ジャンル : ミステリー・サスペンス
〈黒後家蜘蛛の会〉での謎解きの宵は、名給仕にして名探偵であるヘンリーのもてなしさながら、読む者に心地よいひと時をもたらす。著者自身が誰よりも楽しんで書いた連作ミステリは、ほかでは得がたい魅力に満ちている。第5巻には、万単位の蔵書から愛書家が遺贈した一冊の本の書名を当てる「三重の悪魔」、アシモフの実体験をそのまま作品化した「待てど暮らせど」、いっぷう変わった密室の謎に挑戦した「秘伝」など全12編を収録。
名匠・連城三紀彦が紡いだ数多の短編群から選り抜いた傑作集第二巻。直木賞受賞以降、著者の小説的技巧と人間への眼差しにはより深みが加わり、ミステリと恋愛小説に新生面を切り開く。文庫初収録作品を含む本巻では、著者の到達点と呼ぶべき比類なき連作『落日の門』全編を中心に、円熟を極めた名品十六編を収める。著者の全貌が把握できるとともに新たな視座を提示する全二巻。
ジャクリーンとジリアンは双子の姉妹。ジャクリーンは母親の希望どおりの可愛い少女に、ジリアンは父親の期待を背負い活発な少女に育った。だが実のところ、二人とも両親から押しつけられた役割にうんざりしていた。そんなある日、双子は空き部屋のトランクの中に階段を発見する。冒険心に突き動かされて階段を下ったふたりが見たのは、赤い月に照らされた荒野が広がる、奇怪な世界だった。ヒューゴー賞などの三賞受賞シリーズ第二弾。
早朝にひっそり営業するスープ屋「しずく」。シェフ・麻野がこしらえるスープにかかれば、お客の心と不思議な謎があっという間にとかされる。女の子の母親に幽霊が乗り移った?ジビエにまつわる記憶が抜け落ちたのはなぜ?亡き大叔父が家に隠したお宝はどこ?そして変化を迫られる理恵の進路は?絶品スープに浮かび上がる滋味豊かな人間模様。お腹と心を温めて、元気を注いでくれる全5皿。
伝統とモダンが、新たな市民文化を花開かせる帝都。ドイツ人の母を持つ華族の青年・千崎理人は、職を得ようと訪れたサロンで、謎の美少年と出逢う。少年は、理人の望みー職と住まいを用意する代わりに、グリム童話に擬えた『名前当て』の賭けを持ち掛け…。さらに「自分が事件を解決するから、『探偵』として表に立ってほしい」と頼むのだった。華やかな昭和の初めを舞台に、理人は「少年助手を従えた美貌の探偵」として、様々な事件に巻き込まれていく。第6回ネット小説大賞グランプリ受賞作。
慶応三年、新政府と旧幕府の対立に揺れる幕末の京都で、若き尾張藩士・鹿野師光は一人の男と邂逅する。名は江藤新平ーー後に初代司法卿となり、近代日本の司法制度の礎を築く人物である。二人の前には、時代の転換点ゆえに起きる事件が次々に待ち受ける。維新志士の怪死、密室状況で発見される刺殺体、処刑直前に毒殺された囚人ーー動乱期の陰で生まれた不可解な謎から論理の糸が手繰り寄せる、名もなき人々の悲哀を活写した五つの物語。破格の評価をもって迎えられた第十二回ミステリーズ!新人賞受賞作「監獄舎の殺人」に連なる時代本格推理、堂々登場。
この結社の会員となるための絶対的な条件は、生計を立てる商売が「まったく新しい商売」であることだ。既存の商売の単なる応用や変種は認めず、かつ純然たる商業的収入源である必要があるーー突発的狂気に陥ったとみなされ、隠棲生活を送る元判事バジル・グラントが解き明かす六つの類まれなる謎。チェスタトンがブラウン神父シリーズに先駆けて発表した傑作短編集を新訳で贈る。
アルプス山麓の大学町で発見された惨殺死体。解決にパリ警察から派遣された敏腕だが荒技で知られる刑事。別の町で起きた謎の墓荒らしと小学校の盗難事件を調べる孤児院出身の若き刑事。この二人の捜査の道が一つになったときに、驚愕の真実が明らかになる。〈我らは緋色の川(クリムゾン・リバー)を制す〉というメッセージが意味するものは? 仏ミステリを大きく変え、今や同ミステリ界の帝王ともいえる存在グランジェの傑作を新版で。グランジェはやはり面白い!
9.11テロで妹を失ったことをきっかけにして、空港保安警備の道に進んだケネディ。卓越したコンサルタントとして、世界各地を年中飛び回る多忙な彼だが、ある日CIAから対テロ対策チームへの誘いがかかる。米国の存在をも揺るがす史上最悪のテロが目前に迫っている事実に気づいた彼は、軍事兵器のスペシャリストや特殊部隊員など、海千山千のメンバーを率いてその謀略を阻止できるのか? 面白さ無類のエンターテインメント登場!
江戸は中期。浅草川に浮かぶ島、日本橋の箱崎。ここは海水と淡水が入りまじり、先にある中州で水の流れが三つに分かれるので、別名『別れの淵』ともいう。川辺の小さな船宿を切り盛りする女将は、情に厚く面倒見の良いお涼だ。彼女の人柄からか、はたまた色々なモノが流れ集まる土地柄なのか、若狭屋にはちょっとさみしい魂がふらりとやって来る。それは人間もあやかしも隔てなくーー。狐憑きと呼ばれる花魁や川に消えた子供、息子を捜す山姥……。あちらとこちらの世界をつなぐ不思議な船宿で女将が出会う、愛おしくてあたたかい、八つのあやかし話。
星のふる晩、青年刑事ショーンは川に身を投げようとしている娘を救った。事情を尋ねると、彼女は悲嘆にくれた理由を語る。正確きわまりない予言をしてきた謎の人物に、信じがたい状況で父親が死ぬと宣告されたというのだ。実業家の父親を狙った犯罪を疑うショーンの要請で、警察は予言者の捜査を始める。予言に翻弄される人々を映し出す巧みな心理描写と、途切れることのない圧倒的な緊迫感。サスペンスの巨匠の真骨頂を示す不朽の名作!
実験的にはじめた稀覯本のオンラインショップや、新設したコーヒー・バーなどが順調で、それなりに繁盛しているニューヨークの書店。オーナーのダーラは、書き入れどきの感謝祭を目の前にして張り切っていた。一方で、書店のマスコットの黒猫ハムレットは、相変わらず気ままに昼寝をしたり、シャーシャーと威嚇したり。そんな充実した日々を送っていたが、近所でとんでもない事件が発生して……。大人気の黒猫名探偵シリーズ完結編!
優等生だがほかに取り立てて特徴のない男子高校生・開沢恭平は、日曜日に幼なじみの青柳菜加に呼びつけられ、一方的に相談された。渋谷の雑踏で母親から見捨てられた子どもを保護し、家まで送り届けたが、荒れ果てた無人の室内に危機を覚え、自宅に連れてきたという。昔から行動力だけが突出している菜加は、事の重大さをまったく認識していなかった。「誘拐罪。お前がやったことはれっきとした犯罪だ」--大人たちを頼らず事態の収拾を図るため、恭平たちの波瀾の一週間が幕を開ける!
仕事に悩む女性編集者の田宮宴はある日、袋小路で人が忽然と消えるという事件に遭遇。謎の実業家にして童話作家のミーミ・ニャン吉先生の事務所で、秘書の丸山にその不思議な出来事について話すと、そばにいた猫が何かを伝えようとするかのようにニャーニャーと鳴いている…。ニャン吉先生ことニャン氏の正体とは?!愛すべき猫探偵・ニャン氏の事件簿パート2、出来だニャ。
人気俳優マークは義理の息子ケニーが書いた不条理劇の題名を知り動揺する。それは17年前、ケニーの実父が死んだ“事故”を暗示しているようだった。当時4歳だった息子が何かを知っている?マークはケニーの母で女優の妻サヴァンナの反対を押し切って劇への出演を決め、息子とともに舞台を作ることで真意を探ろうとする。過去の事件と舞台の上演が、彼らにもたらす結末とは?本邦初訳、円熟期の傑作。