著者 : 龍崎瑞穂
両親を亡くしたマチルダは育ての親のおじ夫婦を助けるため、年の離れた裕福な男性との形だけの白い結婚を受け入れた。婚約の前に旅へ出た彼女は、金色に輝く瞳のエンツォと出会って初めて恋に落ち、熱い2日間を過ごす。だが翌朝には彼の寝顔にそっと別れを告げ、泣く泣く姿を消すしかなかった。4年後、マチルダはパーティ会場に現れた大富豪をひと目見て、愕然とする。エンツォ!こんな形で彼に再会するなんて…。マチルダの傍らでは幼い息子が無心に笑い声をあげていたーエンツォとまったく同じ金色の瞳を輝かせて。
イタリアからやって来るホテル王の恋人のふりをしろですって?しかも24時間、片時も彼から離れてはいけないだなんて…。上司から突然そう命じられ、刑事のリディアは動揺していた。噂では、富豪アントン・サンティーニは美麗な遊び人らしい。彼の到着を待つ間、ホテルのプールで泳いでいたリディアは、水しぶきを上げて現れた男性がアントンだと気づき、驚いた。もう“演技”を始めるの?戸惑う彼女に甘い言葉を囁くと、アントンは巧みにキスへと導いた。陶然としながらリディアは自分を戒めたーこれは仕事。愛も恋も持ちこんではだめよ。
メリダが働く画廊にその夜、ニューヨーク随一の富豪、イーサン・デヴェローが現れた。美貌の彼と握手をした瞬間、彼女の体に電流が走った。しばらくして彼が立ち去っても、体の火照りは収まる気配がない。いったいどうしてしまったの?「きみにはわかっているはずだ」突然、低い声が静寂を破った。嘘!彼は引き返してきたの?「一緒にディナーをどうかな」彼とは住む世界が違うのに、甘いキスに我を忘れたメリダは、レストランからスイートへといざなわれ、純潔を捧げた。しかし翌日、イーサンは消え…やがてメリダは妊娠を知る。
プレイボーイ富豪ガブリエルの秘書を務めるアビーは、スペイン出張の際に立ち寄った彼の祖母宅で立ち尽くしていた。ガブリエルの婚約者だと誤解され、同じ寝室に通されたのだ。天蓋付きの巨大なベッド、その上に置かれたふたりの荷物…。恋の炎に焼かれて破滅していった前任の秘書たちの運命を教訓に、アビーはこの2年、彼の魅力を必死に無視しつづけてきた。しかし今、冷静な秘書の仮面がはがれ落ちるのを感じながら、彼女はガブリエルの衝撃的な言葉を耳にした。「僕の婚約者を演じてくれたら、君が望むだけの報酬を払おう」
妹の夫に懇願され、セレナは2年ぶりにリムノス島を訪れた。重病のはずの妹は元気だったが、彼らの軽食堂の経営権をある有力者に奪われそうになっているので助けてほしいという。その人物とは、かつて愛したギリシア富豪アレクシスだった。愛をささやく低い声、生まれて初めて知る愛の喜び…。鮮やかによみがえる甘美な記憶を振り払いながら、セレナは勇気をかき集めてアレクシスのもとへと向かった。密かに産んだ子どもの存在を知られているとはー自分がすでに彼の罠にかかっているとは夢にも思わずに。