ジャンル : ノンフィクション > 文庫(ノンフィクション)
大化の改新のあと政権を保持する兄天智天皇の都で、次第に疎外される皇太弟大海人皇子。悲運のなかで大海人の胸にたぎる想いは何か。額田王との灼熱の恋、鬱勃たる野心。古代日本を震撼させた未曾有の大乱の全貌を雄渾な筆致で活写する小説壬申の乱。吉川英治文学賞受賞作。
鉄剣を磨き、馬を養って時に耐える大海人皇子はついに立った。東国から怒涛のような大軍が原野を埋めて近江の都に迫り、各地で朝廷軍との戦いがはじまる。激動の大乱のなかの息詰まる人間ドラマの数々。歴史学をふまえて錯綜する時代の動きをダイナミックにとらえた長篇。
性の誘惑と不可思議な夜のなかで悲劇は起った。TVディレクター伊沢の親友・村瀬が射殺されたのだ。忿怒に駆られ犯人を追う伊沢は、ルポライターだった村瀬が探っていた恐るべき事件に巻き込まれ…。欲望に痺れた非情な男たちが蠢く、手に汗握る危険な遊戯。
エースパイロットを夢見るイサム。自らが持つ“血の恐怖”におびえながらも懸命に生きるガルド。学園の歌姫から、宇宙のアイドルへの階段をのぼり始めたミュン。3人の男女を中心に織りなす青春群像を、みずみずしいタッチで描いた『マクロス』シリーズ異色作がノベル版で登場。
苦闘の末、倒幕はかなった。だが恩賞と官位の亡者が跋扈する建武の新政に、明日があるとは思えなかった。乱があるー播磨に帰った円心は、悪党の誇りを胸にじっと待つ。そして再び、おのが手で天下を決する時はきた。足利尊氏を追って播磨に殺到する新田の大軍を、わずかな手勢でくい止めるのだ。赤松円心則村を通して描く渾身の太平記。
ひとりぼっちでは幸せになれないけれど、皆で一緒に幸せになるのもとても難しい。親の決めた結婚ゆえに自分の人生を歩むことができず、夢見がちに恋に恋することでしか自分を支えられない母。猫を溺愛して寂しさと痛みを紛らそうとする父。そんな両親に反発し、家を出てしまった兄。そして今度は姉までも。家族の再生を願う末っ子シューコの思いを綴ったノスタルジックでせつない長篇小説。
織田信長暗殺の報を、毛利攻めの陣中で聞いた秀吉は、明智光秀を討つべく急遽反転。宿敵徳川家康は伊賀越えで難は逃れたが、天は秀吉に味方して…彼の数奇な運命をささえ、天下人にまで出世させた陰の勢力・日影一族との共栄を、斬新な視点から描く太閤記。
私、深雪、トラブルメーカーの雪女。お嬢様殺人事件で大暴れして、やれやれと一息ついていたら、今度は、バイクを走らせてる途中で、数人のチンピラから逃げているスッパダカの女の子を拾ってきてしまった。しかも、この子がなんと、今をときめく若手アイドル女優、王麗碧子だったから大騒ぎ。そのうえ、ヤクザの親分にはなつかれるわ、不可解な殺人事件に遭遇するわ、義兄さんは行方不明らなるわ、邪教集団と関わりになるわ…またもや厄介事のオンパレード。
名探偵・法月綸太郎に挑戦するかのように起こる数々の難事件。なぜ死刑執行当日に死刑囚は殺されたのか、図書館の蔵書の冒頭を切り裂く犯人、男が恋人の肉を食べた理由など異様な謎に立ち向かい綸太郎の推理が冴えわたる。「ルーツ・オブ・法月綸太郎」ともいえるミステリの醍醐味あふれる第一短編集。
仁明帝、東宮、在原業平、僧正遍照などとの様々な恋に懊悩し、情熱的な和歌の才能を発揮した六歌仙の一人、小野小町。絶世の美女とも謳われた華のごときその生涯を通して、平安時代の豊かな男女の関係のありようを浮かびあがらせた物語。
ー恋する者はたえず心の中で走り回っており、新たな奔走を企て、自身に対する策謀をめぐらしつづけてやまない(R・バルト)-“あちらこちらを走り回る”という意を表しもする“ディスクール”本来の「野性的な」実践を通して、“恋愛”をもっともピュアーなかたちで描き出した刺激的快作。
戦国乱世を、智恵と度胸で生き抜き、太閤の位にまで登り詰めた、豊臣秀吉の一生と、彼をめぐる女性たちの姿を生々と描き切る…十四歳から苦楽をともにしてきたねね、永遠のあこがれお市、その影を追ってやっと側室のひとりとした茶々など、戦国期の女性像。
切断した男女の死体が合成され両性具有者となって蘇る。窓の外には荒涼たる世界の終焉の光景が広がっているばかりだ。「占星術殺人事件」を愛読する青年が書きのこした戦慄の日記がさし示すものは何か。醜悪な現実世界に奇想の作者が驚天動地のトリックの矢を放つ。ミステリの新たな飛翔を決定づけた傑作。