ジャンル : ミステリー・サスペンス
娘の名はクリーオウ、自称22歳。とある風の強い午後、スメドラー法律事務所を訪れた被女は、謎めいた台詞を残して帰途についた。そして数日後、ひとつの報せがもたらされる。娘が失踪した、という。捜索に駆り出されたアラゴンだったが、澱んだ池に投じられたこの一石は、人々のあいだに意外な波紋を描き出していく…。心に弱点を負った男女の軌跡を辿る、異色のサスペンス。
5月。くつろいでいたウェルズのもとに、情報提供を申し出る一本の電話が入った。出向いた彼を待っていたのは、悪徳警官として知られるワッツ警部補が、以前組織の制裁殺人に手を貸したことがある、という情報。ウェルズは勇んで取材を開始したが、その矢先、謎の暴漢に襲われ、逆に相手を殺す仕儀となってしまう。正義を求めてさまよう敏腕記者の苦悩。サスペンス溢れる第4弾。
今年もクリスマスがやってきた。各種催し物の開催を初め、用事は山盛り。二男一女を抱えるジェーンには頭の痛いシーズンだ。おまけに今回は、疎遠にしていた旧友が性格最悪の息子を連れて遊びに来たから、たまらない。立ちこめる険悪ムードの中、事はついに殺人事件にまで発展し…。慣れない編み物片手に、真相解明に取り組む主婦探偵ジェーン。好評『ゴミと罰』に続く第二弾。
成城署の真名部警部は、偶然知り合った脳性マヒの少年の並外れた知性に瞠目するようになる。教えたばかりのオセロ・ゲームはたちまち連戦連敗の有様だ。そして、たまたま抱えている難事件の話をしたところ、岩井信一少年は車椅子に座ったまま、たちどころに真相を言い当てる…。数々のアイディアとトリックを駆使し、謎解きファンを堪能させずにはおかない連作推理短編の傑作。
おれはハリー・ラドクリフ、天才建築家だ。天才だから何をやっても許される。そう、おれはとっても嫌なやつらしい。それでも、ふたりの女と適当によろしくやってる。ある日、中東の偉いスルタンから仕事の依頼が来た。犬の博物館を建てろだと。はじめは断ってたんだが、だんだんその気になって…。ひとりの男の歴史を超えた壮大な使命を描き、キャロルの新境地を示す問題作。英国幻想文学大賞最優秀長編賞受賞。
その夏わたしは、ひとり暮らしの老人に暖かい夕食を届ける、地元病院のボランティアを引き受けることになった。配達先の老婦人は、みなそれぞれに聡明で優しい人たちばかり。だがほっとしたのも束の間、ある夜わたしは、彼女らのひとりが略奪され、殺害される現場に行きあわせてしまう…。駆け出しミステリ作家マロリーの活躍を描く、ノスタルジック・ハードボイルド第一弾。
地球=アルファ星系の星間戦争はとうに終結していた。だが、敵国アルファ系帝国の領地であるその衛星には、地球人の精神疾患者達が今もとり残され、連絡を断ったまま独自の文化を形成していた。この地を再び地球のものとすべく、地球側は調査部隊を送り込む。だが独自の思惑をもつCIAは、調査隊に一人の人造人間を潜入させた。著者が精神疾患への関心をもとに取り組んだ名編。
「醜い顔に奇抜な服装、年は殆ど六十七…」幸せな気分で唄いながら、セーラはペンキを塗りたくっていった。恒例プレザンス海賊団によるギルバート&サリヴァンの公演を前に、今年は珍事が続出。急遽、伯母から大道具画家に命じられたのだが、その作業の楽しいこと。けれど、高価な絵の紛失を契機に、身代金の要求、殺人事件の発生と、不測の事態が相つぎ…。ユーモア第六弾。
LAの法律事務所での一年は、わたしを早すぎる中年の危機へと追いやった。人生をたてなおしたくなったわたしは、せきたてられるように古巣をめざした。思い出と現実が交錯する、わが街サンフランシスコ。だがそこに待ちうけていたのは、一つの錯綜した事件だった…。弁護士ウィラ・ジャンソンの苦く切実な体験をとおして、アメリカのいまが見えてくる。現代ミステリの最前線。
高度に道徳的な思想に支配され、近隣同士の相互監視体制までもがゆきとどいた近未来社会。とある調査代理店の青年社長アレンは、ある夜、自分自身にも理解できない衝動にかられ、この世界の偉人ストレイター大佐の銅像を密かに破壊するという“いたずら”に及ぶ。この事件は世界に波紋を広げるが、一方彼の周囲にも…。独特の筆でディストピアを描く、ディック本邦初訳長編。
男が目覚めたとき、かたわらには女の惨殺死体がころがっていた。いったいおれは…、おれは誰なんだ。ここで何をしているんだ。しかも男は記憶喪失に陥っていた。殺人容疑で警察に連行される男。やがて彼の前に妻と名乗る女性が現われた。わたしはクィン、あなたは夫のマクレアリなのよ。過去は失われ、いままた夫婦の絆も断ち切られようとしていた。傑作シリーズ第四弾。
出会いは7月最後の朝。麻薬がらみの罪状が示すとおり、彼はどこか憔悴感を漂わせていた。だが、瞳に宿る真摯な光がわたしを捉えた。わたしたちは運命のようにささやかな交情を持ったが、季節が秋にうつる頃、ひとつの別れがわたしを待っていた。己れの愛と矜持を賭けて闘うゲイでヒスパニックの弁護士リオス。ゲイ・ミステリ版『長いお別れ』と評される現代ハードボイルドの傑作。
リゲル系第四惑星に空間渦動を使った刺客が侵入、第二段階レンズマンのトレゴンシーを暗殺しようとした。またボスコーンが暗躍しているのか?幸いその試みは失敗に終わったが、事態を重くみた銀河パトロール隊は、トレゴンシーみずからをリーダーとして、ただちに調査を開始した。E・E・ドク・スミスの衣鉢を継ぎ、レンズマン世界を現代によみがえらせたカイルの長編第二作。
1946年、異星人がもたらしたウイルス爆弾がマンハッタン上空で炸裂。この日、世界の歴史は変わった。これに感染した人間は90%が絶命し、生き延びた者たちは特異なミューテーションを遂げたのだ。肉体的変容を遂げた者はジョーカーと、そして特殊な超能力を発現させた一握りの者はエースと呼ばれ、ここに史上かつてない闘いの物語が始まる。SFならではのアダルト・アクション。
ワイルド・カード・ウイルスがすべてを変えてしまった欲望と混沌の街ニューヨーク。ここでは日夜、ありとあらゆる事件が起こっては忘れられてゆく。人々の希望は一握りのヒーローたち、そして街に満ち溢れるのは、闘争とロック・ミュージック、黒魔術とモンスター。実在の出来事と人物を散りばめて、知られざるもうひとつの合衆国の歴史を語り継ぐ、驚異のモザイク・ノベル。
豪傑アイリーンの演技を、NYで1番有名な劇評家がけなした。アイリーンは相手の頭にパスタをぶちまけ応酬するが、仲直りの一幕もあり、騒ぎは無事収まるかに見えた。ところが、くだんの劇評家が謎の死を遂げたことから、事態は悪化の一途をたどる…。古風だけれどイキのよさでは誰にも負けない、女優ジョスリンの名推理。洒落のめした筆致で贈る、チャーミングな本格ミステリ。
初めはよくある事件に思えた。まだ若い主婦の、突然の失踪。夫が語るあれこれも中流核家族にはいかにもふさわしく感じられたが、調査を始めるや、問題の妻は5年間ひたすら偽りの人生を生きていたことが明らかに…。くされ縁の親友、運動不足の飼い猫、元亭主ー。そんな仲間に囲まれながら、忌わしい過去の悲劇に深入りしていく女探偵ジェリ。私立探偵小説コンテスト受賞作。
クレアは怯えていた。合衆国大統領として任期終盤を迎えた夫ニコラス。だが、ここへきて支持率が急落、党内には深刻な亀裂が生じていた。「いまにも悲劇が起こりそうな、そんな感じがするんです」という秘書の言葉にも、高まる不安を抑えることができない…。やがて合衆国大統領の身辺を襲った連続殺人。強烈なサスペンスのうちに驚天動地の真相を仕掛ける、掟破りの傑作長編。