著者 : 飯塚容
息子は父に、父は母に、母は息子に殺意を抱く。「すばらしい中国のはなしを語る」という政治キャンペーンを逆手にとり、改革開放から取り残された家族の「声」を再構成した奇妙な物語。現代中国の闇を撃ち、発禁がつづく巨匠による最新作。
【内容紹介】 「ミス上海の死」を描いた、中国文学の記念碑的作品、待望の邦訳! 茅盾文学賞受賞 上海の街を舞台に、美しき主人公・王キ瑶(ワン・チーヤオ)の青春から死に至る四十年を描く長編小説。1940年代の虚栄の繁華、50〜60年代の困窮と苦難、そして80 年代のロマン的悲劇まで、恋多き主人公の人生を通して、上海という街の繁栄と虚栄が描かれる傑作。 【作者の言葉】 『長恨歌』は、とてもとても写実的な作品です。 その中で私は、一人の女性の運命を描きましたが、 事実上、この女性は都市の代弁者にすぎません。 私が描いたのは、実のところ、 「上海」という都市の物語なのです。 ーーー 王 安憶 【推薦文】 ずっと読みたかった傑作小説の邦訳がついに! 王安憶のカメラアイが弄堂(ロンタン)を、路地を、旧フランス租界のアパートをくまなく旋回し、 わたしたちは「上海の淑女」の生きた四十年の虜(とりこ)になる ーーー 中島京子(小説家) 〔目次〕 第一部 第二部 第三部 二十八年を振り返って --- 日本語版後記 王 安憶 『長恨歌』と王安憶について 飯塚 容
茅盾文学賞受賞作品 「金ができたら、故郷に帰って店を開こう」--盲人はみな同じ理想を抱いている。南京の「沙宗キマッサージセンター」は、その名のとおり、沙復明と張宗キが共同出資して開いた店だ。出稼ぎ労働で苦難をともにした二人は、「半分ずつ」とはいえ、いまやどちらも「店長」だ。ある日、沙復明のもとに、かつての同級生・王先生が職を求めてやってくる。彼は天生のマッサージ師だが、開業を急ぐあまり株に手を出し、せっかく貯めた資金を失っていた。駆け落ち同然で連れてきた恋人・小孔との仲も、新しい環境のなかでぎくしゃくし始める。同僚のマッサージ師たちの人生もさまざまだ。少女時代、全盲でありながらピアノの名手だった美貌の都紅。完全に失明してしまう前に、愛する人との婚礼を目に焼きつけたいと願う金嫣。無口な青年・小馬は、初めて芽生えた恋愛感情に戸惑いを隠せない……。 ふとしたことで、平穏に思えた日常にさざ波が立ち、やがて大きなうねりとなって、盲人たちはそれぞれ人生の決断を迫られることになる。暗闇の中、ひと筋の光明を求め、懸命に生きる姿が胸を衝く。 中国の実力派作家による、20万部ベストセラー傑作長篇。映画化原作。
食堂の火事で死亡した「私」は、墓地がないため火葬もされずにこの世の周縁をさまよっている。美しく聡明な最愛の元妻、都市の隙間であえぐ貧しいカップル、病院から姿を消した育ての母と27体の嬰児、そして、鉄路で拾った「私」に細やかな愛情を注いでくれた鉄道員の義父…。現代中国を生きる庶民の悲哀と懐旧と純真を、曇りなき瞳で写しとった最新長篇。
飛行機の中でふと目にした子連れの人妻と男のささやかな戯れ、大胆にトイレに消えてゆく二人の男、スタイリッシュな叙述と微笑を誘う比喩を駆使してありふれた日常の断面を鋭く切り取る。あまりにも鮮やかなラストシーン。
末妹の死の残像に苛まれつつ、恋愛遍歴を重ねる尹小跳。生来の美貌を武器にのしあがろうとする唐菲。アメリカに渡って結婚。アイデンティティを見失う尹小帆。文革から開放へ。激動の時代を生きた女たちの肉体と魂の遍歴。
北京からパリへと書き継がれ、7年の歳月をかけて完成。癌を宣告された男の放浪と魂の彷徨を描き、ホメロスの叙事詩に擬せられ、「東洋のオデュッセイア」と讚えられる。本書によって、中国人作家初のノーベル賞受賞となった待望の翻訳刊行。