見した敦子は…。情報時代に潜む罠をユーモラスに描く傑作長編。
出雲の諸手船神事の夜、1年前に死んだはずの村の有力者、那智慶一郎が突如、美保関に現れた。時を同じくして、出雲歌舞伎で沸き返る加賀戸村に異変が起こりはじめる。村の宝泉寺の五百羅漢に火がともり、誰もいないはずの賽の河原には子守唄が…。不吉な予感がした基子は、友人の麻理子と素人探偵のたかしを呼び寄せるが、出雲七不思議の手毬唄どおり奇怪な殺人がつぎつぎと実行されていく。神話シリーズ第一弾。
大阪の繁華街十三で、“ジュウサンノカク”というダイイングメッセージを残して、津軽出身の男が死んだ。一方、津軽半島の西側にある十三村に、ネプタ祭りの取材に行った三村佐知子が行方不明になり、数日後、山奥の滝壼の中で死体となって発見された。伝統的な祭り“ネプタ”を再現して、村興しをはかる若者たちと、原子力開発の利権に揺れる山村で起きた謎の殺人事件を追って、佐知子の先輩、マリリンこと朝倉麻里子は恋人の羽塚たかしと共に津軽へ…。大阪と津軽を結ぶ線上に浮かんだ、一人の容疑者を追って、麻里子とたかしの推理が冴える。書下ろし会心作。
伊集院浩子が湯島から失踪した。友人の島津絵里子が、SF研の仲間に相談しようと六本木の“ソラリス”に向かう乃木坂の裏道で、空から降ってきた男が残したダイイング・メッセージの謎を追うと、ふたつの事件が表参道でクロスする…。ファッショナブルストリートに展開する、ザ・デイミステリー・イン・TOKYO!