著者 : 黒木亮
プーチンが、サハリン巨大ガス田開発の予算超過に激怒。クレムリンの攻撃犬と呼ばれるロシア人官僚や石油メジャーに恨みを抱く英国人父子の介在で、プロジェクトは窮地に。トーニチを辞した亀岡はイランの「日の丸油田」を救おうと奔走する。政治と市場に翻弄される男たちの野望と挫折を描く、大河経済小説。
バブル最盛期に行なった脳梗塞患者に対する過剰融資で訴えられた大手都市銀行は、元行員の右近祐介にすべての責任を負わせようとする。右近は我が身に降りかかった濡れ衣を晴らし、銀行の巨悪を告発するべく、証言台に立つことを決意。マスコミと有能な女性弁護士の協力を得て、全面対決の構えをとった。しかし、銀行は組織の体面にかけて、なりふり構わぬ戦いを挑んできた。経済小説の旗手が実体験をもとに描く迫真のドラマ。
泥仕合の様相を呈していた裁判だったが、右近の証人出廷によって銀行の融資管理の杜撰さが明るみに出る。また、偽証の横行や印鑑偏重主義など裁判制度の限界と金融行政の欠陥も露呈される。そこへ、金融被害者問題に強い関心を持つ国会議員が登場し、事態は一気に打開されるかに思われた。しかし、事件の裏には複雑・怪奇な真実が隠されていたー。金融被害裁判の実態をかつてないリアリティで描く経済小説の傑作。
人の弱みにこそ勝機あり。理念無き利益操作が支える「危ない株」も、村おこしとは名ばかりの錬金術も、途上国へのハイリスク融資も、経済の闇に蠢く魑魅魍魎にとっては宝の山だ。金融界のまっとうな道を踏み外した男たちのカネへの執念が生んだ熱い物語。国際経済小説の旗手が切り開いた新境地、全4篇。
狂熱の80年代なかば、米国の投資銀行は最先端の金融技術を駆使し、莫大な利益を稼ぎ出していた。旧態依然とした邦銀を飛び出してウォール街の投資銀行に身を投じた桂木は、変化にとまどいながらも成長を重ねる。一匹狼の日本人起業家に翻弄されながら進めてきた買収案件に調印する寸前、世界を揺るがす金融不安が…。虚々実々の駆け引きから、複雑な取引の仕組みまで、投資銀行業務をガラス張りにした経済小説の金字塔。
ウォール街での実績を買われた桂木は東京のM&Aチームに移り、多くの買収案件を成功に導く。一方、“伝説のトレーダー”ソロモンの竜神宗一は、金融工学を駆使して日本の証券市場に旋風を巻き起こす。バブル崩壊後、危険なデリバティブ商品が横行する中、米国投資銀行の幹部となった桂木は、一つの志を抱き、新たな世界へと転進する。世界金融の激変期を、圧倒的なリアリティと迫真の筆致で描ききった、俊英の代表作。
日系自動車メーカーのイラン工場建設のため、一億五千万ドルの巨大融資案件がもちあがった。大手邦銀ロンドン支店次長・今西は、国際協調融資の主幹事(トップ・レフト)を獲得すべく交渉を開始するが、かつての同僚で日本を捨て、米系投資銀行に身を投じた龍花が立ちはだかる。そこに突如、世界を揺るがす敵対的買収が…。弱肉強食の国際金融の現場を余すところなく描いた衝撃のデビュー作。
二〇〇一年十二月、米エネルギー企業大手エンロンが破綻した。一介の地方ガス会社は、いかにして世界にエネルギー革命をもたらし、なぜ突如破綻したか?同社と米国政府、ウォール街、会計事務所との癒着とは、いかなるものだったのか?エンロンが駆使した金融工学と会計操作のからくりに徹底的にメスを入れるとともに、貧困家庭から這い上がろうとして戦い、破滅した幹部たちの人間ドラマに光を当てるドキュメント経済小説。
新興国市場として急成長を続けるアジア市場。90年代半ば、邦銀でアジアを担当していた真理戸潤は、ドイモイ政策で外国投資ブームに沸くベトナムの事務所開設を託されハノイに赴任した。一方、アジア市場で急成長を遂げ、勇名を轟かせる香港の新興証券会社があった。その名は「ペレグリン(隼)」。同社の債券部長アンドレ・リーは、アジアの王座への野心を胸に、インドネシアのスハルト・ファミリーに近づいて行く。賄賂が横行する共産主義体制下で、事務所開設に四苦八苦を続ける真理戸は、邂逅した日系商社マンから、ベトナムの巨大発電所建設のファイナンスを持ちかけられた。約6億ドルのビッグ・ディール落札を目指し、熾烈な闘いを繰り広げる各国の企業連合。真理戸と日系商社の前に、アジア・ビジネスの暗部を渡り歩く大手米銀のシンが立ちはだかった…。やがて迫り来るタイ・バーツ暴落と通貨危機。その時市場では何が起こったのか?そして三人の東洋人のディールの行方は。