ピアノ・レッスン
半世紀前、後のノーベル賞作家はそのデビュー時から「短篇の女王」だった。行商に同行した娘は父のもう一つの顔を目撃し、駆出しの小説家は仕事場で大家の不可思議な言動に遭遇する。心を病んだ母を看取った姉は粛然と覚悟を語り、零落したピアノ教師の老女が開く発表会では小さな奇跡が起こるーー人生の陰翳を描き「短篇の女王」と称されるカナダ人ノーベル賞作家の原風景に満ちた初期作品集。
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ピアノ・レッスンピアノ・レッスン
…エイダは9歳の娘フローラとともに、長い船旅を経て見知らぬ男のもとへやってきた、この男に嫁ぐためだった…。浜辺に降ろされたエイダの荷物のなかには彼女の分身ともいえるピアノがあった。だが、ピアノは引き取りを拒絶され、そのまま浜辺に放置される。朽ち果てるピアノの運命に耐えられぬエイダは、顔に刺青を彫った奇妙な隣人とある取引を交わす。ピアノを弾いているときだけ、好きなようにしていい…その代わりに一回ごとにピアノの所有権を私のもとに移して欲しい…。19世紀ビクトリア朝に生きた女と男の、あまりにも激しい情念の世界を比類のない詩的感性で映像化することによって数々の映画賞を受賞した名画の原案を、作者自身が大胆な筆致で小説化した異色の文学。映画では描かれなかった登場人物たちの過去の秘密、意外な素顔が、小説という表現形式を得ることによってはじめて明らかにされ、官能と真実の物語はようやくクライマックスを迎える…。 1995/07/20 発売