汚れきった「レインコート」を手放せない男は、なぜか、母の死んだ「島」を執拗に目指して旅をする。山狭を走る夜汽車。彼は隣り客に問う、「狼」はいませんかと。-レインコートとは、島とは、狼とは、何か。
男は名前をもたなかった。過去を消し去り汚れたレインコートをまとって、深い闇の中を夜汽車に揺られていた。他人になりすまし、母の死んだ孤島をひたすらめざした。自分は、いったいどこにいるのか、私とは何か?自己存在の謎に挑む壮大なミステリーの実験。埴谷雄高、鮎川哲也氏絶賛の『裏街』に続く第二弾。 1998/07/15 発売