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刃傷事件から討入りまで、忠臣蔵はどこをとっても胸をうつドラマである。今でも我々の心を動かすのは、人生の縮図を形をかえて観るからだろう。振幅の激しかった大石内蔵助。また大石と共に立ち上がりつつも、消えてゆく同志。偽りの恋に情熱のすべてをかける女心の哀れさ。ラストシーンを飾る琴の爪の話ー。
昭和初期の時代のうねりなかで、知的幻想趣味徹底した快楽主義的生活との交錯によって、特自のボヘミヤニズムを生みだし、夭折した作家牧野信一。その真骨頂をなす「吊篭と月光と」「ゼーロン」「バラルダ物語」など傑作短篇小説9篇を収録。
美しい玉日の代りに善信(親鸞)が得たものは、宗門を挙げての非難、迫害であった。それは法然、滋円、親族にも及ぶ糾弾であった。遠流も辞せずー善信の不退転の決意は揺るぐことなく、未曽有の法難に耐えぬく。
悩ましいプロポーション、白い柔肌、清楚な美貌、剛直を絞りあげる果肉…。真面目な男を獣へと変えるに充分すぎる、叔母・沙智の女体だ。野性に目覚めた甥、光則の激しい責めに、抗いながらも愉悦を貪る麗しき叔母。沙智の着替えを覗き見たことが、叔母と甥をドロドロの肉地獄へと堕とし、家族まで崩壊させることになろうとは…。
音楽教師、香澄の前に出された写真は、まさに地獄への招待状だった。淫獣のような教え子二人に強いられる、暴虐、羞恥、屈辱…。25歳の蕩けるような裸身が、そのたびに熱く悶え、淫錯する。もう私は堕ちてゆくしかないの…剛直を咥えながら、濡れた肉襞が緊縮した時、香澄の中に飛沫がけたたましく散った。330万部を突破した綺羅光の世界。
〈嵯峨本〉は、開版者角倉素庵の創意により、琳派の能書家本阿弥光悦と名高い絵師俵屋宗達の工夫が凝らされた、わが国の書巻史上燦然と輝く豪華本である。17世紀、豊臣氏の壊滅から徳川幕府が政権をかためる慶長・元和の時代。変転きわまりない戦国の世の対極として、永遠の美を求めて〈嵯峨本〉作成にかけた光悦・宗達・素庵の献身と情熱と執念。芸術の永遠性を描く、壮大な歴史長篇。
漂着した南の島での生活。自然の試練にさらされ、自然と一体化する至福の感情。それは、まるで地上を離れて高い空の上の成層圏で暮らすようなものだった。暑い、さわやかな成層圏。やがて、夢のむこうへの新しい出発が訪れるー青年の脱文明、孤絶の生活への無意識の願望を美しい小説に描き上げた長篇デビュー作。
湊川に繰り広げられた楠木軍の阿修羅の奮戦。さしもの正成も“敗者復活”の足利軍に制圧された。正成の死は、後醍醐方の大提防の決壊に等しかった。浮き足立つ新田義貞軍、帝のあわただしい吉野ごもり。その後の楠木正行、北畠顕家の悲劇。しかし尊氏も、都にわが世の春を謳うとは見えなかった。一族の内紛?勝者の悲衰?彼は何を感じていたか。
美大を卒業したばかりの葉子は、憧れの葛山デザイン研究所に入所する。尊敬する鬼才、葛山の下で精一杯、勉強したかったからだ。が、不可解な葛山の言動から、彼の作品のオリジナリティに疑惑をもつ。真実を知りたいという熱い思いにかられ、葛山の周辺を次々に追及する葉子の前にあらわれた意外な真相とはー。常に斬新でなければならない一流デザイナーの苦悩を、華やかな業界を背景に描いた傑作サスペンスロマン。
最晩年の著者が、心血を注いで築きあげた壮大な中国絵巻!一騎当千の豪雄がそろい、民衆の与望をになって起つ梁山泊軍は、野火のごとく勢いを増す。権勢の人、高〓@42C6は、一万四千の大軍をもよおして泊軍を討たんとする。その秘密兵団こそ、連環馬軍であった。さしもの泊軍も色を失い、梁山泊始まって以来の大損害をこうむる。しかし梁山泊の智恵者は王手を逆にとり、難局を乗り切った。
奇妙なマスターが経営する変な名前の喫茶店で、これまた奇妙なトンプソンと名乗る超能力(?)を持つ女性と出合った高校の同級生3人組、了子と和明とエマは不可思議な世界へと誘われて…美少女エマをめぐる“かぐや姫”もどきの楽しい事件が3人を振り回わして…書下ろしファンタスチックロマン。