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「高貴な血筋の方を次々と手玉にとる遊び女」そんな噂をも心の隅で楽しみながら、あくまでも誇り高く、男を愛し、愛されて奔放に生きた情熱の歌人和泉式部。今なお輝きを持つ恋の数々と、鮮やかな生き方を魅力的に描く歴史物語。
彼女の悲しみを、分かちあうことはできない。私の悲しみも理解されないだろう。でも、寄り添わずにはいられないー。無機質な新構想大学のキャンパスで出会ったエキセントリックなルームメイト。互いの孤独に気付くとき、何かが変わる予感がした。第106回芥川賞受賞の表題作ほか、「星の指定席」併録。
刑務所から出所したばかりの男が、東京郊外に住む俳句の師匠・原花狼を刺し殺した。二人の接点は。事件の背後を追う雑誌記者・磯田の前に、四百年間も謎に包まれて眠り続ける“太閤遺金”四億五千万両の埋蔵金伝説が…。限りない夢とロマンの黄金探し推理長編。
東京と大阪の戦争が始まった。自衛隊の戦闘機が飛び、地上部隊は重装備で進撃、市民兵もぞくぞく参加してテレビ中継車がつづく。斬新な発想で現代社会を鋭く諷刺する表題作ほかの秀抜な処女作品集。
男にとって“処女”は永遠のあこがれ。喰べれるものなら、ひとりでも多くの処女を食してみたい…。学生たちからの信頼度も高い大学教授でありながら、香坂鉄夫は、もうひとつの顔を持ったいる。それがバージン・イーター。
物語の中では、どんな恋をも生み出せる。けれどこのやりきれない現実…。不本意な結婚と死別。義理の息子との不義の恋。時の人道長との恋愛。古今東西にわたって不朽の名作として輝く『源氏物語』に込められた作者・紫式部の想いを、知られざる人間模様・恋模様を通し、きめ細やかに浮き彫りにした魅力溢れる歴史ロマン。
なげきつつひとり寝る夜のあくるまはいかに久しきものとかは知るー「あなたを幸せにする」そう約束してくださったはずなのに。持ち前の男ぶりの良さで人望と女たちの愛とを一身に集める夫、兼家への想いに身を焦がす日々。美貌の才女として知られた「蜻蛉日記」の著者、藤原道綱母の生涯を平安の王朝に鮮やかに染め上げた歴史物語。
浅見光彦の遠縁の大学生・緒方聡が女子高生誘拐の嫌疑をかけられた。何でも一目惚れして、のこのこと家まで後をつけていたらしい。あきれる浅見ではあったが、聡の濡れ衣を晴らそうと、行方不明になった浜田文絵の家を訪れる。そこに届けられていた一通の脅迫状。文面には文絵の出生の秘密をばらすといった内容が…。文絵は人気俳優・三神洋と「宝塚」出身の女優・鳥越美春との十七年前の秘めやかな愛の結晶だったのだ。数日後、文絵が遺体で発見された。浅見は悲劇の真相を追って、乙女の都「宝塚」へと向かう。
ふと、その一節を口ずさみたくなる、永遠に瑞々しい随筆『枕草子』を書いた清少納言とはどんな女性だったのか。華やかな王朝時代に、一条天皇の中宮・定子に仕え、藤原公任、藤原行成をはじめとする貴族との恋を、きらきらした才覚で彩った清少納言を生き生きと描く歴史小説。
関が原の後、石田三成の義弟の妻だった真田幸村の実妹の於妙を娶り、睦まじく添いとげた滝川三九郎。その、運命に逆らわずしかも自己を捨てることのなかった悠然たる生涯を描いた表題作。父弟と袂を分かって家康に仕え、信州松代藩十万石の名君として93歳の長寿を全うした真田信之ほか、黒田如水堀部安兵衛、永倉新八など、己れの信じた生き方を見事に貫いた武士たちの物語8編。
アメリカまで来ても、やっぱりヨメなわけ。彼を愛してる、それだけで万事OKのはずだったのに、このしがらみときたら…。日本の元気娘マドコが、「自由」の国アメリカで出合った思いがけない出来事を痛快に描いた表題作ほか、第10回「海燕」新人文学賞受賞作「ヨモギ・アイス」収録。野中柊デビュー作品集。
小奴の澄子、久千代の民江、花勇の貞子、染弥の妙子ー戦争という苛酷な運命を背景に、まだいたいけな少女の身で、金と男と意地が相手の稼業に身を投じた四人の女がたどる、哀しくも勁い愛の生涯を描ききる傑作長篇小説。女流文学賞受賞作。
映画界の鬼才・大柳登志蔵が映画の撮影中に謎の失踪をとげた。すでにラッシュも完成し、予告篇も流れている。しかし、結末がどうなるのか監督自身しか知らないのだ。残されたスタッフは、撮影済みのシーンからスクリーン上の犯人を推理していく…。『探偵映画』というタイトルの映画をめぐる本格推理小説。
雨天の日には、履く靴も、さす傘もなく、弟妹たちは学校を休まねばならぬ状態であることを、榎本保郎は百も承知だった。が、何としても同志社の神学部に進みたかった。結局は家族を真の意味で幸せにできると、固く信じた。イエスを乗せ、命ずるがままに行く小さなロバのようになりたいと決意したー。熱血牧師の生涯を描く。
ペリー艦隊来航時、主席通詞としての重責を果たしながら、思いもかけぬ罪に問われて入牢すること四年余。その後、日本初の本格的な英和辞書「英和対訳袖珍辞書」を編纂した堀達之助。歴史の大転換期を生きた彼の劇的な生涯を通して、激動する時代の日本と日本人の姿を克明に描き尽くした雄編。
「歴史」という大絵巻の中で、ひときわ鮮やかに輝く飛鳥時代。その飛鳥で、愛する者を守るために闘い、ついには自ら皇位を継ぐに至った一人の女性の生涯を描くー飛鳥のドラマがいまに蘇る本格歴史小説。
死後の魂を悪魔に捧げて得た超能力をもって、信長は、今川義元、斉藤義竜を相次いで撃ち破り美濃の国を手中におさめた。「天下布武」を標榜する信長の前に立ちふさがるのは、甲斐の武田信玄、しかも四人。一方、十一歳になった子、奇妙丸は、少しずつ、不思議な能力を示すようになったー歴史文学賞受賞作家による、奇想天外な異色伝奇小説。
まったくの偶然と幸運から文芸誌の新人賞を受賞してしまった柘植祐一。小説家たちの信じられない姿にドギモを抜かれ、人気作家の哀れな末路を目にしながらも、この世界で身を立てる決心をする。一人の新人作家の生活と仕事を通して、小説家の虚像と実像を生々しく描いたユーモアあふれるエンターテインメント小説。
浅見光彦は、ひょんなことから母・雪江の三州への旅のお供を命じられた。道中「殉国の七士の墓」に立ち寄ったふたりは、おかしなことをいう愛国老人に出会う。ところが、翌朝、その老人の死体が蒲郡の海岸で発見される。死亡状況からすると、何者かに断崖から突き落とされたらしい。が、そのあたりには人が転落しそうな場所はない。三河湾をはさんだ伊良湖岬から死体が流れ着いたのだろうか。警察から嫌疑をかけられた浅見母子は事件の解決に全力を注ぐが…。長編旅情ミステリー。