井上成美(せいび)
昭和五十年暮、帝国海軍きっての知性といわれた最後の海軍大将井上成美が逝った。彼は終始無謀な対米戦回避を主張、兵学校長時代には英語教育廃止論をしりぞけた。敗戦前夜は一億玉砕を避けるべく終戦工作に身命を賭し、戦後は近所の子供たちに英語を教えながら清貧の生活を貫いた。狂熱の時代に、合理性を保ち続けた〈意志〉の人生の生涯。
昭和五十年暮、帝国海軍きっての知性といわれた最後の海軍大将井上成美が逝った。彼は終始無謀な対米戦回避を主張、兵学校長時代には英語教育廃止論をしりぞけた。敗戦前夜は一億玉砕を避けるべく終戦工作に身命を賭し、戦後は近所の子供たちに英語を教えながら清貧の生活を貫いた。狂熱の時代に、合理性を保ち続けた〈意志〉の人生の生涯。