著者 : 馬渕早苗
「鏡の中の女」(シャーロット・ラム/馬渕早苗訳)目覚めるとそこには、濃い霧に覆われた荒れ地だった。ここはどこ?わたしはなぜこんなところに?それより、自分が誰なのかすらわからない!寒さと恐怖に震えていると、霧の中に長身の人影が。衰弱した彼女は、通りがかりのその男性に連れられて病院へ行ったが、不可解なのは、ジェイクという名の彼が敵意のまなざしを向けてきたこと…。数日後、退院を許された彼女のもとに、再びジェイクが現れた。いまだ記憶が戻らず途方に暮れる彼女に、彼はあっさり言った。「君の名前はリン・シェリダン。君は僕のものなんだ」 「アンダルシアにて」(ヴァイオレット・ウィンズピア/斉藤雅子訳)青白い顔をしたアラベルの病室には、高価な見舞いの品々が毎日届けられる。送り主はスペイン人の名士で、彼女の“夫”であるコルテスだという。記憶喪失のアラベルには、結婚など身に覚えがなかった。そこはかとない不安を感じていた彼女の前に、ある日、夫が現れた。威厳に満ち、尊大な雰囲気漂うコルテスを見て、アラベルが思わず結婚の無効を申し出ると、彼は言った。「君には僕しかいない。君は僕の妻なんだよ」そして、豪奢な屋敷にアラベルを連れて帰ったコルテスは、名実ともに妻となることで要求してきて…。
はねつけられ、遠ざけられても、 この想いだけは止められない。 サラは親同士の再婚で家族になった義兄と二人で暮らしている。 ある日、義兄に付き添って出席したパーティで、 サラはハンサムで洗練された名門銀行の頭取ニックに出会った。 一瞬で惹かれるが、どうしたことか彼の態度は刺々しい。 義兄との仲を勝手に誤解し、ふしだらな女と言わんばかりに サラを非難すると、強引に唇を奪ったのだ。 私のことなど何も知らないくせに、なぜそんなに傲慢なの? さらにニックは自信満々に、サラを必ず手に入れると言い切った。 無垢なサラは動揺するばかりで、気づきもしなかったーー ニックの瞳の奥に揺らめく、隠しきれない嫉妬と情熱の炎に。 歴代ハーレクイン・ロマンス作家の中でもとくに、稀代のストーリーテラーとして愛され、今もなお語り継がれるシャーロット・ラム。素直になれないヒーローと無垢なヒロインが織りなす、せつなくももどかしいクラシック・ロマンスをお楽しみください。
医師に脳腫瘍と診断され、余命4カ月と知ったウェンディ。 両親もなくひとりぼっちの彼女は、 家財をすべて売り払い、豪華客船で最後の旅に出た。 その船上で出会ったのが、ローマ時代の彫刻のような品格を漂わす、 たくましくハンサムな富豪ガース・リヴァーズだ。 やがて二人の距離はじょじょに縮まっていくが、 彼に惹かれれば惹かれるほど、ウェンディは切なくなるのだった。 どれだけ恋い焦がれようと、彼とは決して結ばれないーー 私が生きられる時間は、あとわずかしか残されていないのだから。 悲劇的な宿命を背負ったヒロインは、燃え尽きる寸前の蝋燭のごとく、熱く激しく恋心を燃やして……。ハーレクイン黎明期から活躍するベテラン人気作家アン・ハンプソンが描く、激愛ロマンス!
なんて酷い男なの! 先日の従妹の打ち明け話を思いだして、リーは怒りに震えた。マット・ヒューム──大会社の社長が、自分の部下を弄ぶような真似をするなんて。ふと、リーは目の前で食事を供にしている婚約者に目を移した。彼はとてもよい人だし、そんなことはしない。ただ最近は、リーからの愛情を感じられないと嘆いてはいるけれど。ひとりでレストランを出て、エレベーターに乗った彼女は、狭い空間に火花が散るような感覚を覚え、衝撃を受けた。奥に立つセクシーな男性の灰色の瞳から、なぜか目を離せない。次の瞬間、抗えない力に引かれて、