地上で僕らはつかの間きらめく
母に連れられ、戦後の混乱が続くベトナムからアメリカへと渡った僕。幼い僕と祖母を抱え、英語もままならない母がネイルサロンで働いて一家を支えた。異国での不慣れな生活のいらだちを息子にぶつける母。母の苦しみは、周囲の少年たちから孤立する、僕自身の痛みでもあった。アルバイト先で出会った少年との初めての恋、性のおののき…。母を苛んできた「言葉」は、いつしか僕をそのきらめきで魅了するようになる。そしていま僕は、祖母と母、自身の三代にわたる人生を、文字が読めない母への手紙として綴りはじめるー。不世出の若きベトナム系詩人が、自らの来歴を元に、優美で切実な言葉で紡いだデビュー長篇。