著者 : 高津幸枝
経営難に陥った学園に校長として赴任したホーソン。性的虐待や薬物濫用で傷ついた子どもが通う学園を再建すべく、彼は改革に乗り出すが、反発する教師たちとの対立は深まっていく。そんな折り、放火で妻と娘を失った彼の悲惨な過去が何者かの悪意で暴かれ、ある教師の部屋が侵入者に荒らされる事件が起きる。やがて、ホーソンのもとに亡き妻をかたる女性から執拗な電話が!その時から、校内を死の影が覆っていく…。
首吊りにされた猫の死骸、学内の臨床心理士の自殺。さらに、プールでは首を鋭利な凶器で刺された男子生徒の死体が発見された。季節は酷寒の冬を迎え、学内で不穏な空気が高まっていく。そして吹きすさぶ雪で学園が外界と隔絶した時、女子生徒に魔手が迫り、ホーソン自身にも危険が!心に癒せぬ傷を負った人々が織りなす、悲哀に満ちた人間ドラマ。『死せる少女たちの家』の著者が、人間の心理を抉った渾身のサスペンス。
眼窩は深く落ちくぼみ、皮膚が乾ききった三人の少女の遺体。周囲に点された無数の蝋燭の光が、生気を失った彼女たちの顔に無気味な陰影を刻むー平穏に慣れきった田舎町を得体の知れない恐怖で包む連続少女失踪事件。最初に姿を消したのは、十四歳のシャロンだった。やがて届いた差し出し人不明の箱には、彼女の着ていた衣服とマネキンの左手が収められていた。住民たちは、行方不明となったシャロンの無事を願うが。
ニューヨーク州の田舎町オーリリアスで起きた連続少女失踪事件。少女がひとり姿を消すたびに、新たな箱が届けられる。犯人探しに血まなこになる住民たちは、外国人、社会主義者、同性愛者などの異質な者に不信の念をつのらせるだけではあきたらず、憎しみさえあらわにしはじめた。平穏だった小さな町の人々は、ゆっくりと、だが確実に、恐怖にむしばまれてゆく…狂気が理性を飲み込む様を冷徹に描いたサスペンスの傑作。
ニューヨーク州の片隅の小さな町、オーリリアスは、奇怪な事件の連続に悩まされていた。娼婦のように町中の男と付き合っていた女性が殺され、その左手が切り取られていた。町の大学に過激な社会主義者が赴任、数人の学生がシンパとなり、内紛や外部とのいざこざを繰り返す。町の学校に、連続して爆弾が仕掛けられ、警官隊が出動する。そして…一人の少女が行方不明になるという事件が勃発した。行方不明の少女の服と、卑猥な言葉を書きつらねたメモ、そしてマネキン人形の左手が警察へ送りつけられ、住人たちの不安は、頂点に達したかに見えた。だが、二人目の少女が消えた。事件は、まだ始まったばかりだったのだ!ミステリ作家としてばかりでなく、詩人としても知られる著者が、満を持して放った自信作。英国推理作家協会賞、ブラム・ストーカー賞にノミネートされた、異色サスペンス。
1915年、第一次世界大戦のさなか優秀な海兵隊員を輩出する名門ブラックウッド家の当主で、海兵隊砲兵部隊の大尉ジョナサンは、英国海軍軍艦リライアント号に乗りダーダネルス海峡をめざした。英仏連合軍が、黒海と地中海とを結ぶ戦略上の要衝ダーダネルス海峡を攻略しようとしているのだ…ガリポリ上陸作戦、さらには凄絶な塹壕戦が展開される西部戦線と最前線で勇猛果敢に戦う海兵隊員を迫真の筆致で描く、戦争小説。
地中海で連合軍の反撃が開始された1943年。英国海軍特殊作戦部隊は枢軸国に対する進攻のつねに先鋒にあった。クレスピン少佐のコルベット艦シスル号もまた、ユーゴスラビアのパルチザン支援のためアドリア海に派遣される。この地のドイツ軍は巨艦を擁し、人民を支配していた。クレスピンは、巨艦の出港中に根拠地を攻撃、敵を行動不能に陥れようとするが…。人知れず影の任務に従事する男たちの苦闘を描く海洋冒険小説。
数多くの傑作を世に送り出し、冒険小説の王者と称されたマクリーン。彼の唯一の短篇集である本書は、『女王陛下のユリシーズ号』を生み出すきっかけとなった記念すべき処女短篇「ディリーズ号」や、ドイツ海軍の誇る巨艦が撃沈されるまでの数日間を克明に再現した「戦艦ビスマルクの最期」、軽妙なショート・ショート「金時計」など、さまざまな角度から海と人間のドラマを描いた珠玉の14篇を収録。冒険小説ファン必読。
1797年春、スピットヘッド錨地とノア錨地で水兵の反乱が勃発、旗艦艦長となったボライソーも、反乱の余波に巻き込まれた。やがてそれが鎮まると、ボライソーは艦隊と共にファルマスを出帆、ジブラルタルで英国政府の高官を指揮艦に迎え入れた。そこで任務が下されたー北アフリカ沿岸の要衝ジャフォーを占拠せよ!頑迷な提督の下で、ボライソーらは地中海に足場を築く重大な作戦に、決死の覚悟で挑む。だが、行く手には凶悪な海賊、そして強大な西仏連合艦隊との血みどろの死闘が待ち受けていた!圧倒的な迫力で描く入魂のシリーズ第10巻。